私は今、何を見ているの?

逢いたいと思っていたから神様が幻を見せてくれたの?


でも・・・・・・どうして?














      
Border Line 〜その後の2人〜 <後編>













「・・・・・・ねぇ。」


そう言ったまま動かない愛を不審に思い、愛の視線をたどって、入り口の方を見た

多分、愛達と同じ人物を私は見ていると思う

どうしてここに?

一瞬、幻か何かだと思った

だってこんな所に来るはずがない

しかも・・・・・



「・・・・・・・跡部君、だよね。」

愛の言葉も頷くことができない

跡部から視線をずらせない

入り口から入ってきた人物は、跡部ともう1人・・・・・・

親衛隊の子

最近跡部の周りにいる女の子

さっきも教室で会ったし・・・

その子と跡部がどうして一緒にいるの?

もしかして・・・・・・デート・・・・

嫌な言葉が頭の中を横切ろうとした時、隣から可奈の声がした

「うん、間違いなく跡部君だって。、どういう事!?」

「・・・・・・・可奈、席代わって。」

今の席は4人席で、窓際に可奈、通路側に私で向かいが愛っていうかんじに座ってた

ここだと、もしこっちへ来た場合、跡部にばれるかもしれないと思ったから

見つかりたくなかった

だからとっさに小さな声で可奈に言って、席を代わってもらった


『どういう事』なんて私の方が聞きたいくらいだよ

どうして私の約束を断って、あの子と一緒にいるの?

もう私のこと、必要としてくれないの?


・・・・やっぱり捨てられるの?



2人は私たちの手前の席に座った

気づかれると思ったけど、幸い1テーブル毎のしきりが結構高かったため、私たちの存在には気づいていなかった

私達はすっかり黙りこんでいた

だって、こんな状態で一体何の話をすればいいの?

初めて跡部の事を好きになれて「好き」って言われて

信じる気持ちを教えてくれて

跡部の温もりを感じることができて・・・・・

あの時言ってくれた言葉や温もりは全部・・・・嘘だったの?

だったらどうして私なんかに声かけてきたのよ


―――俺がいつも誰の事を見てるかくらい分かんだろ 俺にはこいつしか見えてねぇんだよ――――


あの時、この言葉が胸にしみた

本当に嬉しかったの それなのに・・・・

跡部はズルイよ

こんな気持ちにさせて、こんなに跡部を好きになって

あなたなしでは生きていけないくらい愛して・・・・・

なのに、こんな形で簡単に裏切られて

私、これからどうやって生きていけばいいのよ

ねぇ、教えてよ・・・・・





「ねー、景吾。どうしてこんなとこに来たの?景吾らしくない。」

私達が誰1人喋っていないせいで、隣の声が嫌でも私たちの席まで聞こえてくる

聞きたくない けど、どうしても耳を傾けてしまう


いや・・・・・

あなたが『景吾』なんて・・・・名前で呼ばないで

「あの女ムカつくーっ。、うちら乗り込んでこようか!?」

小声でこぶしを握り締めながら可奈が立ち上がろうとするのを必死で抑えた

やめて・・・・・今私がいるのが跡部にバレたら、きっと軽い口調で捨てられる

そうに決まってる

本当は可奈みたいに今すぐ乗り込んでいきたいよ

そんなこと できるわけないのに

やっぱり私は弱いね

傷つくのが嫌で、何も自分ではできない

跡部を好きになって変わると思ってたけど・・・・無理みたい


それを見ていた愛も可奈に声をかける

「可奈、いいから。もう少し様子みてからにしなよ。」

しぶしぶ可奈も大人しく座った







「・・・・・どうして今日お前に付き合ってやったか分かるか?」

急にずっと黙ってた跡部がゆっくりと口を開いた

跡部の質問が不思議に思ったのか、少し戸惑いながら彼女が言葉を返す

「どうしてって・・・遊ぶためでしょ?これからどうする?」

「遊ぶため、だと?」

彼女の答えで跡部の声のトーンがまた一段と下がった

かなり不機嫌そうなのが、表情を見てなくても分かる

「景吾?」

「わざわざとの時間を割いてまでお前に付き合ってやったのは、もう俺に近づくなって事を言うためだ。」

「えっ・・・・・?」

「てめぇが俺の周りでうろうろしてるとが心配すんだよ・・・あいつは言わねぇけどな。」

跡部・・・?

