私は今、とても幸せです  act 5






次の検診の日、どうも気になって俺もついて行くことにした

そろそろ性別も分かる頃だって聞いてたからな

何よりが心配だから

出来ることなら毎回ついて行ってやりてぇが、そうも言ってられねぇし・・・・

せめて仕事が休みの日は出来るだけと一緒にいてやりてぇ






「―――で、どうなんですか、先生?」

もう妊娠も6ヶ月過ぎたから、腹の上から子供の様子が見れるようになっていた

「跡部さんは赤ちゃんの性別知りたいんですよね?」

最近の病院では、夫婦の意思で産まれる前に性別を聞くか聞かないか判断できるらしい

”事前に性別を教えてもらう” と言っていた俺たちは、今日聞こうと思っていたが、もう一度確認の為に隣にいたの方をみた

「いいんだよな?」

俺の問いかけに、声には出さずにただ首を縦に振った

それを確認して俺は医師の顔を見て、はっきりと答えた

「はい。」

「超音波で見る限り、跡部さんのお子さんは女の子ですね。」

そう言って、エコー写真を参考に詳しく説明しだす医師

女の子 と性別を聞いて、が わぁ という声と共に満面の笑顔になった

どうやらの勘とやらは当たってたみたいだな

いや、勘というか母親だから といった方がいいかもな




それから医師といろいろ話をして、帰りの車の中で突然車の中でが話だした

「景吾と一緒に性別を確認できてよかったよ。」

「俺も、初めて超音波越しだが動いてる子供見れてよかった。元気に動いてたしな。」

誰が見ても分かるくらいに腹も大きくなって、動くのさえしんどそうだ

・・・・辛くないか?」

「もうつわりも終わったし、大丈夫だよ。たまにお腹が張るくらいで」

「けどよ・・・・・お前だけ苦しい想いさせて・・・・・」


できるなら代わってやりてぇ―――

そう何度思ったことか分からない

だが実際に代わってやれるはずもないから

気休めと分かっていても、言葉が出てきてしまう

だが俺の考えとはまったく違うことをは口にした

俺の意図に気づいたのか、自分の腹を優しくさすりながら言った

その時のの顔は、俺が今まで見たことのない―――母親の顔だった


「景吾・・・・・。あのね、最近は胎動が多いんだけど、胎動を感じたときすごい幸せを感じるの。

 私と景吾の子供がお腹の中ですくすく育ってると思うと・・・・嬉しくて、幸せで仕方ないのよ。」

揺るぎないこの言葉を聞いて、母親は強いな と、このとき改めて思った瞬間だった

今までのは、母親になると分かっていたものの、まだ実感がないような顔してたっつうのに・・・・・

いつからそんな母親らしい顔できるようになったんだよ

「じゃあ俺と一緒にいる時は幸せじゃねぇっていうのかよ、あーん?」

そんな想いを悟られないよう、わざとこんなことを言ってを困らせる

返事は分かっていたが、さっきの言葉を聞いてそんなことを言ってみたくなった

「そういう意味じゃなくて・・・・景吾との子供だから嬉しいのよ。

 もちろん景吾がいてくれるだけでも十分幸せだよ? だけど、景吾の赤ちゃんが産める――

 これ以上の幸せってないと思うの。」

はっ

相変わらず可愛いこと言ってくれんじゃねぇの――?


子供のようにキメの細かい頬に赤みが増して

俯きながらそう呟くに、信号待ちで車が停まっていたのをいいことに、そっと片手で抱き寄せて

更に赤く染まった頬にキスを落とした









 *


それから日に日に私のお腹は大きくなっていった

赤ちゃんもすくすく育ってるんだろうな・・・・・




「そういえば子供の名前考えてくれた?」

お風呂を上がって濡れた髪の毛をタオルで拭き取りながらリビングへ向かうと

相変わらず洋書を読みながらコーヒーを飲んでる景吾の姿

その隣に腰掛けると、景吾は読んでいた洋書をパタンと閉じて

私から半ば強引にタオルを奪うと、代わりに髪の毛を拭いてくれた


もう9ヶ月過ぎたのに

洋服や赤ちゃんの食器など、生活必需品は山のように買ったのに

唯一決めていなかった赤ちゃんの名前

まったく考えていなかったわけじゃない 候補はいくつかあったけど

どうしても「これ!」っていうのを決められずにいた

「あぁ、考えてやったぜ?コイツにピッタリの名前だ」

ふっ と口元を上げながら髪の毛を拭いていた手を止めて、私のお腹にそっと手を置いた

私のお腹にいる赤ちゃんに聞かせるかのように―――



「綾香」



「あやか?」

「あぁ。「綾」に「香る」で『綾香』だ」

「・・・綾香かぁ」

「どうだ?俺様のネーミングセンスは」

「もしかして・・・・元カノ・・・・とか?」


いつも通り自信満々の景吾

これは前から変わらないから、ちょっとイジワルでそんなことを言ってみた

私としては冗談で言ったつもりだったのに、眉間に皺を寄せて見下ろす景吾の姿が・・・・

久しぶりにこんな怒ってる景吾見たかな?

・・・・・」

「嘘!嘘です、ごめんなさ〜い!」

これ以上何も言われないうちに逃げるようにその場を立ち上がって、洗面所へ歩いて行った

その後ろで「ちっ・・・・・そんなんじゃねぇよ」と呟く声が聞こえてきて、思わずクスクスと笑った







まだ完璧に準備はできていないのに、子供は毎日すくすく育っている

産まれるまであと約1ヶ月

痛いのは分かってるけど・・・・辛いのは分かってるけど

つわりとか起きてもお腹が張るときがあっても、今から楽しみでしょうがない毎日

それは私と景吾の子供だからだろうな

景吾も同じ気持ち、感じてくれているといいな



綾香、早くあなたに会いたい――――









                               
<NEXT>



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そろそろお産ドリームも終わりです!
もうこんなのは景吾じゃないのは自分が一番よく分かってるので、そっとしておいてください(汗)
次で終わりにする予定ですが、どうなることやら・・・・・
終わりにしたくないような、早く終わらせたいような
景吾の子供産みたいーっ!!←末期

 2005年 8月3日 日暮 茜