ピンポーン――――


2時ジャスト 家のチャイムが鳴った

その音に反応して部屋から飛び出る

「姉さん、僕がでるから。」

階段を下りながら、玄関を開けようとしている姉さんを慌てて止めた


だって、彼女の事は僕が迎えてあげたいじゃない

いつもどんな時だって







   
いつでもキミの傍に








「周助!!」

ドアを開けたと同時に僕を呼ぶ声がした

ずっと聞いていても飽きるどころか、その分愛しさが増してくる

「あら、ちゃん。いらっしゃい!」

「お姉さん、こんにちは!」

姉さんとも仲のよい彼女は、僕がいない時もたまに遊びに来たりしている

は姉さんの作るラズベリーパイが大好きで、よく2人で作ってる

一度、家に帰るとが出迎えてくれて、唖然としている僕に 姉さんと2人して笑っていた時があった

「あがって、先に僕の部屋に行っててくれる?」

「分かった。」

そう言うと、姉さんに軽く会釈をして、階段を上がっていった

その後、今日の事を知っている姉さんが、少し不思議そうに僕に聞いてきた

「今日はちゃんと初詣に行くんでしょ?どうしてこんな早くに待ち合わせしたの?」

「ちょっとね。」

不思議そうな顔をしている姉さんにクスッと笑って、キッチンへと向かった








「お待たせ。」


の好きなアップルティーと姉さんが作ったラズベリーパイをトレーに乗せて部屋へ行った

とたんに、座っていたが僕の方へ近づいてきた

「わぁ、ラズベリーパイだ!!お姉さんの手作り?」

「そうだよ。昨日姉さんにが来るって言ったら張り切って作ってたんだ。」

「そうなんだ、嬉しい。」

そう言って、持ってきたラズベリーパイを口へ運ぶ





「そう言えば、何か用事があったの?」

ラズベリーパイを食べて幸せそうな顔をしていたと思ったら、次は疑問いっぱいの顔で僕を見つめてくる

「どうして?」

「だって待ち合わせは夜だったのに、急に『2時にして』って言ってきたから・・・・。」

「うん、ちょっとと一緒に見たいものがあって・・・。」

「見たいもの?」

首を傾げるに見つめられて、思わず僕の心臓の鼓動が高鳴ったのを感じた

「食べ終わったら、出かけよう?」

訳が分からないといった感じできょとんとしたまま、とりあえず頷いて残りのラズベリーパイを食べ始めた








それからしばらくして、僕たちは外へ出た

には目的地を告げないまま、の手をそっと握る

僕たちは出かける時はいつも手を繋ぐ

その方がお互いの気持ちが分かるような気がするから

付き合いはじめて最初の頃は手を繋ぐのを恥ずかしがっていたも、今ではすっかり慣れたみたい

手から伝わるの温もりをもっと感じたくて、そっと手を絡めた

それに答えるかのように、もぎゅっと握ってくれる




「まだ時間があるからどっか寄り道していこうか。」

「うん・・・・・あっ。」

何か見つけたのか、小さく声をあげてお店の方に駆け寄った

絡められていた手を離されて、暖かかった温もりが一気に消える

けど、それ以上にの笑顔が眩しく僕の瞳に映し出された

「周助、見て!」

一足早くそこへ着いたに手招きされて、小走りで駆け寄る

「かわいい〜。」

「本当だね。」

そこにいたのは、小さな硝子のケースに入れられた仔猫

そういえば最近ペットショップが出来たんだったっけ?

産まれたばかりらしく、まだ片手に収まりそうなくらいに小さい

硝子越しに爪を立てて、ニャーと鳴いているのが、微かに聞こえてくる

その仕草にが笑って硝子に手を触れると、仔猫がの触っている硝子越しに擦り寄ってきた

「すごいかわいい〜!」

仔猫もかわいいけど、僕には仔猫を見て無邪気に笑っている君の方が何倍も可愛く見えてしまう

仔猫よりもの笑顔を見つめていると、その笑顔が少し悲しそうな顔をした

「・・・でもこんな狭い所に入れられて少しかわいそう・・・・・。」

「うん。でも、きっと優しい飼い主が見つかるよ。」

「そうだね。」

僕の言葉に、また向日葵のような笑顔を見せる



は気づいていないかもしれないけど

その笑顔に僕は惚れたんだよ?

