知らなかったの
彼が甘いもの苦手なんだって事・・・・・

「・・・・知らんかった?跡部って甘いの苦手なんやで?」

景吾の家に行く当日
教室で忍足君に言われた事
それから景吾の家に行くまでの間、どうしようか必死で考えていたけど
今更他の物も作れず、車に乗せられた


初めてくる景吾の家
お金持ちとは聞いていたけど、ここまでとは思わなかった
景吾の部屋へ案内されたけど、ここも広い
思わず部屋を見渡す

「どうしたんだよ。こっち来いよ。」

大きなソファーに座って、ドアの入り口に立っている私に声をかけてきた

「うん・・・・・。」

少し遠慮がちに景吾の隣へ座る

やっぱり作ってくるんじゃなかった
付き合って初めて景吾の家に行くから、何か持っていこうと思ったけど、何がいいのか分からずに
結局ケーキを作って持ってきたけど・・・・・・
今更後悔する
いいや・・・・・このまま持って帰ろう・・・・
ふぅ と小さくため息ついた横から、景吾が話かけてきた

「で、鞄の中の物。見せてみろよ。」
「えっ?何の事?」

唐突に言う景吾に、本当に何の事か分からず首を傾げる
まさか、ケーキのことじゃない・・・よね?

「とぼけるなよ。さっきから甘ったるい匂いがするんだよ。何か持ってきたんだろ?」

そう言いながら、私が止めるのを無視して鞄から綺麗な箱に包んだケーキを取り出した

「ケーキか・・・。」
「・・・・・・作ってきたの。」
「でも景吾って甘いの苦手なんだね。それ知らなくて・・・・ごめん。」

返して と言おうとすると、箱の中に入っていたケーキのクリームを指ですくいとって、舐めた

「いいよ、無理しなくてっ。」
「・・・・甘ぇな。」

そう言いつつも、食べてくれる景吾
甘いの苦手なはずなのに無理してまで・・・・・
そんな小さなことで泣きそうになってしまう

「甘いの苦手だって知ってたら違うの作ってきたのに・・・。」

本当に悪いことしたな と思って俯くと、私の頬に軽く触れ、顔を持ち上げられて

「確かに甘ぇのは苦手だが・・・・・・」

小さなキスを1つくれた


「こういう甘ぇのならいくらでもいけるぜ?なぁ、・・・・・」


そう言って、顔を赤くしている私に、何度も甘いキスを落としてくれた





     跡部景吾






今日は周助と久しぶりのデート
ワクワク気分で近くの喫茶店に入った

は何にする?」
「うんとね・・・・モンブラン!」
「じゃあ僕はショートケーキで。」

注文に来たウエイトレスに頼んで、ケーキと紅茶が運ばれてきた

「おいしいっ。」

いつものように友達と寄っているお店なのに、今日はいつもよりおいしく感じる
どうしてだろう・・・・やっぱり周助と一緒だからかな
なんて思って周助を見ていた

「・・・どうしたの?じっと見て。」

私の視線に気づいたのか、食べていた周助の手が止まって、私の方を見た

「べ、別に・・・・。」
「もしかして・・・・・」

ずっと周助を見てたのに、気づかれた!?

「・・・・僕のケーキも食べたいの?」

私が周助のケーキも食べたいと思われたらしく、思いっきり勘違いされた

「違うよ!そんなに食い意地はってないもん。」

大げさにムッと頬を膨らませて横を向いた
その行動にクスッと笑って、一口サイズにカットしたケーキを私の目の前に差し出した

「口、開けて?」

えっ、これはもしかして・・・・・・

「食べさせてあげるから。」

そう言われてショートケーキが乗ったフォークが私の口の前に運ばれる

「いいよっ!!」
、人の好意は素直に受け取っておいた方がいいよ。」

慌てて否定するけど、周助はフォークを私の口元に持ってきたまま、相変わらずニコニコとしている
部屋の中ならともかく、みんながいる店内でそんなことしなくても・・・・
でもいくら私が嫌だと言っても、聞いてくれなそう
しばらく悩んだけど、観念してゆっくりと口を開いた
そして周助が目の前で差し出すケーキを食べた
は、恥ずかしい・・・・・

「おいしい?」

周りを気にする事なくいつもと同じ笑顔で聞いてきた
こっちは恥ずかしくてそれどころじゃないよ〜!!

