今日は12月24日

世間ではクリスマス・イヴで聖なる夜を過ごしているんだろうな

でも私の中ではもう1つ

大事なイベントが待っていた










  
Special Holynight










「今日も部活ご苦労様。」


大石先輩の声で今日の部活が終了した

今日はいつもよりも早めに切り上げて、午後はクリスマスパーティーをするための準備に大忙し

だいたいの飾りつけは昨日済ませて、今日は残りの飾りつけと食べ物などの買出し

マネージャーをやっている私も、こういうイベントは大好きなので、積極的に飾りつけなど手伝った



「おーい、。」

あと少し残っていた飾りつけを1年のみんなでしている後ろから、桃ちゃん先輩が声をかけてきた

「はい?」

「越前の姿が見えないんだけどよ、どこ行ったか知らねーか?」

またか・・・と心の中で思ったけど、声にだして言えるはずもない

いなくなったリョーマ君を探すのはいつの間にか私の仕事になっていた

でもそれが少し嬉しかったりする

伝えられない言葉の代わりに、少しでも一緒の時間を過ごしたいから

「いえ・・・・じゃあちょっと探してきますね。」

「頼んだぜ。」

もうっ 折角今から残りの飾りつけやっちゃおうと思ったのに・・・・・

そう思いながら、多分あそこにいるだろうと思って、ある場所まで足を運んだ




そこは部室の裏

こんな近い所にいるのに意外と見つかりにくい

「やっぱりここにいた〜!」

ここにいると確信があったから一番にここに探しに来た

だって昨日もここでサボってたんだもん

私の声に、座って空を眺めていたリョーマ君が一瞬こっちを見て、小さくため息をついた

「・・・・何?」

何で不機嫌なの

まるで『ほっといてくれ』って言ってるような言い草

しかも何でため息つかれなきゃいけないの?

ため息つきたいのはこっちの方だって

「何?じゃないよ、早く飾りつけしないと間に合わないでしょ?」

「・・・面倒くさ。」

「しょうがないでしょ。1、2年の仕事なんだから。そんな事言ってると乾先輩に言っちゃうよ。」

乾先輩に言えば、絶対に野菜汁や乾汁が出てくる

みんなこれを飲みたくないのは知ってるから、こう言えばいくらリョーマ君でもちゃんと動くんだよね

半分脅しみたいな感じでそう言うと、しぶしぶ重い腰をあげた

「しょうがないな・・・・」

「早く行こう。」

まだ嫌そうな顔をするリョーマ君を引っ張って部室まで連れて行った






「あれ・・・?」

嫌がるリョーマ君を連れてきて一緒に飾りつけしようと思ってたのに、もう既に終わっていた

「終わってんじゃん。」

「おチビ、ちゃん遅いぞ〜!!飾りつけ終わっちゃったじゃんか〜。」

綺麗に飾りつけされた部室の中では3年生のレギュラー達がおしゃべりしていた

テーブルにコップやお皿もセットされていて、昨日買ったペットボトルも置いてある

もしかして先輩達に手伝わせちゃったのかな?

「すいません・・・・。」

「今、桃が足りない物買いに行ってるから。」

「1人でですか?」

「うん。本当は越前にも来てもらおうと思ってたらしいんだけど、見つからないって・・・・。」

だからさっき桃ちゃん先輩、リョーマ君を探してたんだ

当の本人は相変わらず眠そうな顔してるけど・・・・・




「買ってきましたよー・・・・って、越前。お前どこに行ってたんだよ。」

それからすぐに桃ちゃん先輩も帰ってきて、リョーマ君の姿を見つけるなり、リョーマ君の方に歩み寄っていった

「・・・・・ちょっと。」

さすがにサボってたなんて面と向かって言えるわけもなく、言葉を濁してたけど、桃ちゃん先輩には何となく分かってるみたいだった

「ちゃんと仕事しろよなー。」

2人がそんな事をしてる間に、私は桃ちゃん先輩が買ってきてくれた軽食やお菓子など並べていた

全部並べ終えると、いつもの部室がより一層華やかになった

いつの間にかレギュラー全員が部室に揃っていて、準備も万端



「じゃあ始めるか。」

手塚部長の声でジュースが注がれたコップを手に持つ


「「「「「メリークリスマス!!と 越前、誕生日おめでとう!!」」」」」


「どもっス。」

リョーマ君を中心に行われる乾杯

少し照れくさそうにしてる姿に思わず笑みをこぼす

照れてるリョーマ君かわいい

「越前。これ、俺らからのプレゼントな。」

みんなで少しずつお金を集めて買ったもの

代表して大石先輩が渡す事になった

「ありがとう、ございます。」


みんなでリョーマ君を祝ってる時に、私は自分の鞄を取り出してこっそりと中を覗いた

綺麗な包装紙に包まれたもの

実はそれ以外にも私個人でもプレゼントを買っていた

やっぱり好きな人にはあげたくて、買ってしまった

みんなであげたのとかぶらないように、同じテニス用品だけど違うものを選んだ

やっぱり使ってくれるやつの方がいいもんね

でも・・・・ここで渡すのは恥ずかしいかも

みんなに何言われるか分からないし・・・・・

でも今渡さなかったら帰る方向も違うし、もう渡す機会はない

・・・・よしっ!!

