私が初めて恋をした人は、苦手な人でした

その時は絶対にこんな人とは付き合わないと思っていたけど

今ではいつでもあなたのことしか考えられなくなるくらい


あなたが好きです










       
Border Line 〜その後の2人〜 <前編>










その日は、お昼を可奈と愛と3人で食べていた

いつもは跡部と食べているけど、今日は生徒会の用事があるらしく、今は教室にはいない

跡部と付き合うようになってからというもの、いつも恋愛話を聞くだけだった私も何気によく聞かれるようになった

前までは・・・私がまだ2人の愚痴や惚気話を聞いてる頃は、まさか私が跡部と付き合うなんて思ってなかった

最初は接点もない人だったし、唯一接点があるとすれば同じクラスって事くらいだけど、それでも私と跡部は話したことがなくて

私は跡部の噂をいろいろ聞いてたから、あんまり関わりたくないと思ってた

可奈や愛が跡部のことを『かっこいい』と言っていても、話に加わることも出来なかったのに


偶然ストリートテニス場で逢った

約束も何もしていなくて、たまたま私が来た所に跡部がいた

あの時はまだ恋だなんて気持ちはこれっぽっちもなくて・・・・・・

今思えば、あれは偶然じゃなく必然だったのかもしれない




そう、始まりはあの日からだったんだ――――

恋なんてしたことのなかった私が、変わり始めたのは

変えてくれたのは、間違いなく跡部











ー、最近跡部君とどうなってるの?」

またこの話?

