伝えられない想いがある――――
あなたと私の未来予想図 <前編>
「ねー、。今日どっか寄っていかない?」
「ごめん、今日お手伝いがあるんだ。」
学校も終わって、帰り支度をしてる時、仲のいいが話しかけてきた
お誘いは嬉しいんだけど、今日は大切な用事があるから
約束したわけではないけど 勝手に私が思ってるだけだけど・・・・
――約束―― そう思っていられることが嬉しくて、つい顔が緩む
「そうなの?も大変だよね。」
それに部活もあるし・・・・・と話を続ける
「そんなことないよ。私、花好きだから。」
「えらいえらい。」
私の家は花屋なんだ
今まではどんなにお母さんに言われても、面倒くさくて手伝う気もあんまりなかった
どうして私が手伝いなんてしなきゃいけないの? って思ってたけど
あの出会いがあったから・・・・・・
「ー。」
学校から帰ってきて部屋でのんびりしていたら、お母さんが階段を上って私の部屋にくる気配がした
何の用事か分かってるから、見つからないように音を立てず急いでクローゼットに隠れる
身を潜めていると、すぐに部屋のドアが開く音とお母さんの声がした
「・・・・・っていないの?」
いません 私はここにいません!!
だから早く出てって
今日はこれからゲームしなきゃいけないんだから!
いつもは週2日しかない美術部も、最近は何故か忙しくて久しぶりの休みなんだから〜
でも、一段落ついたから、また来週からは週2日の部活に戻るけど・・・・・
「なーんだ・・・。折角の好きなケーキ買ってきたのにな・・・一緒に食べようと思ってたのにな〜。」
ケーキ!?
「え、うそ!食べる!!」
『ケーキ』という言葉に反応し、気づけばクローゼットから飛び出していた
その時のお母さんは・・・・笑っていた
まるでそれを狙ってたかのように
「あら、いたの?」
「・・・・はい。」
しらじらしい〜
私がいたの知ってるくせに・・・・・
「どうして隠れてたの?」
「いや・・・・・別に。」
お母さんから逃げるために・・・・なんて言えなくて思わず口ごもった
「まぁ、いいけど。ケーキあるから降りていらっしゃい。」
「わーい!」
「ただし、食べたら。今日もよろしくねv」
「・・・・・・・」
やっぱりこうなるのね
食べ物に釣られた私も馬鹿だけど・・・・
はぁ〜 と盛大にため息ついた
とりあえずケーキを食べよう
ということで、さっそくケーキを食べ始めた
やっぱりおやつは必要だよねv
私の顔を見て、お母さんは苦笑しながら紅茶を淹れてくれた
よほどおいしそうに食べていたのかな・・・・・それとも食べすぎ?
でも本当においしいんだもん
私の向かいの席に座ると、お母さんが思い出したように話だした
「そういえばね、最近男の子がうちに来るのよ。」
「男の子?花屋に?」
ケーキを食べる手は止めずに、オウム返しで聞き返した
「そう、珍しいでしょ?しかも1回や2回じゃなくて週に2回くらい顔出してるんじゃないかしら。」
「何か買うの?」
「毎回ではないけど、その男の子サボテンが好きみたいで、いつも眺めてるの。」
「ふ〜ん。」
「と同じくらいの歳じゃないかしら?とっても綺麗な男の子よv」
私と同じ歳くらいの男の子が? しかも綺麗?
これには少し驚いて顔をあげた
少なくとも今まで私がお店にいて、同年代の男の子が買いに来たのを見たことがない
お店の前を通ることはあるけど、もちろんみんな素通り
男の子なんてそれが普通だと思ってた
けど、花に興味がある人がいる
どんな子なのか 会ってみたいと思った
「もしかしたら会えるかもよ?」
お母さんの言葉
それがまさか彼だったなんて
今の私には想像もつかなかった・・・・・
と、いうわけで今日は家のお手伝いをしてるんだけど・・・・ケーキにつられちゃったから・・・・・
「ふわぁ〜・・・・・」
お店の前で大きなあくびをしていた
お客さん来ないと退屈〜
そーだ、今はどんな花があるのか見てみようっと
家が花屋のくせに手伝いなんて滅多にしないから、有名な花以外は季節毎にどんな花があるのかあんまり知らない
いい機会だから覚えよう
「・・・・さん?」
花の手入れがだいたい終わって、次はサボテンコーナーへ移動したら、急に背後から名前を呼ばれて振り返ると、同じクラスの不二君がいた
「ふ、不二君っ!!」
どうして不二君がここに!?
あまりに突然のことに、瞬きを繰り返す
不二君の家ってこっちなのかな?
