はいつから宍戸のこと好きだったの?」


そう聞かれたのは放課後の教室

もう冬が近づいているせいか、日も暮れはじめ

教室内に2つの長い影が伸びていた

そんな中、半ば強引に椅子に座らされ、私は

に白状させられていた

「え、いつからって言っても・・・・・・・」

目を泳がせて誤魔化そうとしたけど、更に身を乗り出してくる

誤魔化せそうにないな、と思って1つため息をついた







   
渡り廊下








あれは去年の今頃―――


その日は待ちに待った学園祭で

と校舎内の展示を見た後、体育館全部使ってのお化け屋敷に向かって

学校のお化け屋敷なんて・・・・って油断して入ったら某遊園地並に怖くて

お化けに驚かされて、とっさにの手を掴んで外までダッシュで出てきたんだよね

の手を掴んで逃げてきたはずなのに、肝心のの姿が見当たらない



ー、どこいったの?・・・おいていかれちゃったのかなぁ。」

「おいてかれたんじゃねぇ。お前が間違えたんだよ。」



すると突然背後から誰か別の人の声がした

何?私に喋ってるの?

間違えたって何の話?

「・・・あれ、宍戸じゃん。」

声がした方を振り向くと、同じクラスの宍戸がため息つきながら私を見ていた

宍戸とは結構席も近くて何かとよく喋る機会が多い

でも何で宍戸がここにいるの?

多分今の疑問が伝わったのか、宍戸が説明してくれた

「・・・俺も今お化け屋敷入ってたんだけど、いきなりすげぇ叫び声したかと思ったら勢いよく手引っ張られて・・・この有様だ。」

ここにがいなくて代わりに宍戸がいる

ってことはもしかして、いや・・・もしかしなくても




「誰のせいだと思う?」

「・・・・・・・・私、ですか?」

「正解。」




と間違えて宍戸連れてきちゃったの!?

ど、どうしよう・・・きっと宍戸だって連れの人がいたはずなのに・・・

怒ってるかな

とりあえず謝ろうと顔を上げると、いつもの青いキャップを被り直していた


「おかげで長太郎ともはぐれちまった。」

「・・・お化け屋敷に後輩と一緒に入ったの?」

「し、しょうがねぇだろ、他に誰も回る人いなかったんだから。」

その時、制服のポケットに入っていた携帯が鳴った

最近ハマってる洋画ドラマの着信音

「あ、からメールだ・・・『どこ行ったの?私、これから午後の仕事あるからあとは勝手に見て回ってねー』・・・・って」

勝手にって・・・・1人でこんな広い校舎見て回るなんて寂しすぎる・・・

後でにも謝りに行かないと・・・

急いでへ返事を打ってポケットに携帯をしまいこむ


これからどうしようかな

・・・宍戸誘ってみようかな と思った瞬間に、その考えは私の中で却下された

あの宍戸が女の子連れて一緒にまわるなんてありえない

絶対拒否されるよね・・・・・

一緒に回りたいけど・・・・断られるのはもっと嫌

しょうがないから帰ろうかなぁ と考えていたら、突然宍戸が声をあげた





、ちょっと付き合えよ。」

宍戸の意外な言葉に、私は目を丸くした

何、どこに・・・?

「・・・誰のせいでこんなことになったと思う?」

「・・・・・はい、どこへ行くんでしょうか?」

そんなこと言われたら従うしかないじゃない

そんな私に声をあげて笑っていた

「冗談だって!そんな顔すんなよ。これから何か用事あるのか?」

だったら無理に誘わないけどよ。と付け加えられて、慌てて否定する

「ううん、用事ないよ。しょうがないから付き合ってあげるよ。」

「何だそれ・・・。何か食うか?」

「食べる食べる!」

「・・・ゲンキンな奴だな。」




まさか宍戸から誘ってくれるなんて思ってもみなくて

普段は教室とか会った時に喋るくらいで、こうやって一緒に歩くことはなかったから

いつも以上に宍戸と一緒にいられる事がすごい嬉しい


それから、その日は宍戸と一緒に楽しんだ

思い出の学園祭












 *

「ふーん、その時から宍戸のこと好きだったんだ」

の言葉に、黙って小さく頷いた

あの日半日だったけど一緒にいて

宍戸のこともっと知りたい、ずっと一緒にいたい って思った

前よりもっと好きになってた

今年も運よく宍戸と同じクラスになれて、今でも何気ない会話したりしてる

告白・・・とも考えたけど、この関係が崩れるかもと思うと勇気がでない


「でもどうして分かったの?私、にも言ってなかったのに・・・・・」

「どうしてって・・・見てれば分かるよ。気づいてないのは本人くらいじゃない?」

本人くらいって・・・・みんな私が宍戸のこと好きだって気づいてるの?

私そんなにあからさまに態度に出してたのかな?

今までの行動を必死で思い出そうと頭抱えていたら、突然が小さく呟いた






「宍戸・・・・・・」

「へ?」

顔を上げると、がある一点を見つめていて

気になって私もそっちを振り返った


そこには、いつも見ていた彼の姿

でも今だけは見たくなかった彼の姿がドアの向こうにあった





「し、宍戸!?」

「わ・・・悪ぃ。聞くつもりはなかったんだけどよ、通ったらの声がしたからつい・・・・・・」

「聞いてたの?」

私の言葉に真っ赤な顔して目を逸らしている

宍戸の顔見てたらそんなこと聞かなくても分かった

だけど聞かずにはいられない


う・・・・・そ、でしょ?