・・・・・でも

「・・・・おいしい。」

いつも食べているケーキよりも、何倍もおいしく感じたから
素直にそう答えると、優しい微笑みをくれた


じゃあ、私が食べさせてあげてもあなたは同じ答えくれる?


不二 周助     





今日は私の誕生日
学校も休みで、彼はどうやって祝ってくれるのかと思っていたら突然家に呼ばれた

「スマンな、急に呼び出してしもて・・・・。」
「いいよ。侑士と一緒にいるだけで幸せだから。」
「嬉しい事言ってくれるやないの。」

そう言われて 本当の事だよ と言うと、頬にやさしくキスをくれた


「それで今日はどうしたの?」

侑士の部屋へ案内されて一息ついた時に訊ねた

「実はケーキを焼いたんやけど、食べてくれへん?」
「侑士が焼いたの?」

侑士と付き合ってもう長いけど、こんなことは初めてで、びっくりして思わず目を丸くした
一瞬の表情を侑士が見逃すはずがなくて、少し悲しそうに私に問いかけてきた

「アカンかった?に食べてほしくて焼いてみたんやけど・・・・。」
「ううん、嬉しい。」

嬉しいに決まってるじゃない
それが私の為に作ってくれたのなら、なおさら嬉しい


「そういえば侑士の手作り初めて食べる!」
「うまいかどうか分からんけど、食べてみてくれるか?」

可愛くデコレーションされたケーキが目の前に出てきて、これを侑士が作ったのかと思うと、可愛いな なんて思ってしまう

「いただきまーす。」

フォークで一口サイズにして、口へ運ぶ

「すっごいおいしいよ!!」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。」
「本当に初めて作ったの?」

そう聞きたくなるくらいおいしい
どんどん口の中へ入っていく
侑士はそれを嬉しそうに眺めていた

「こういうの初めてやったから、めっちゃ手間取ったけど・・・。」



「侑士・・・ケーキの中に何か入ってる・・・・・・?」

食べていたケーキの真ん中に丸いものが入ってるのに気づいた
何だろう?とフォークを置いた

「・・・・カプセル?」

手のひらに収まるくらいの小さなカプセルがでてきた
どうしてケーキの中から・・・・?
首を傾げながら侑士を見ると、開けてみ? と促される
言われるがままカプセルを開けると、中からでてきたのは、キラキラと輝く指輪

「侑士っ、これ・・・・。」
への誕生日プレゼントや・・・・・。誕生日、おめでとう。」
「ありがとう・・・・・。」

まさかこんな形でプレゼントを渡されるとは思ってもみなかった
だから一生懸命ケーキ焼いてくれたのかな?


「それから・・・・・。」

キラキラ輝く指輪を眺めていると、まだ何かあるらしく、侑士が話だした
真っ直ぐ見つめられて少し照れたけど、真剣な顔をしていたので、侑士の瞳を見た
そのまま何も言わない侑士を不思議に思って首を傾げた

「・・・・・侑士?」

そしてしばらくして、抱き寄せられて耳元で囁かれた



「俺と、結婚してくれますか?」






   忍足 侑士







学校帰り、長太郎くんと一緒にケーキ屋に寄った
そこは結構有名なお店で、私が行きたいと前から言っていた所だった

「長太郎くん・・・・覚えてたの?私がここに来たいって言ってたの・・・。」
「はい、最近は部活が忙しくてデートも出来ませんでしたし、今日は奢ります。」

そう言うなり、ウエイトレスに注文した
しばらくして、私の前にはチョコレートケーキが
長太郎くんの前には、アップルパイが運ばれてきた

「いただきま〜す。」

やっぱり有名な店だけあって、すっごくおいしいっ!!
口に入れた瞬間に、チョコの甘さが広がるけどそれでいてしつこくない
おいしくて、ついつい食べることに集中しちゃう