今ここにいる不二君とは同じ学校で同じクラス
3年になって初めて同じクラスになった
特に親しいわけではなかったけど、不二君の存在は1年の時から知っていた
有名だもんね テニス部の人達は
同じ学年じゃなくても、すごく人気がある
でも、だから覚えてるってわけでもない
だって私も・・・・・不二君のこと、ずっと好きだったから
でも接点なんてものは今までなくて、私はただ、ずっと不二君を見ていた
気持ちを伝えたいと思っても、そんな事をする勇気もない
とっても可愛い子がテニスコートで騒いでいると、私なんて・・・・と思ってこの気持ちを胸の奥にしまいこんでしまう
絶対に私のこと、知らないと思ってたのに・・・・私の名前知っててくれた
「私の名前、知ってたんだ・・・・。」
話した事もなかったのに・・・・・・ 思っていたことが、いつの間にか口に出ていた
慌てて口を押さえるけど、もう遅い ・・・・聞かれたよね
けど、不二君は当然のように
「当たり前じゃない。」と言ってくれた
たった一言 それだけでも本当に嬉しい
心の奥にしまいこんでいた想いが、また溢れだす
「ここってさんの家だったんだ。」
私が不二君と話しているなんて、まだ信じられずに少し戸惑ってしまう
「うん・・・そう。不二君は?買い物?」
「まぁね。僕ここによく買いにきてるんだよ。知らなかった?」
「えっ、うちに!?」
「うん。じゃあいつも接客してくれてたのはさんのお母さんだったんだね。」
じゃあ・・・・・お母さんが言ってた『私と同い年くらいの綺麗な男の子』って・・・・
不二君のことだったの?
「どうして・・・・?」
「僕の趣味ってサボテン集めなんだ。ここってサボテンの種類が豊富じゃない。
だからよく買い物に来てたんだ。」
そう・・・・なんだ
今まで不二君の趣味なんて知らなかった
いつもお手伝いしてれば不二君に会えたのに〜
私がそんな事を思っている間に、不二君はサボテンを見て回っていた
「あ、これこれ。」
と、一番奥に並んでいたサボテンを一つ取り出した
「そのサボテンがほしかったの?」
「うん。でもここに来る度にどれにしようか迷っちゃって・・・・・。」
「サボテンっていろんな種類あるよね。」
いろいろな形のサボテンを見回すと、不二君が少し驚いた表情で尋ねてきた
「花屋さんなのにサボテンのこと知らないの?」
「あんまり・・・・・花は好きなんだけど」
不二君にクスッと笑われて、今までの事を悔やんだ
もっといろんなこと、知っておくんだった
恥ずかしい・・・・・
「あ、ごめんね。そういう意味じゃなくてさ」
私の考えを読み取ったのか、申し訳なさそうに謝ってきた
「ううん、知らなかったのは本当だから・・・・」
不二君からサボテンを受け取って、サボテンを運びやすいように丁寧に包んだ
「じゃあありがとうね。」
「こちらこそ、ありがとうございました。」
不二君を見送っていたら、出口の一歩手前で急に止まって振り返った
思わず首を傾げた
「さん。」
「どうしたの?」
「大切に育てるから。」
「うん。お願いね。」
じゃあね と優しく微笑んで、サボテンを大事そうに抱えて帰っていく不二君の後ろ姿をずっと見つめていた
不二君がうちにサボテン買いに来てたなんて・・・・・
同時に趣味も知れてとっても嬉しい
ほんのひとときでも一緒の時間が過ごせた
今日のことはきっと誰も知らない
私と不二君だけの・・・・・
・・・・・また、会えるかな? また、ここに来てくれるかな?
次の日
「さん。」
「不二君、おはよう。」
朝、教室に入って席につくと同時に不二君が私の所にきた
今まで話したくても話しかけられなかった気持ちが嘘みたいに、普通に会話できる
相変わらず、鼓動は早いけど・・・・・
「昨日はありがとうね。それと、さんって毎日お手伝いしてるの?」
「ううん、たまにだよ。部活がない日とかに・・・・。」
「そうなんだ。僕も部活ない日とかによく行くんだけど、よかったら手伝ってる日、教えてもらっていいかな。
僕がサボテンについてなら教えてあげる。
やっぱり好きな人にはいろいろな事、知ってもらいたいじゃない?」
「えっ!す、好きな人・・・?」
何!??好きな人って・・・・・どういうこと?
まさか・・・・・・・・・
顔を赤くして明らかに動揺している私に疑問をもったのか、今の言葉を丁寧に話してくれた
「うん、好きなんでしょ?花が。」
「花ね・・・・・好きだよ。」
・・・・・だよね
それを聞いて一気に脱力した
びっくりした〜!!それなら最初からそう言ってくれればいいのに・・・・・って、何1人でこんなに動揺してるんだろう
不二君に変に思われちゃう
「だからきっとサボテンのことも、知ってみると好きになれると思うんだ。」
「うん!!私もサボテンの事もっと詳しく知りたい。」
不二君が教えてくれるの?
昨日不二君の趣味を知って、私もサボテンについて学ぼうと思ってたけど、まさかそんなこと言ってくれるとは思ってなかった
嬉しくて、すぐ返事をした
昨日1日で、不二君との距離が一気に縮まった気がする
そんな光景を見ていたのか、不二君が私の席を離れると、が駆け寄ってきた
「ちょっと!!どういうこと?いつの間に不二君と仲良くなってんの?」
「うん・・・ちょっとね。」
言葉を濁して、そのことに触れないように違う話を持ち出して喋りだした
不二君の趣味、多分この学校の女の子達は知らないと思う
ズルイと言われるかもしれないけど、もう少しだけでいいから・・・・このままでいたい

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久しぶりの周助さんです(自分のサイトに載せるやつ)
周助さん好きなのに書けない私はまだまだです(汗)
それにしても最近 前・後編ものが多くてすいません・・・・・・
1つにするとスクロールが長いし、前・後編にするとみなさまに迷惑がかかるし・・・・
どうしたらいいの〜!?
2005. 1.23 茜