こたえはきっと心の中に act4
心の中では忘れたはずなのに
今の日常が幸せなはずなのに
忘れるには十分な月日が過ぎたのに
忘れさせまいとするように夢へと現れるのは
どうして―――?
「!」
いつものように景吾と帰ろうと教室を出て廊下を歩いていたとき
後ろから声をかけられ振り向いた
「宍戸」
なんか、久しぶりに宍戸に名前呼ばれた気がする
景吾と付き合ってるのを知ってから
宍戸のほうから連絡をくれることは極端に少なくなった
わたしからの連絡も、部活での連絡事項を伝えるときだけ
その穴を埋めるように、景吾との連絡が多くなった
景吾のほうから連絡くることはあんまりなかったけど、わたしが日常あったことをメールすると、必ず返信してくれた
今でも部活帰りとかに、みんなでご飯食べに行ったりもするけど
やっぱり少しみんな気を使ってるのがわかる
今までと変わらずずっとみんなといたい
そんなことできないのは、わかっていたけど
「跡部と帰るのか?」
「そうだよ」
「俺も一緒にいいか?」
「うん、いいよ。一緒に帰ろう。」
ひさびさだねーなんて話しながら
2人並んで玄関まで歩いていく
宍戸のこと
避けてるわけじゃないけど
なかなか2人きりになることもなかった
前は好きだったけど
今はいい友達
なんだかとても
懐かしい気持ちになる
昇降口まで行くと、すでに景吾が待っていて
宍戸が声をかけた
「跡部ー」
「宍戸か、なんだよ」
「俺も一緒に帰っていいか?」
「・・・ちっ」
「そういうこと言わないの」
なんかこんなやりとり、久しぶりかも
宍戸が好きだったころ
密かに想っていたけれど気持ちを伝えることができなくて
一緒にいるだけで楽しかった
いまもそれは変わらない
だけど前と違っているのは
この気持ち
いまは友達として好き
景吾と付き合ってから
一緒に帰ることもなくなったけど
喋ってるとやっぱり楽しい
10分ほど歩いたところで
いつもの宍戸との分かれ道に差し掛かる
わたしと景吾は右へ
宍戸の家は左だ
「じゃあな」
そういって宍戸は背を向けて自分の家に歩きだした
いままでと同じはずだったのに
なんだろう・・・
あの頃には
戻れない
「、行くぞ」
「うん」
先に歩き出す景吾に引っ張られるようにわたしも家に向かって歩きだした
*
いつものように放課後、部室へ行くと岳人が子供のようにジャンプしながら
わたしのそばに寄ってきた
「なーなー!ニュースニュース!」
「どうしたの?」
「宍戸に彼女ができたらしいぜ」
「宍戸に彼女が!?」
「そーなんだよー、意外だろ?」
あの宍戸がなー
なんて隣で笑ってる岳人とは対照的に
わたしはとてもじゃないけど
笑うことなんてできなかった
・・・そうだよね、宍戸だって彼女くらいできるよね
なんだろ
なんでだろ
胸が苦しい
きっと今、宍戸は幸せなんだろう
それはすごく嬉しいこと
それなのに
心の底から幸せを願えない
わたしは景吾と付き合ってて
すごく幸せなはずなのに
幸せなのに
わたしはもう
宍戸に何も言える立場じゃないのに
そんなこと
わかっているのに
すごく、苦しい
自分勝手な気持ちが再び動き出す
絶対にもう思い出すことはないと思っていたこの気持ち
忘れて、いなかった
忘れようとしていただけ、なんだと気づかされた
自分勝手なこの想いは
一旦溢れたら止まらない
少しずつ
わたしのこころを支配していく
いままで満たされていたものが
少しずつ
零れ落ちてゆく
NEXT
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早くも更新が遅くなりました(笑)
書いてはいたけどUPするのを忘れておりました(笑)
そろそろこの連載も終わりそうな予感です。
どうなるかわからないけど(笑)がんばります。
2016年8月