act6 〜信じる気持ちと信じられない想い〜
遅くなっちゃった・・・・・
今週週番の私は 日誌を置きに職員室まで行っていた
ウチのクラスは席が隣同士の人が交代で週番をやる
当然私と跡部が一緒に週番をやっている
でも今日は生徒会の仕事でいない
生徒会長も大変だなぁ なんて思いながら急いで鞄を取りに教室へ戻る
最初から鞄を持って職員室に行けばよかった と少し後悔しながら・・・・・・・
二度手間だよぉ
自分の教室に着く手前で話し声が聞こえてきた
・・・・・・うちのクラスからだ
まだ誰か残ってたんだ と思った瞬間、進めていた足を止めた
反射的に止まってしまった
そこには 女の子がいた
でも私のクラスの子じゃなかった
それと、もう1人―――――
「跡部君―――――」
次の瞬間、体が固まって動かなくなった
教室に西日が差し込んで 2つの長い影を作り、だんだんと近づく
2人の顔はハッキリ見えないけど、跡部なんて名前は全校生徒探してみても、きっとあの跡部以外にいない
・・・跡部が女の子と抱き合ってる・・・・・・?
逃げなきゃ
瞬間的にそう思った
どうしてそう思ったのかは分からない
何で跡部が? 週番をサボってまで女の子と抱き合ってるの?
いろんな事が頭の中で交差する
今はどんなことより、 一秒でも早くここから立ち去りたかった
でも・・・・・
どうしよう・・・・・
体が動かない 動いてくれない
お願い 動いて・・・・・・・
こんなの・・・こんな所、見たくないっ
やっとの事で少し動いた体は ドアに少し触れた
カタン
小さな音だったのに 自分ではやけに大きく感じた
普段ならこんな音なんて気にも止めないのに、静寂の中で響いた小さな音は 私の頭の中をさらに 混乱させるには十分だった
やだ・・・・・どうしよう
音に気づいて教室にいた2人もこっちを見た
「・・・・・っ。」
跡部と目が合った
跡部も私を見てすごく驚いてた
どうして驚くの? 私に何か悪い事でもしてるような驚き方
抱きついてる女の子の腕を、勢いよく解いて私に近づいてくる
やだ・・・・・来ないで
どうして私の所にくるの?
私の足・・・・・・動いて
それでもなかなか動いてくれない自分の足を何とか動かして その場を逃げるように立ち去った
「景吾っ、どこ行くの?」
「うるせえ!」
教室からそんな声が後ろから聞こえてきた
「、待てよ!」
跡部が私を追いかけてくる
どうして追いかけてくるの?
どうして私は逃げてるの?
私は何処へ行こうとしてるの?
誰か教えて―――――
体育系の それも男の子にかなうはずがなく、あっさり追いつかれ、腕を掴まれた
「・・・・・何で逃げるんだよ。」
息一つ乱してない さすが・・・・・・
私は軽く息が切れてるのに
「・・・・そっちこそ何で追いかけてくるの?あの子待ってるんじゃない? 私にかまわず、早く行ってあげたら?」
追いかけてきてくれた事がすごく嬉しい
でも今は嬉しさより、何よりも この隠しきれない気持ちの方が大きかった
この気持ちは、何てよんでいいのか私にはまだ分からない
「お前誤解してないか? アイツは・・・・・・・」
もういいっ 何も聞きたくない・・・・・
「いいよ別に。私に言い訳なんてする必要ないでしょ? 私帰るから・・・・・・手、離して。」
跡部の顔を見れずに俯きながら 掴まれてた腕を振り解いて 全速力で走っていった
今顔を見たら泣いちゃいそうだったから
後ろから跡部の声がしたけど、もう何も聞こえない
聞きたくない
それ以上跡部が追いかけてくることはなかった
週番をサボってあんなことして 昔の私だったら怒ってただろうけど、今の私にはそんな余裕すらなかった
同じクラスっていうだけで、それ以外何も接点がなかった私達が、ひょんな事から喋るようになって
あの日
保健室で告白された
あの時は、絶対聞き間違いと思ったけど
別に跡部の事は嫌いじゃない
・・・・最近は、むしろ一緒にいて楽しいと思いはじめてきた
なのに・・・・・
あれは嘘だったの? やっぱり遊びだったの?
私の気持ちをかき乱して何が楽しいの?
少しでも悩んでた自分がバカみたい
気づけばいつの間にか、涙を流していた
「・・・・・大丈夫」
独り言を呟き、涙を拭って家へと向かった
本気になる前でよかった
これは悲しい涙じゃない
―――じゃあ、この涙は何?
次の日
・・・普通に 普通に
――私は跡部の事好きじゃない――
昨日考えて出した結論
だからあんな所見ても 別にもう平気
昨日はいきなりあんな場面見せられてびっくりしちゃったけど もう平気
だから今日は普通に話せる・・・・・
思いっきり深呼吸して、自分の席へと近づく
隣にはすでに跡部の姿があった
それだけで、私の心は大きく揺れ動く
どうしいちゃったんだろう
最近私おかしいよね・・・・・
でも、珍しい
私より早く来てるなんて
いつもギリギリの時間に、余裕かまして来るのに
「・・・おはよう、跡部。」
「・・・・・あぁ。」
ほらね、普通に顔見ながら喋れたし
・・・・大丈夫
席についたけど、何か落ち着かない
視線を感じる
それは紛れもなく、跡部の視線
最初は見て見ぬふりをしてたけど、それでも跡部は何を言うわけでもなく、ただ肩肘をついて私の方を見てる
・・・・・何なのよ
私が何したっていうのよ
言いたい事があるならハッキリ言いなさいよ!!