しばらくして視線を感じて、顔を上げると、長太郎くんと目があった
もしかしてずっと見られてたの?
そう感じて食べていた手が止まった

「・・・・長太郎くんは食べないの?」
「はい、さんがおいしそうに食べている姿をみているだけで嬉しいですから。」

恥ずかしい台詞も、長太郎くんはさらりと言ってしまう
真っ直ぐな長太郎くんの想いに恥ずかしくて俯いてしまった

さん、チョコ・・・」

名前を呼ばれてえっ? と顔をあげると、長太郎くんが私の頬を指さしていた

「ほっぺに・・・・。」

そう言ったかと思うと、向かいに座っていた長太郎くんが身を乗り出して、私の頬についていたチョコをぺロッと舐めた
その行動に驚いて、顔を真っ赤にして頬を押さえる

「なっ・・・・こんな所で!!」
「いいじゃないですか、とってあげたんですから。」

今した行動に慌てる私と、妙に落ち着いている長太郎くん
この光景を見ると、私の方が先輩だとは誰も思わないだろうな
それにしてもっ! 何でそんな平然としていられるの〜!?
恥ずかしいよ〜!!


「・・・・・今のが恥ずかしくないなら、ここでキスしてよ。」
「・・・さん?」

私の発言に今度は長太郎くんが驚いていた
さすがにここではできないよね
さっきの仕返しと言わんばかりの発言
それくらいさっきのは恥ずかしかったんだから・・・・
ケーキを食べようとフォークを持とうとしたら、固まったままだった長太郎くんが、また身を乗り出してきた

「長太郎くん・・・?何してっ・・・・?」
さん・・・・好きです。」
「えっ、ちょ・・・・・・」

次の瞬間、唇に彼の温もりを感じた
あなたのその率直な言葉が、私を幸せにしてくれる


恥ずかしかったけど、彼の意外な一面が見れた日でした



鳳 長太郎     






「おいしそうに焼けたじゃない!!」
「本当に?」

調理実習の真っ最中
今日はケーキを作ってる
もうほとんどの班が焼き終わって、実習室のあちこちから黄色い声が聞こえてくる
調理実習は女子だけ
男子は今日は体育でサッカーをやっている
彼氏がいる人とかは焼きたてをあげるみたいで、いつもよりも真剣な人が多い
焼けたケーキが冷めた頃に可愛くデコレーションしていく

「おいしそうな匂い!」

体育が終わったみたいで、千石君が窓から顔を覗かせた

「千石君。」
「ねぇ、俺にもケーキ、くれない?」

調理実習の時はいつものように千石君は私の所へきて、作ったものをおねだりしてくる
どうして?別に私があげなくても千石君にはたくさん女の子からもらえるんでしょ?
でも断る事はできない
私も千石君が好きだから・・・・・

「はい。おいしくないかもしれないけど・・・・。」

そう言ってできたてのケーキを渡す

「サーンキュ!」

言うが早いか、口を開けてケーキを食べた
おいしそうに食べてくれる千石君を見るのが好き

「・・・・どう?」
「すっごくおいしいよ!!ちゃんはお菓子も作るのうまいね!」

チラッと廊下の方をみると、千石君に作りたてを渡したいのか、何人かの女の子がいるのが見えた


「どうして・・・千石君はいつも私の所にくるの?

私の所じゃなくても、千石君には女の子からいっぱいもらえるじゃない・・・。」
どうしても聞きたくて、つい口を滑らせてしまった
これを聞いたら、もう自分の所には食べにきてくれないかもしれないと分かっていても・・・・
聞かずにはいられなかった

「あれ、気づいてなかったの?俺、自分から声かけるのってちゃんだけだよ。」
「えっ?」

千石君が言ってる意味が分からなくて首を傾げると、もっとこっち来て?と言われてドキドキしながら千石君の近くに寄った
まるで今、ここには2人しかいないと錯覚させられる
そしたら急に手が伸びてきて、私の手を引っ張られ
顔を赤くしている私の耳元で、囁いた


「だから、俺はちゃん以外の子からは一切受け取ってないから。
・・・・・この意味、分かってくれるかな?」




   
千石 清純