意を決してリョーマ君に近づく

「あのっ、リョーマ君私も・・・・・」

そう言って鞄からプレゼントの包みを出そうとした寸前、桃ちゃん先輩が大声を上げ、私の言葉をかき消した

「マムシ、それは俺の肉だ!横取りするんじゃねーよ!!」

「何だと?勝手にお前の肉にするな!!」

大きな声に驚いて、出そうとしていた包みを鞄に詰め込んでしまった

・・・・いつもの喧嘩・・・・・こんな時に

「お前ら、こんな時にまで喧嘩するなよ〜。」

大石先輩が止めようと桃ちゃん先輩と海堂先輩の間に割って入る




「で、何?」

桃ちゃん先輩と海堂先輩のやりとりを一部始終を眺めていたリョーマ君は、急にまた私の方を向いてさっきの続きを聞いてきた

「・・・何でも、ない。」

「・・・・そう。」

リョーマ君は私の行動をあまり気にする様子もなく、その場は収まった

やっぱりみんなからプレゼント渡したのに、私個人でもプレゼント渡すのって変に思うよね・・・・・


渡せずに鞄の中にしまったまま、時は過ぎていった









 *






みんなで楽しく騒いだクリスマスパーティーも終わりを告げた

時計を見ると、もう7時を回ろうとしていた

急いで片付けをして、後は部屋中に飾りつけたものを外すだけとなった頃、桃ちゃん先輩が突然言い出した


「越前は飾りつけサボってたんだから、後片付けはきちんとしなきゃいけねーな、いけねーよ。」

「じゃあ後はおチビに任せよ〜!!」

英二先輩なんてもう帰る準備万端で外へ出ようとしてる

そんな英二先輩を見て、リョーマ君が慌てて引き止めようとしてる

「ちょっ・・・どうしてそうなるんスか。」

「サボってた奴が後片付けだけで済むならたいしたことないだろう?」

手塚部長にまで言われて、返す言葉もなくしたようで、いやいやながらも返事をした

「・・・・・分かったッス。」


「そーいや、も途中からいなくなってたよな。」

今度は標的を私に変えてきた

「えっ、それは桃ちゃん先輩が・・・・」

桃ちゃん先輩がリョーマ君知らないか?って聞いてきたから探しにいっただけで、サボってたわけじゃ・・・・・

そんな反論をさせてくれる暇もなく、手塚部長が私達2人に後片付けを任せて、部室を去っていった

ただ、みんな早く帰りたいだけなのね〜!!

もう〜・・・リョーマ君のせいなのに





「リョーマ君のせい。」

「何でも俺のせいにしないでよね。」

本当の事じゃない・・・

今更そんなこと言ってもしょうがないけど・・・・


黙々と飾り付けを外す作業をしていた

そういえば改めて考えると、今部室で2人きりなんだ

ど、どうしよう・・・・・ 今プレゼント渡しても平気かな

でも『どうしてくれるの?』なんて言われたら何て言っていいのか分からない

少し気分を変えるために、黙っているリョーマ君に声をかけた


「飾りつけするのは楽しいけど、それを外すのは寂しいね。」

「そぉ?」

「そう思わない?学園祭とかでも、準備してる時の方がすごい楽しいよ!!」

「ふーん。」

折角話してるのに、相変わらずこっちを見ずに椅子に登って飾り付けを外していた




「リョーマ君、それ取り終わったら椅子、貸してくれない?」

「・・・いいけど。」

片付けは半分づつ ということで、私の方もほとんどのの飾りつけを取り終わり、後はクリスマスリースだけとなった

だけど私の身長ではとうてい届かない距離にある

椅子でも使えば届くかも

リョーマ君から椅子を借りて登ろうとする寸前、リョーマ君が話しかけてきた

「ねぇ・・・」

「何?」

「このリース、何か知ってるの?」

「何、って?」

どっからどう見てもクリスマスリースだよね

他に何か意味があるの?

椅子に登るのも忘れ、じっと真上にあるリースを見上げていたら、リョーマ君が見兼ねたのか椅子に登ってさっさとリースを取り外した


「もう終わったから、帰るよ。」

「うん・・・・ねぇ、このリースの意味って何?」

少し考えてみたけど、やっぱり分からない

降参してリョーマ君に尋ねようとしたけど、それには答えてくれなかった

・・・・送ってく。」

いや、意味を聞いたんだけど・・・・って、今リョーマ君、送ってく って言った?