跡部の言いたいことが分からない

何がしたいの?・・・・何が言いたいの?

跡部の言葉に、俯きながらも聞き耳立てた

「だからあんな子別れちゃいなさいよ。どーせ遊びなんでしょ?」

学校にいるときの彼女は、そんなこと言うタイプには見えなかったのに・・・

それにもびっくりしたけど、次の瞬間、跡部が怒鳴るような声をあげた方が驚いた

「ふざけんな!てめぇが俺の何を知ってるって言うんだよ。

勝手なことベラベラ喋ってるんじゃねぇ。これに懲りたら二度と俺に近づくな。」

「ちょ、ちょっと!景吾・・・・」

「それから。」

必死に帰ろうとする跡部を止めようとする女の子の言葉を遮って、話を続けた

「俺の事を名前で呼んでいいのはだけだ。」

そう言うと伝票を持ってさっさと帰ってしまった

女の子は訳が分からず、1人で唖然としていた



・・・・・どう、いうこと?

跡部はデートしに来たんじゃないの?

わざわざあの子を誘ったのは・・・・・それを言うため

てっきり私はもう捨てられるのかと思ってたけど、そうじゃない

『俺の事を名前で呼んでいいのはだけだ』

跡部の言葉の重みに気づいて、知らない間に涙を流していた



・・・・・。」

可奈に呼ばれて俯いていた顔をあげると、2人して微笑んでいた

「ほら、跡部君帰っちゃうよ。追いかけなよ。」

「うん・・・・・。ごめんね。」

「いいから。」


2人に謝って、追いかけるように跡部の後を追っていった

本当、いつも2人には迷惑かけてばっかりだし、それに・・・・


跡部がそんなことを言ってくれるなんて思っていなかった

私ばっかり跡部のことを好きになったと思い込んで

跡部の気持ち、考えていなかった

これじゃあ付き合う前と何にも変わらないじゃない

誰かに背中を押してもらって変わるんじゃなくて

自分から変わっていきたい






「跡部っ!!」

あの後すぐ出て行ったにも関わらず、跡部は歩くのが早くて追いつくのに時間がかかった

走りながら背後から声をかけると、ピタッと立ち止まって振り返った

「・・・・。何やってんだよ、こんなとこで。」

「あ、あのね・・・・実は今まで愛達とそこのファミレスにいたの・・・・・。」

事実を告げると、跡部は少なからず驚いたようで、返事がなかった

「・・・・・。」

「どうしてわざわざファミレスなんかであんな話・・・・」

「聞いてたのか。」

「・・・ごめんなさい。」

「・・・・・いや、謝ることねぇけど・・・のいない所で言いたかったんだよ。」

「どうして?」

「・・・・かっこわりぃじゃねぇかよ。」

照れてるのか、そっぽ向いて話す跡部がすごく愛しくて

「かっこいいよ、景吾。」


気づいたら、自然に名前を言えていた

本当はずっと名前で呼びたかったのに

周りの女の子達の目が怖い とか・・・・

恥ずかしい とか、今更呼べない なんて理由でずっと呼べずに

意地を張らずに最初から『景吾』って呼んでいればよかった


突然私が名前を呼んだから一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに戻った

「・・・・・いいもんだな。」

「何が?」

に名前で呼ばれるのも。これからもそうやって呼べよ。」

「うん。がんばってみる。」

私の返事に苦笑してから、景吾が手を差し伸べてくれた

「家、来るか?茶でも飲んでけよ。」

「うん!!」

素直に返事して、景吾の手を絡め取った

それから景吾が呼んだ車に乗り込んで、景吾の家に行った







「お、お邪魔します・・・・・。」

初めて景吾の家を見たときも驚いたけど、部屋も大きい・・・・

そういえば私、景吾の家に来たんだよね

