、今日は早いじゃねぇか。」

朝起きてリビングへ向かうと、既にの姿があった

エプロンつけて目玉焼き焼いてる姿なんて久しぶりに見た

最近はつわりが酷くて、朝もろくに起きられる状態じゃなかったからな

「景吾、おはよう。

 今起こしに行こうと思ってたんだ。もうご飯できるよ。」

の笑顔が太陽の淡い光を浴びて、いつもより更に輝いて見えた

最近つわりのせいで、まともに笑顔見てなかったからな

の笑顔を見て、俺も笑みがこぼれた







   
私は今、とても幸せです  act 4







「今日買い物行かない?」

食事を済ませ、リビングで2人してくつろいでいた時に、新聞の広告を見ながらが呟いた

「お前、身体は大丈夫なのかよ。」

ここんとこずっとつわり酷かったから、買い物も俺が仕事帰りに行ってたくらいだ

心配で支度しようとするの顔を覗き込む

そしたら心配してたのが分かったのか、クスクスと小さく笑っていた

「安定期に入ったって言ってたから大丈夫。それにここ2,3日は吐き気もないし、一緒に行こうよ。」

「だが無理すんなよ。辛かったらすぐ言えよ。」

「うん。」

嬉しそうなの顔を見て、ソファーから立ち上がると俺も支度を始めた


今まで他人をこんなに心配なんてしたことがねぇ

それより他人の事をこんなに考えたことすらねぇな

だが、に出逢ってからはかなり変わったと俺自身でも思う

を愛してる 嬉しいことは一緒に喜びたいし、が泣きそうになったら抱きしめたい

どんな些細な事からも守りてぇ

他人なんてどうでもいいくらいだった俺が、こんなことまで想うようになるなんて、な・・・・








車を走らせて、着いた所はデパート

久しぶりに遠出できたことが嬉しかったのか、ニコニコしながら店内へと足を運んでいた

そんな姿に苦笑しつつ、歩き出すの手を引いてやった

真っ先に『行きたい所があるの』と言われて、エレベーターで言われた階に辿りつくと、目の前に見えたのは洋服売り場

だが、どれもこれも小さい物ばかり

案内板に目を向ける『子供服、ベビー用品』

なんだ、ベビー用品を見にきたのか

だがまだベビーベッドやベビーカーなんて買うの早いんじゃねぇのか・・・・?

と思っていた俺の思考とは裏腹に、はベビー用品じゃなく、子供服の方へ歩いて行った

「景吾、見て。赤ちゃんの洋服がいっぱい売ってるー。」

「おいおい、そんなにはしゃぐなよ。」

俺の言葉も聞く耳持たず、服を手にとっては「可愛い〜」なんて声をあげていた


女の買い物は長いのは知ってるから、最初だけ付き合って

後は隣にあるカフェで洋書を読んでいた

時折の姿を確認しながら

だって子供じゃねぇんだから、そんなに心配することないんだが・・・・・・

やっぱり気になってしまう




それからしばらく待っていたが、まだ来る気配すら感じない

しょうがねぇな・・・・・・

洋書をパタンと閉じて立ち上がり、未だに洋服を一生懸命選んでいるの元へ行った

「おい、いつまで選んでるつもりだ?」

「景吾ー。だってどれも可愛いんだもん。」

何に悩んでいるのか洋服を覗き込むと、同じ色の洋服を眺めては『どっちがいいかなぁ?』と顎に手を乗せて悩んでいる

俺に言わせれば同じだと思うんだが、・・・・違うのか?