と言うつもりで、跡部の方に顔を向けると同時に、跡部が席を立った
「ちょっと来い。」
「・・・・・・は?」
いきなり跡部が口を開いたと思ったら、いきなり「ちょっと来い?」
私は言いたい事を言えずに、しかもいきなりの事に呆然となる
そんな私を引きずるように、右腕を引っ張った
なんなのよ・・・・跡部の奴・・・・
「何よ、跡部っ・・・・これから授業でしょ?」
「いいから黙ってついて来い!」
いきなりの大声に教室中が一瞬静かになる
私も思わず体が硬直する
跡部がこんなに大声出すなんて
女の子達の少し睨むような視線を浴びながら 跡部の後をついて行った
「何? こんなところまで来て。」
屋上についた私は とりあえず話があるという跡部に尋ねた
「お前、昨日のこと・・・・・・」
もうその話はしないで・・・・・・せっかく忘れようとしてるのに
昨日のことは、私には関係ない
これ以上聞くのが嫌だったから 話を最後まで聞かずに喋りだした
「あぁ、ごめんね、覗くつもりはなかったんだけど。邪魔しちゃ悪いかなと思っ・・・・・・」
「俺は・・・・・」
今度は跡部が私の言葉を遮り、強く自分の言葉を主張した
「お前が好きなんだよ。」
二度目の告白
これはもう聞き間違いなんかじゃない――――
―――今までは体だけあれば十分だった
抱いた女は俺のこと好きだったとしても、俺にとってはそんなのどうでもよかった
でも今は違う
初めてこいつを俺のものにしたいと思った
心まで欲しいと思ったのは
こいつが始めてだ―――――
「ねぇ、それって本気なの? それともただの遊び?」
少し睨むように聞き返す
もうその話は忘れようとしてるのに、どうしてそういう事言うの?
「ったく・・・・この俺が始めて女を口説いてるっていうのに・・・・・。本気に聞こえないのかよ?」
少し呆れながら跡部が口にする
本気に聞こえないから聞いてるんじゃない
「なに、それ・・・・・」
初めてなわけないでしょ?
今まで何人の人と付き合ってきたと思ってるの?
具体的な数は知らないけど、噂に聞いただけでもかなりいたはず
それは、全員女の子から告白されたってことなの??
まぁ、跡部ならありえるかもしれないけど・・・・
それもすごいと 思いつつ、疑問をぶつける。
「・・・・・じゃあ何でいろんな子と付き合ったりしてたのよ。
嫌だったら断ればいいじゃない。好きだから付き合ったんでしょ?」
「別に好きでも何でもねぇよ。あの時は断る理由がなかったからな。」
跡部の言い方にむかついた
断る理由がないっていうだけで、付き合ったりする? 普通・・・・
「・・・・だから昨日の子も、断る理由がないから付き合ってみようと思ってたわけ?」
「昨日は、俺が生徒会の仕事が終わって教室に行ったら アイツがいていきなり告白してきたんだよ。
で、俺が断ったら、勝手に抱きついてきやがったんだよ。」
訳分かんねぇよ と愚痴をこぼしながら髪をかきあげてる
断った?
それを聞いて私は心底驚いた
跡部って 来る者拒まずかと思ってた・・・・
じゃあ少なくとも、昨日は跡部が自分から抱きしめたわけじゃなかったんだ
それを聞いて 少しホッとした自分がいたけど、その時はそれには気づく事なかった
「・・・・・跡部ってさ、相手の気持ち考えたことあるの?」
「今は俺のことはいいんだよ。それより、お前は俺のことどう思ってるんだよ?」
少し苛立ったように私に問いかけてきた
どうして私につきまとうの?
あんたと遊びたがってる女の子なんていっぱいいるじゃない
私には、もう何が本当の事なんだか分からないよ
・・・・私のことは放っておいてよっ!
「私は・・・・・・跡部のこと好きじゃない。」
「・・・・・・・・そうか。」
一言呟いて 跡部は静かに屋上を去っていった
跡部が一瞬すごく寂しそうな顔をしたのは気のせい?
・・・私のせいなの?
跡部らしくないよ
あんたはいつも勝ち誇った顔でいてよ
1時間目はサボろう
暖かな太陽の日差しの中、私はフェンスの前に腰かけた
空を見上げると白い小さな雲がふわふわと浮かんでいる
・・・・・・だって絶対遊びだもん 私には分かってる
いっそのこと遊びで「付き合えよ」って からかうような感じで言われた方が まだ軽く断れた
私もどうしていいか分からないんだもん
跡部のあんな真剣な顔 見たことないから
でももう関係ない――――
そう思ったら胸が ツキンと痛くなった
<next>
――――――――――――――――――――
Border Line act6が終わりました
本当にちゃんは跡部さんの事が好きじゃないのでしょうか・・・・?
どうなんでしょうねぇ〜(オイ)
まだまだ続きます。