・・・・今更ながら緊張してきた


「何緊張してんだよ。」

入り口に突っ立ったまま動こうとしない私を笑いながら、制服の上着を脱いだ

「べ、別に緊張なんてしてないよ。」

「どーだかな。」

フッと笑って大きなソファーに座り込んだ

私の反応を楽しんでるみたい

「こっち来いよ。」

そう言われて景吾と少し離れた所にちょこんと座った

そしてテーブルの上に置かれた紅茶に口つけた

「あ、おいしい。」

「当たり前だろ。」

はいはい・・・・・・

と、いつもと変わらない返事に苦笑しながらティーカップを置いたら、それを待っていたかのように、私の腰に手を回してぐっと引き寄せた

「な、何?」

「何でそんなに離れて座るんだよ。」

「だって・・・・・恥ずかしいじゃない。」

「今更恥ずかしいもないだろ。」

「ひっどーい。」

少し睨むように景吾の顔を見ていたら、景吾の手が私の頬に触れた

そして顔が近づいてきて、唇が重なった

軽く触れるだけのキス

そっと唇を離してしばらく見つめあったかと思うと、景吾はまた唇を重ねてきた

さっきとは全然違う深いキス

角度を変えて何度も何度も・・・・・・・

「ん・・・・・・ふっ。」

次第に息が続かなくなり、息を吸おうと口を少し開くと、それをさせない というふうに景吾の舌が入ってきた

そして逃げまとう私の舌に容赦なく絡みついて、私の口内を犯す

こんなキスは初めてで、最初は戸惑いながらも、次第に景吾に酔っていった


やっとのことで離れた唇からは、名残惜しそうに銀色の糸が引いていた

景吾の少し強引で優しいキスに、体の力が抜けていた

じっ と景吾を見ていると、私の髪をそっと撫でながら

、今日泊まれ。」

突然のことに、恥ずかしさよりも唖然としてしまう

「何?急に・・・・。」

「そんな顔で煽られて、これ以上抑えられるかよ。」

「景、吾?」

「どうせ明日も一緒に過ごすんだ。今日からいたって別にいいだろ?」

「・・・・でも。」

泊まりって・・・・・

景吾の家に来たのも初めてなのに、その日に泊まりだなんて

そのまま返事できずにいると、景吾が私の肩を抱き寄せてきた


「俺、お前に言ったよな。『これから時間をかけてゆっくりとお前の事、教えてもらう』って・・・・。」

確かにそれは前に聞いた

コクンと小さく頷く

「そしてお前も言った。『その時は俺の全てを見せろ』ってな。」

そんなこと・・・・・言ったけどっ!!

いろいろと心の準備ってものがあるの

「えっ、あの・・・・・・」

どうしていいか分からず、景吾の腕の中であたふたする私に小さく笑って優しく抱きしめた

「お前の全て、俺に預けろよ。受け止めてやるから・・・・。」


そう言うと、私を抱きかかえて抵抗する暇もなく、ベッドへと連れていかれた

シルクのシーツの上、景吾はゆっくりと私の身体を押し倒した

そして唇を重ねてきた

深い口付け

まだ慣れていないキスを続けていたせいで、私の息が乱れる

そんな私の耳元で景吾が囁いた

「かわいいじゃねぇの。」

「っ・・・・・・・。」




そして 月明かりの下、私達の影が一つに重なった












――――――――――――――――――――――――


お待たせしました!!

連載が終わって早2ヶ月

ずっと書きたいと思っていたBorder Lineの続きです☆

ヒロインちゃんに『景吾』と呼ばせようと必死にがんばってみました。

これでBorder Lineは終わりです(たぶん)

またリクエストがあったら書くかも(笑) え、しつこいって?

どうして景吾があのファミレスへ来たのかは聞かないでください(笑)

景吾も来たいときがあるんですよ♪


 1月18日