跡部と付き合ってから、毎日のように聞いてくるんだよね

まぁ、2人とも影では跡部のこと癒しとして好きだったから気になるのも分からなくはないけど・・・・

毎日聞かれても答えることなんてないよ〜

小さくため息ついていつもと同じ返事をした

これ以外に答えることがなかったから

「どーなってるって・・・・普通だよ。」

「跡部君のことだから手早そうだよね。」

「そんなことないよ。」

私の返事に驚いたのか、2人して顔を見合わせていた

「跡部君、我慢してるのかな・・・・。が拒むから。」

「私、別に・・・・拒んでなんてないし!」

跡部は噂だと手が早いとか言われてたけど、今まで付き合っていてキス以上のことは要求してこない

私が嫌がると思ってるのかな

実際そんな雰囲気になったら少しは戸惑うだろうけど・・・・・・・

だって・・・私は跡部と違って慣れてないんだもん

付き合うのでさえ初めてなのに・・・・

多分、跡部もそれを分かってくれていると思うって安心してたんだけど・・・・


「・・・・跡部って我慢してるのかな?」

「もう他の子と遊んでたりしてねー。」

可奈の言葉で思わず動かしていた手を止めた

多分冗談で言ったんだと思うけど、今の私にはとても冗談に聞こえなかった

ありえない話じゃないから・・・・

跡部のこと信じてるけど

『女関係が激しい』

今でも前の跡部の噂が頭に引っかかって離れない

「冗談だって!!今の跡部君見てれば、あんたに一途なのすぐ分かるし!」

落ち込む私を見て、可奈が慌てて喋りだした





「そういえばさ・・・。」

そんな私たちのやりとりを聞いていたのか聞いていなかったのか、ご飯を食べながら漫画の続きを読んでいた愛が口を挟んだ

ってまだ『跡部』って呼んでるの?」

「うん・・・・。」

そういえばそうだね・・・と可奈が目を見開いて私に聞いてくる

「どうして?跡部君って名前で呼ばれるの、嫌な人だっけ?」

「ううん。むしろ跡部は『名前で呼べ』ってうるさいよ。」

「じゃあ何で呼んであげないの?」

「・・・・・何となく。今まで『跡部』って呼んでたのに急に名前でなんて呼べないよ。」

「相変わらずねぇ。」

私の曖昧な返事に愛がため息をついた

跡部と付き合う前は2人に相談するたびに曖昧な返事しか出来なかったから

だって本気になっちゃいけないと思ってたから

どうせ遊びだと勝手に思い込んでいて、自分の気持ちをはっきりと伝える事がなかなかできなかった

でも跡部も本気だって分かって、素直に自分の気持ちを伝える事ができたのも2人のおかげ



「相変わらずって言えば・・・・あれも相変わらずじゃない?」

あれ と言われて、可奈が小さく指さしていたので、その方向を見た

その先には、いつの間にか教室に戻っていた跡部ともう1人

違うクラスの女の子だけど、たいした用事もないのにこのクラスに来て跡部の傍にいる

親衛隊の子だったと思うけど・・・・・

でも、前に私にちょっかい出した子じゃない

ちょっかい出してきた子は跡部に顔を覚えられてるのか、跡部の前には行かなくなった

影ではまだ騒いでるみたいだけど


あの日私にちょっかい出して跡部に怒られた子達が騒いでいたらしく、跡部が付き合ってるという噂は次の日の朝には学園中に広まっていた

私はわざわざ言いふらしたりはしないけど、噂ってすごいな と人事のように関心したっけ

だから跡部が私と付き合ってるのは学校中のみんなが知ってると思う


それでも跡部が好きな女の子はたくさんいる

今跡部といる女の子も、私と付き合ってるのは知ってるはずだけど、それが納得できないのか、いつも跡部に纏わりついている

しかも私が近くにいる時に限って・・・・・・

「あれって絶対ワザとだよね。」

「うん。に対抗意識燃やしてるんじゃないの?」

「そう・・・・なのかな。」

ちらっとその子を見たら、一瞬目が合った気がした

笑顔がとっても可愛い

男子の間でも結構人気のある子だって言ってた

「でも大丈夫だって。跡部君だってまったく相手にしてないじゃない。」

そう言われて跡部を見ると、その子とは全く違う空を眺めてぼんやりしていた

女の子が跡部を相手に1人で喋ってるかんじ・・・・・

「そうそう。大丈夫だよ。」

「・・・・うん。」

2人に励まされても、私の心の中は複雑な想いでいっぱいだった






今日も1日終了して、下校時刻

でも跡部のいるテニス部は放課後も練習がある

帰る用意をしていると、可奈と愛がこっちへ来た

「今日は跡部君待ってるの?」

「うん、帰るときくらい一緒にいたいし・・・・。」

もすっかり恋する乙女ねぇ。」

まさかそんなことを言われるとは思ってなくて、急に恥ずかしくなった

「う、うるさいな〜。それで2人はどうするの?」

「私達は今日は一緒に帰ろうかなと思って。」

「そうなんだ。」

「あ、可奈。その前にちょっとテニスコート寄っていい?亮に逢って行きたいから。」

「はいはい。」

「じゃあ一緒に行こう。」

私達はテニスコートへ向かった






「「「キャー!!跡部様〜vv」」」


テニスコートに近づくにつれて、そんな声が大きくなってくる

付き合ってしばらく経ってるけど、相変わらず跡部の人気は高い

フェンスに張り付くようにして跡部を必死で応援しているギャラリー

跡部が1ポイントを決めるごとに黄色い歓声が上がり、頬を染める子や、叫ぶ子までいた


・・・・・いつものことだけど、気まずい





しばらく跡部のテニスを眺めていた

無駄のない身のこなし

初めはどこがいいのか分からなかった所が好きになった瞬間からいろいろ見えてきて、ますます跡部のことが好きになる

同時に相変わらずの人気を実感して、少し落ち込む自分がいた


跡部・・・・・

私、やっぱりすごい人に恋しちゃったんだなーと嫌でも感じさせられる



。」

ぼーっとしていた私に気づいたのか、他の女子をかきわけて私の所まできた

そして人気の少ない所まで連れていかれる

あれ、試合は?

と思ってスコアを見ると、見事に跡部が6−0で勝っていた

「・・・よく私を見つけたね。」

「あーん、当たり前だろ?俺を誰だと思ってんだ?」

「はいはい、跡部様ですね。」

口ではそんな事を言ってしまうけど、内心はこんなにいる女子の中で私を見つけて駆け寄ってきてくれた事がすごく嬉しい

「今日、一緒に帰れないから先に帰ってろ。」

「・・・・・そうなの?」

せっかく一緒に帰れると思ってたのに・・・・

明日も学校休みなのに跡部が用事あるって言って逢えない

そんな想いを悟ったのか、跡部の大きな手が私の頭をポンポンと軽く叩いた

「そんな顔するな。明日はあけといてやるから。」

「えっ!?でも明日用事あるって言ってなかった?」

「お前がそんなこと心配するな。」

「本当に?じゃあ今日は先に帰るね。」

「あぁ。」

じゃあね と手を振ってテニスコートを離れていった

今日は一緒に帰れなくて寂しいけど、明日は一緒にいられるんだ



跡部と別れてすぐ、可奈と愛に会った

「あ、ー。私達帰るけど・・・・。」

「ごめん、私も一緒に行っていい?跡部、今日は用事があるみたいだから・・・」

「そっか。じゃあ3人で帰ろう。駅前のファミレスでも寄ってかない?」

「「賛成〜!!」」

愛の提案に可奈と声を揃えた



というわけで、久しぶりに3人でファミレスでお茶している

「ここの新作パフェ食べたかったんだ〜。」

そういえば愛って甘いもの大好きなんだよね

この前も宍戸連れて食べに行ってたみたいだし・・・・

「愛は本当にパフェ好きだね。」

「そういう可奈だってまたいつもと同じケーキ頼んでるし・・・・。」

のケーキもおいしそうっ!一口も〜らい。」

私が止める暇もなく、可奈が私のケーキを自分のフォークで食べていた

そこが一番おいしい所なのにぃ〜!!

こうなったら私も食べてやる

「ずるいっ。私も食べちゃお〜っと。」

そんな会話をしながらそれぞれ頼んだものを一口ずつ食べ比べていた





「・・・・・・ねぇ。」

「どうしたの?」

視線を上げて愛の方を見てみれば、愛はある一点をじっと見つめていて

背中を向けていた私と可奈もつられるように愛の視線をたどり、信じられない光景を目にした

・・・・・見なかった方がよかったのかもしれない

そう思ったほどショックが大きかった












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