まさかリョーマ君が送ってくれるなんて・・・・

一瞬びっくりしたけど、嬉しくて素直に返事した

「え?・・・・うん。ありがとう。」

「ちょっと寄り道したい所があるんだけど、一緒に来てくれない?」

「いいよ。」

どこ行くんだろう?

帰り道、そう聞いても答えてくれる事はなかった

仕方なくリョーマ君について行く

そっちって・・・・駅の方だよね

駅に何の用事があるんだろう?

そんな疑問を抱きつつ、リョーマ君の横を歩いていくと、暗く静かな道がだんだんと賑やかになっていき、光が増していった





「すごーい・・・・・・。」


思わず目の前の光景にため息と声が漏れる

通りに並ぶ街路樹に飾られた通りにホワイトとブルーのイルミネーションが輝く

冬の澄んだ空気の中で、街全体が鮮やかなイルミネーションに包まれて

幻想的な冬の夜景色

毎年この辺りはクリスマスシーズンになるとライトアップされる事は聞いていた

そして今年も街中に「光の魔法」をかける

でも実際には見に来た事がなくて感動で言葉も出ないほど、幻想的な光景を見つめていた



・・・・・そういえば、リョーマ君どうしてここに来たんだろう

隣で私と同じようにイルミネーションを見ていたリョーマ君に聞いてみた

「リョーマ君・・・・・・どうしてここに?」

と一緒にこれを見たかった・・・・っていう理由じゃ駄目?」

「えっ・・・」

まさかリョーマ君がそんな事言ってくれるとは思ってなくて

すごく嬉しい

ありがとう と笑顔を返すと、リョーマ君がふっと笑った


「さっきの答え、教えてあげるよ。」

「さっきのって・・・・?」

さっきの と言われて、部室の飾り付けを外していた時の事を思い出した

そういえば、さっき部室に飾ってあったリースに『何か知ってるの?』って言ってたよね

「今教えてくれるの?」

「うん、こういう事・・・・・・」

そう言ってだんだんとリョーマ君の顔が近づいてきて


引き寄せられるまま、お互いの白い息が重なり合った



ここが公衆の面前という事も

鮮やかなイルミネーションさえも今は忘れて

ただ、今は大好きな人の顔しか見えない――――





「リョーマ君!今・・・・・。」

キス・・・・・されたよね?

自分の唇を指でさすると、自分の体温とは違った熱をもっていた

紛れもなくリョーマ君の温もり

どういう事?

リースの意味を教えてくれるんじゃなかったの?

「The kissing under the mistletoe.」

急に発音のいい英語を喋りだすリョーマ君に首を傾げると、今度は日本語で説明してくれた

「ヤドリギの下に立っている乙女にはキスをしてもいい・・・・・って言ったの。」

「えぇっ!!?」

そんな意味があったの?

初めてそんな意味があったと知った私は、リョーマ君の言葉を聞いて一気に顔が赤くなった

けど、そのあとに ふと疑問が浮かび上がってきて、おそるおそるリョーマ君に尋ねてみた

「じゃあここに立っていたのが私じゃなくても、リョーマ君は・・・・・キスしたの?」

「勘違いしないでよね。だからしたんだ。」

私だから? それって・・・・・・・

そんなこと言われたら・・・・期待しちゃうよ

「だから、俺がいない時にヤドリギの下に立つなよ。」

「・・・・うん。」


今なら渡せるかもしれない

未だに渡せずに鞄に忍ばせているプレゼント

急いで鞄の中からプレゼントを取り出し渡した

「リョーマ君・・・誕生日、おめでとう。」

「・・・・サンキュ。」







「うわぁ・・・・・・。」

急に目の前を何かが遮り、上を見上げた


暗闇から降り積もる純白の雪

真っ白な雪と重なり合う光がロマンチックでさらに幻想的な世界を生み出す

「ホワイトクリスマスだぁ・・・・・。」

「珍しいね。雪が降るなんて。」


今日はクリスマスだから

少しくらい奇跡が起きてもいいんじゃない?

引き寄せられ、そのまま倒れこむようにリョーマ君に寄り添った

リョーマ君の整った顔が近づいてきて、目を開けたままでいたら笑われた

「目、瞑りなよ。」

素早く片手で顎を持ち上げられ、さっきと同じようにそっと触れるだけのキスをくれた







『クリスマスにヤドリギの下でキスをした2人は、結婚して幸せになる』

ヤドリギに伝わるもう1つの意味

これはもうしばらくしてから言ってあげようかな

そう企むリョーマ

今のには当然分かってなくて、楽しそうにしているリョーマを見て首を傾げていた











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12月24日!!


本当に久しぶりの青学upになってしまいました(汗)

そしてクリスマスの定番、やどり木の話です(笑)

東京じゃホワイトクリスマスなんて望めないだろうな〜・・・・

本当はもっといろんな人のクリスマスドリ書きたかったけど・・・・・

とりあえずリョーマ誕生日おめでとう!! と、

Merry X’mas!!


 2004年12月24日  茜