そういえば前にもこんな事があったな・・・・・


あれはまだ付き合ってすぐのこと

こんな風にの買い物に付き合って、待ちきれずの傍へ行くと、同じような物で一生懸命に悩んでいる姿

そんなに苦笑してたことを思い出した

・・・・・ったく、いつまでも変わらねぇな


未だに悩んでいるの姿にフッと笑うと、と同じく子供用品を買いに来た女がぶつかってきやがった

「す、すいません・・・・」

「いえ」

少し頬を赤らめながら謝る女にぶっきらぼうに返事を返し、周りを見渡した

いつの間にかこんなに混んでたのか

これ以上妊婦のをここにいさせられるか

「今持ってるの全部買っとけ。」

そう言って手に持っていたかごを奪い取り、その中には既に数着の洋服が入っていて

の手に持っていた2、3着の洋服と、更に何着か見比べていたもの全てをかごに入れた

俺の言動に、さすがのも目を丸くしていた

「え、いくらなんでもこんなに・・・・・・・」

「どうせお前のことだから、いつまで経っても選べねぇだろ。

 それなら最初から全部買った方が早いからな。」

「・・・・・う、ん。」

まだ困惑しているの手を引いて、さっさとレジに向かった

このときの俺は、いい加減待つのにうんざりしていたのと

これ以上この人ごみの中にを居させたくない思いで、一番大切な事を忘れていた――――










「・・・にしても買いすぎじゃねぇのか?」

家に帰って早速買ったものを見ては『可愛い』と連呼する

袋から大量の洋服が出てきて、思わずコーヒーを飲みながら口にした

そんな俺の言葉には口を尖らせた

「景吾が『全部買え』って勝手にお会計しちゃったんじゃない・・・・。

 最初に目星つけておいて、後でゆっくり選ぼうと思ってたのに。どれも可愛いかったから・・・」

「ま、いいけどよ。・・・もう性別分かったんなら名前も決めといた方がいいんじゃねぇのか?」

もう6ヶ月入ったしな、なんて言いながらコーヒーを一気に飲み干すとが俺の傍に近づいてきた

驚きを隠せない様子で

「え?景吾、もう性別分かってるの!?」

なんて言われた日には俺も思わず眉をしかめた

・・・・何か話がかみ合ってない気がするのは俺だけ、か?

「分かってるの?・・・・・って、分かってるんじゃねぇのかよ。」

「何で・・・?」

「今日買った服はどうみても女用だろ。」

それなら当然女だと思うじゃねぇか

まさかピンクの服を男に着せるわけねぇよな・・・いくらがその色が好きだといっても

「・・・・・・・あっ」

そこまで言うと、ハッとしたように黙り込んだ

まさかのやつ・・・・・・・

「可愛いってだけでこんなに女物の服ばかり買ったのか?」

「・・・・だってかわいかったんだもん。景吾もそう思うでしょ?」

って事はまだ性別がハッキリしたわけじゃねえんだな

呆れたように喋る俺に泣きそうになりながら弁解する

まぁ買っちまったモンはしょうがねぇし、こんなことでを泣かせるわけにもいかねぇ

あの時をあの場にいさせたくない一心で、気づかなかった俺にも責任あるしな

すっかり落ち込んだの頭に優しく手を置き、さっきの質問に同意した

「・・・・・・あぁ。だが男だったらこの服どうするつもりだ?」

「・・・・・・・・・・どうしよう」

たった今買ってきた大量の洋服を見ながら一人困ってるに苦笑しながら、ある提案をした

「・・・まぁ、別にいいんじゃねぇか?その時はもう1人作るまでだろ。」

「えっ!」

顔を真っ赤にして俺の方を見上げてくるに、思わず理性が飛びそうになる

「何顔赤くしてんだよ。そんな顔してるとここで襲っちまうぞ。」

「け、景吾っ!」

「・・・・冗談だ。」

冗談、とは言ったものの俺自身は本気だったが、今は無理させるわけにはいかねぇしな

もう・・・とぶつぶつ呟きながら子供の洋服を畳みだした

「あっ。」

「どうした?」

「今お腹が動いた・・・・・・」

「本当か?」

動いた と聞いて、いても立ってもいれずにすぐさまのもとへ近づいた

そしての腹にそっと耳を寄せる

そうか、もう子供が胎動する時期に入ったのか・・・・・

「どうだ?まだ動いてるか?」

「ううん、今は動いていないみたい・・・・」

「そうか。」

子供が動いたのを確認したかった俺は、『今は動いてない』と言われ、少し声のトーンを下げながら腹に近づけていた耳を離した

「でもまた動くよ。だってお腹の中でちゃんと育ってるんだもん。」

「・・・あぁ、そうだな。」

「もう耳も聴こえているみたいだよ。何か話しかけてあげてよ、パパ。」

「パ・・・・・・・・ったく。」

まだ慣れない『パパ』という響きに少し照れくさくなったが、それを隠しての腹に手を触れた

俺が優しく腹に触れるといつもはすごく嬉しそうな顔をするから、自然と俺も笑みをこぼす

そして優しく腹に向かって言った

今なお、すくすくと育っている子供に―――


「早く元気に産まれてこいよ。と一緒に待ってるから。」






                               
<NEXT>




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久しぶりのお産ドリになってしまいました(汗) すいません。
お産ドリームももうすぐ終わりに近づいてます!!
この後とか全然考えてないんで(いつもだけど)
あともう少しで産まれる・・・・・のかな?
もっと勉強します!!

 2005年 7月22日 日暮 茜