僕を見つめるその愛くるしい瞳も、無邪気な笑顔も身体を寄り添ってくる仕草もさっきの仔猫にそっくりで・・・・・

その時のの顔があんまり綺麗だったから、あまりにも愛しかったから

そっと、僕の仔猫を抱き寄せた












僕の目的地は電車に乗って行かなければならないから

まだ何も告げずにいるの手を引っ張って電車に乗り込んだ

そして、しばらく電車に揺られていると海が見えてきた

今の時刻は4時

丁度いい時間かな

腕時計と外の景色を見比べて、微笑んだ


「ここで降りよう。」

「うん・・・・。」

目的地はだいたい見当がついたみたい

だけど、どうしてここへ来たのかはまだ分かってはいないよね






「どうしてここに来たの?」


ここ、というのは海

冬の海岸はやっぱり寒いけど、どうしてもここで一緒に見たいものがあるから

さっきのように手を絡ませて、砂浜を2人で歩いている

こんな寒い日に人なんているわけなく、今この海岸では2人きり

の背後には、綺麗に色づいた空

真っ赤な夕日が僕達を優しく包みこんでくれる

の質問に僕がしばらく黙っていると、まさか朝までここにいる気? なんてとんでもない事を言い出してきた

「まさか。そりゃあ初日の出も一緒にみたいけど、その前に初詣にも行かなきゃいけないでしょ。」

「あ、そっか。」

思い出したように頷いたあと、さっきと同じ質問をしてきた

「じゃあどうして?」

「ねぇ、初日の出を好きな人と一緒に見たい・・・・・って誰でも思うと思うけど、これってちょっと普通じゃない?」

「別に普通でいいんじゃないの?」

うん、別にそれでもいいんだけどさ

「僕はね、それだけじゃ物足りないんだ。」

僕は我侭だから

少しでも一緒の事をしたり、一緒のものを見たい

向き合っていた身体をゆっくりと海へ向けて、遥か彼方にある夕日を眺めた

そしてここへ来た本当の目的をゆっくりと告げた



「だからね、初日の出じゃなくて、今年最後の夕日が沈む瞬間も一緒に見たいって思うのは・・・・僕だけかな?」


今年最後の夕日

初日の出っていう今では聞きなれた事も、もちろんいいと思う

だけどさ、普通 人が考えそうにない事もと一緒ならしたいと思うんだ

「・・・・・そんな事、考えた事なかった。初日の出が一般すぎて、今年最後の夕日なんて・・・・・・。」

今年最後の夕日 と聞いた瞬間は目を丸くしていたけど、その後にすごく嬉しそうな顔をしてくれた

もちろん一緒に見たいという気持ちもあるけど、が喜んでくれる事が僕にとってはすごく嬉しいんだ

「じゃあこれから毎年見にこようよ。」

「うん。周助と一緒に同じものをたくさん見ていきたい。」

そう言って、僕に抱きついてきた

の一つ一つの動作が僕の心をいつも刺激して

手放したくなくなる

そんなをそっと両腕で包み込んだ







しばらく2人で夕日が暮れていくのを眺めていると、が僕のコートの袖を引っ張った

思わずを見ると、頬を赤く染めて小さな声で

「周助・・・・・キス、してもいい?」

と聞いてきた

こんな事をが言うのは初めてで、正直驚いた

から言うなんて珍しいね。でもダメ。」

「どうして?」

僕の返事に今度は泣きそうな顔になっている

「どうしてキスっ・・・・・。」

僕はそれ以上言わないで という風に、の唇に人差し指をあてた

今のの顔からして、『どうしてキスしちゃいけないの?』と言おうとしたんだろう

からのキスもいいけど、でもね・・・・・


「お姫様にキスを届けるのは僕の役目だから。僕からするんだよ。」


僕の言葉を聞いて、更にの頬が赤く染まる

その瞳に捕らえられた僕は、まるで吸い寄せられるかのようににキスをした

いつだってには僕を見ていてほしい

いつまでも、その瞳に僕だけを映して









今年最後の夕日

2人で肩を寄せ合って見ていたけど、だんだん辺りが暗くなっていき、すぐに夕日は完全に僕らの前から姿を消した

「終わっちゃったね・・・・・。」

「そうだね、次に夕日を見るのは、もう来年になるんだね。」

「今年最後の夕日・・・・・・周助と一緒に見れてよかった。」

「僕もだよ。」

月夜の中、白い息が出るほど寒いけど、僕の心はとても温かかった

それはきっとも同じだと思う

と一緒に見に来れてよかった









帰りの電車の中


しばらく会話が途切れて、肩に暖かい重みが乗っかってきた

何かと横を見ると、隣でが眠っていた

その寝顔に微笑んで肩に手を回す



本当には仔猫みたいだ

部活でもみんなに笑顔で接していて、みんなから慕われている

音楽も色んなジャンルを聴く彼女は、最新の曲を桃に聴かせてもらっていたり

英二と一緒になって授業中に居眠りしちゃって、僕の所にノート借りにきたり

そんなをみて、嬉しいと思うと同時に、少し嫉妬してしまうんだ

しっかりしているようでいて、どこか抜けている

思わず守ってあげたくなるような・・・・

そんな仔猫のような彼女が愛しくてたまらない


いつも明るくて前向きなキミに恋をした

今、一番かけがえの無い大切なもの・・・・

それは・・・

今、この一瞬一瞬を、キミと過ごす時間

『今』というこの時間が僕にとって今一番大切なものだから・・・・・


「今はゆっくりとお休み・・・・・仔猫ちゃん。」


そう言って、無邪気な顔して眠っているの髪を撫でて頬にそっとキスをした



キミの傍にいるのが、いつまでも僕でありますように――――











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ラム様へ捧げます、10万hitお祝い夢vv

リクエスト内容は『周助さんで、猫可愛がりされる話』
そして周助さんに『仔猫ちゃん』と言われたいvとの事でした☆
こんな感じでよろしいでしょうか??
私も周助さんに『仔猫ちゃん』って言われてみたいvv
気づけばもう11万超えていますね・・・(汗)
遅くなってしまって申し訳ありません〜!!しかも名前変換多すぎ!!
少しでも周助さんらしさが出ているといいなと思いますv

10万hitおめでとうございます!
これからもラムさんの素敵な夢、楽しみにしていますv


 2004年12月30日  茜