まだ伝えたくなかったのに

伝える時はもっと場所を選んで、とかいろんな事を考えていたのに

まさかこんな所で自分の気持ちが伝わるなんて思ってなかった

しかもこんな形で・・・・・・・・


これ以上ここに・・・宍戸と一緒にいられない

この場からすぐにでも立ち去りたくて、鞄も持たずに全速力で後ろの扉から廊下を走っていく

「ちょ、ちょっと待てよ、!!」

後ろで宍戸が何か叫んでたけど、今は何も聞きたくない

すれ違う先生にも

「廊下は静かにしなさい」

と言ってる気がしたけど、そんなのも知らない


階段も2段飛ばしで駆け下りて、夢中で走り回った

場所なんて関係ない

とりあえず1人になれる場所を探したかった

私も運動には自信があった方なのに、やっぱり宍戸には敵わないみたい

渡り廊下を走ってる最中に腕を引っ張られて、その反動で思い切り走っていた足がよろけた





「きゃっ・・・・・・」





倒れる―――

そう思ってとっさに目を瞑ったけど、身体に感じたのは痛みでも衝撃でもなくて

柔らかい感触と人の温もりだった




「し、宍戸?」

「大丈夫か?急に引っ張って悪かった・・・・怪我、ねぇか?」

「・・・・・・うん。」


引っ張られた衝撃で宍戸の胸に倒れこんだまま、起き上がろうと思っても宍戸がそれをさせてくれない

後ろから腕を回して、そのまま抱きしめられていた

・・・・・何で抱きしめられてるの?

下校時刻は過ぎたものの、まだちらほらと生徒が残ってるのに

誰かに見られたらと思うと、また顔が熱くなった

その相手が宍戸っていうこともあるんだろうけど



「あの・・・・離して」

「嫌だ、離さねぇ。」

「・・・・・は?」

今は冗談に付き合ってる場合でもないのに

でも宍戸がこんな冗談言うわけない

おそるおそる顔をあげると、さっきよりも赤い顔した宍戸の姿があった

「こんなこと、ガラじゃねぇのは自分が一番よく分かるけどよ・・・・・どうしてもお前に言いたいことがあるんだ。」

・・・・・・言いたいこと?

こんな体勢で?とも思ったけど、いつになく真っ赤になりながら真剣な眼差しの宍戸に黙って次の言葉を待っていた

「俺もずっと、が好きだったんだよ。」

・・・・・・・・うそ・・・・・・・・

初めて名前、呼んでくれた

宍戸は普段女の子はみんな苗字で読んでる

別に名前で呼んでもいいよ って言っても「ば、ばかやろう!女を名前で、呼べるかよ。」って言ってたのに・・・・・・

急に名前で呼ばれて、妙にくすぐったく感じた


「宍戸・・・・・顔赤いよ?」

「う、うるせぇよ!そ、それで・・・・・・?」

「うん?」

「その・・・・・返事は・・・・・」


返事って・・・・さっきあれだけ宍戸の事話してたのに

と思ってると、それを読み取ったのか

「お前の口から聞きたいんだよ。」

宍戸らしくない台詞が返ってきた

それが少しおかしくて

それでも嬉しさが溢れて

ちょっとイジワルしてみたくなった

「私も大好きだよ、亮。」

私は宍戸に名前で呼ばれてすごく嬉しかったけど

宍戸はどう感じた?

反応を見てみたくて(おかえしとも言うけど)名前で呼んでみた

そしたら期待以上の反応

赤い顔して固まったまま、しばらく動かなかった



「亮ー?」

「・・・・・・・・やべぇかもな。」

やっと動いたかと思ったら、未だに耳まで赤くして口を手で覆っている亮がいて

何がやばいんだろう?と首を傾げた

「何が?」

「俺・・・・・今すっげぇに、その・・・キス、してぇ。」

亮が急にらしくない事言うから私まで真っ赤になった

何!?いつもの亮っぽくないよー!

そりゃあ私だって亮に、キスしてほしいな、とか思うけどさ・・・・

「そ、そんなこと前もって言わないでよね、恥ずかしいじゃない!」

「じゃあ不意打ちだったらいいのかよ?」

「・・・・・それも困る」

「だろ?」

そんな会話をしながら2人顔を見合わせて笑いあった





「でも・・・・・・・・・」

「”でも”・・・何だよ。」

「私も・・・・・亮とキスしたい。」

鼓動が破裂しそうなほどに騒いでいたけど、それでも今の気持ちを伝えると

一瞬目を見開いた亮が、ふっと笑った


私の頬に亮の大きな手が触れる

その手はとても温かかった

私は亮の制服に掴みながら、軽く触れるだけのキスに答えた


このキスにありったけの「好きだよ」を込めて








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めっちゃ久しぶりのUPになりました。
しかも初宍戸さんvv
本当はちゃんと誕生日に仕上げたかったんだけど・・・・
無理でした、ごめんなさい宍戸さん。しかもヘタレだ・・・でも大好きですv
これが誕生日ドリームって・・・・ダメですか?(苦笑)

 100のお題 :  93「渡り廊下」

 2005年11月15日 日暮 茜