「かっこいいよね。」

いつものようにマネージャーの仕事が一段落した少しの時間にコートを眺めると

私の好きな人が瞳に映って、思わず笑顔がこぼれて口にしてしまった

そんな私の独り言は、しっかりと隣のまで聞こえていたらしい

「誰が?」

「私がかっこいいっていうのは1人しかいないの、分かってるくせに。」

に向けていた視線をコートに戻せば

桃ちゃん先輩と練習試合しているリョーマ君の姿

こんな些細な時間が私はとっても好きだったりする

「・・・越前でしょ。でも私は不二先輩の方がかっこいいと思うけどな・・・」

「私はリョーマ君がいいの。」

口を尖らせながら答えて、もう一度愛しい彼の姿を目で追いかけた











     
大切な人











「前から聞こうと思ってたんだけどさ・・・」

「何?」

「越前のどこがいいの?」

「・・・・えっと」

入学してしばらくしてからリョーマ君と付き合いだして

このことは今では学年のみんなだけじゃなく、学校中の人が知ってると思う

なのに、今更そんなこと聞かれるとは思ってなくて、コートに向けていた視線をに向けた

「かっこいいし、頭だっていいし、頼りになるし・・・・・優しいところもあるんだよ。」

「あー分かった分かった。」

自分から聞いておいて「もういい」みたいなお手上げポーズされて、口を尖らせながらも

の問いかけに指を折りながら好きな所をあげてみたけれど、どれもしっくりこなくて

「だけど・・・・・・・・・・どれもありきたり、だよね。」

「まぁ、確かにね。」


リョーマ君のことは誰にも負けないくらい大好きだけど

好きな所は?なんて突然聞かれても、どれもみんなが言いそうなことばかり

それでもいいと言えばいいんだろうけど

・・・・・・・なんかすっきりしない感じ













 *



今日の部活も終わって、部誌を竜崎先生に渡しに行って

部室のドアを開けようとしたら、リョーマ君と何人かの先輩達の声が中から聞こえてきた

その声と内容に思わず足を止める





「おい、越前。」

「何スか?」

のどこが好きなんだ?」

「あー、それ俺も聞いてみたかった!どうして?おチビー」

桃ちゃん先輩と英二先輩と・・・・リョーマ君?

「・・・・何でそんなこと聞くんスか?」

「だってお前、人のことに関心なさそうじゃん。」

「人のことに感心なさそうって・・・・・随分はっきり言うんスね。」

「ははは・・・・・・で?どうなんだよ。」

「・・・・・別に、ないっす。」

「は?なんだそれ?」

「んじゃ・・・お先に。」

「お、おい、ちょっと待てよ越前!」






どう、いうこと?

”別にない”・・・・って何?

リョーマ君は私のこと好きじゃなかったの?

仕方なく・・・付き合ってくれてたの?

確かに告白したのは私からだし、いつもメールとかするのも私からの方が多いけど

・・・・・本当は連絡するのも面倒くさかったの?



照れくさくなりながらも繋いでくれた手から伝わってきた温もりも、抱きしめられた感覚も

今までのも全部、仕方なく・・・・・だったんだ

それなら早く言ってくれればいいのに

リョーマ君に告白して、返事もらって・・・・

私一人で浮かれてて・・・・・・バカみたいじゃん




ここにいたら涙が溢れてきそうで

慌ててその場を去ろうとするけど、部室のドアが開く方が早かった

「あれ、?」

「・・・リョーマ君」

!?もしかして・・・今の会話聞いてた?」

「え、今の会話って何ですか?部誌を渡しに行って今来た所ですよ。」

「そうなんだー。よかった!」

「何の話してたんですか?」

「ううんー、ちゃんがどこ行ったのかなーと思って・・・」

「そうですか・・・。」

本当は全部聴いてたけど、わざわざそんなことを先輩達に言う必要はないし

明らかに何か隠し事してる態度しながら、慌てて部室を去ろうとしてる

それじゃあ何か言ってました って言ってるようなものじゃない・・・・

「じゃあ俺達帰るから。じゃーな、越前、!」

「じゃあねん!」




先輩達が出ていった部室に入ろうとしたら後ろからリョーマ君も部室に入ってきた

・・・・何でリョーマ君まだ部室にいるの?

さっき帰るって言ってたくせに

今はリョーマ君の顔・・・・見たくないよ

完全にリョーマ君に背を向けて、鞄の中に手を突っ込み何か探してるフリをする

本当は探してるモノなんてないけど

今本当にしたいのはそんなことじゃないけど・・・

「リョーマ君・・・・・先帰っていいよ。」

「何で?」

「・・・ちょっと寄る所あるし」

・・・・さっきの話聞いてたんでしょ。」

いきなり確信つかれ、びっくりして勢いよくリョーマ君に顔を向けた

「な、何で?」

「顔見てれば分かる。」

・・・顔見てれば分かる・・・って

そんなに分かりやすい顔してた?

てことは、別れ話される・・・・・?

もう私達、終わっちゃうの?

「で?」

「なに、が?」

「何か言いたいことでもあるんじゃないの?そんな顔してる。」

私が俯いていたら、わざわざしゃがみこんで目線を合わせてきた

いつもなら目が合うだけでドキドキが止まらないけど、今は違った意味で胸の鼓動が早くなっていく

これを聞いたら本当に私達は終わっちゃう

だけど・・・・・聞かずにはいられないよ

「・・・・・好きじゃないなら、何で付き合ったりしたの?」

「は?」

「優しくなんて、しないで。」

気持ちもないのに、抱きしめたりしないで

私の事、好きでもないくせに、気持ちのこもったフリしたキスなんて・・・・・・・・・しないで


「やっぱり聞いてたんだ。」

「・・・・・・」

も分かってないね。」

ふぅ と小さくため息ついて、サッと立ち上がって

目深に帽子を被りなおした

はっきりと表情は見えなかったけど、なんとなく少し照れてるように見えたのは・・・・・気のせい、だよね

「何であんな事言ったのか、それくらい考えてよね。」

”あんな大勢の前で本当の事言えるわけないじゃん” なんて言葉が後から小さく聞こえてきて

思わず耳を疑った

今、何て言ったの?

「それとも、は俺より他の奴の言葉を気にするわけ?」

「そ、そうじゃないけど・・・・」

「俺はが好きだから傍にいるの。・・・は違うの?」

「私だってリョーマ君が好きだもん。」

すぐに返事した私に気をよくしたのか、笑って

手をさし伸ばして立たせてくれた

「じゃあいいじゃん。」

いつものように優しく抱きしめられて、それだけで安心する






好きな所なんてすぐに言えなくても

私はリョーマ君が大好きだから

それが私だけのトクベツだと思える



私の大切な人―――












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リョーマ君、お誕生日おめでとうvvv(かなり過ぎてるから)
遅くなってすいませんm(__)m

でも、誕生日のドリームか?これ・・・・・・
まぁいっか♪
最後時間なくて無理やりですいません!!


 100のお題 :  1「大切な人」

 2006年 2月17日