「今年は一緒に年越ししよう。」
あなたの一言が今の私にとって、すごく嬉しかった
A Great Greeting
12月22日
今日で2学期も終わり
終業式を済ませて、いつものようにあるテニス部の部活を見に行っていた
今日も私の彼は絶好調
「グラウンド1周を1分以上かかった人は今日は特別にはこれね。
もうすぐクリスマスだから、スーパー乾汁特製クリスマスヴァージョンを飲んでもらう。」
「「「「 うわぁぁぁ〜っ!!走れ! 何でもいいから全力で走れっ!!! 」」」」
貞治の言葉を聞くと同時に、他の部員達が一斉に全速力で走り出した
・・・・いつもの事だけど「乾汁」にテニス部のみんなは、そうとう参ってるみたい
私は実際に飲んだ事はないけど、そんなにマズイのかな・・・・
でもみんなの反応を見てる限り、決しておいしいものじゃないって事は私だって分かる
でもみんなの健康を考えて作ってるって事も分かってるから(多分)、そんな所が貞治らしい と笑ってしまう
「貞治、何か元気ないね。どうかしたの?」
部活が終わって一緒に帰ってる時、いつもと様子が違う貞治に声をかけた
「いや・・・・何でもない。」
嘘・・・貞治が口ごもるのは、何か隠している証拠
まだ長く付き合っているわけではないけど、それくらいの事はすぐ見抜けるようになった
言いたくない事なのかな
それからしばらく沈黙が続いた
貞治が何も言わないから私も何も聞かない
私には長く感じたこの沈黙を破ったのは、貞治だった
「、その・・・、クリスマスなんだが・・・・・。」
「うん?」
今年のクリスマス
一緒に過ごそう と夏に約束してくれたの、覚えててくれたんだ
12月に入ってからというもの、授業中とかに先生の目を盗んでは机の上に雑誌を広げてクリスマス特集やら、デートスポット特集に目を向けていた
貞治と過ごす初めてのクリスマス
思い出に残るイベントにしたい
私のそんな淡い想いは、貞治のこの一言によって完璧に崩された
「24、25日と部活の強化合宿が入って・・・・・・・ダメになった。」
「えっ・・・・。」
「本当にすまない。本当は12月の頭には決まっていた事なんだが、楽しそうに話すの姿を見ると、言うに言えなくてな・・・。」
ここ最近、貞治と帰っている時、私はいつものように「クリスマスどうする?」 みたいな話をしていた
確かに今思えば、クリスマスの話をする時は元気がなかったような気がする
それはこれを言う為だったの?
「そっか・・・・。楽しみにしてたけど、部活ならしょうがないよね。」
涙が出そうなのを必死で堪えて、無理やり笑顔を作った
貞治も私の言葉が本心だと思ったらしく、ホッとしたような顔つきで
「ごめんな。合宿が終わればもう始業式まで部活はないから会おうな。」
「うん、そうだね・・・・。」
貞治は分かってない
私がどれだけクリスマス一緒に過ごすのを楽しみにしていたのかを・・・・
部活なんだからしょうがない・・・それは分かってるけど・・・・
頭では分かってるつもりでも、心がそれに追いついていかない
そんな私の気持ちを貞治は知ってか知らずか、24日に青学テニス部は強化合宿に行ってしまった
12月25日 クリスマス
昼間でも街を歩いていると、クリスマスツリーが飾っているお店や、店先でサンタの格好をした人がいたりで、嫌でも今日はクリスマスなんだと思い知らされる
今日は貞治と過ごせると思ってウキウキしていた時とは違う
今はこのクリスマスカラーに彩られた街でさえ歩きたくないと思ってしまう
家で1人でいるのも・・・と思って外に出たのが間違いだったのかな
街中に響きわたるクリスマスソングを背中越しに聞きながら、1人帰路にたった
夜――――
部屋で歌番組を観ていた時のこと
もちろん歌なんて頭には入ってこない
頭の中を支配しているのはいつだって―――
その時、突然携帯が音を鳴らした
この着信音を奏でる人物は1人しかいない
「・・・もしもし。」
「か?・・・メリークリスマス。」
「貞治。メリークリスマス・・・」
2、3日会えないだけで、もう何日も会っていないと錯覚してしまうから
貞治の声を聞くだけでも心が落ち着く
「どうしたの?」
「今、合宿が終わって帰ってきたんだ・・・・。今日は本当に悪かったな。」
「もう・・・大丈夫だって。」
もう落ち込んでなんかない
別にクリスマスを一緒に過ごせなくても、貞治と一緒にいられる事が一番大事なんだよね
私の頭の中はクリスマスを過ごしたいという想いでいっぱいだったけど
『イベント』という言葉に執着しすぎて、一番大事な事を忘れる所だった
「その代わりと言っては何だが・・・・大晦日は予定あるか?」
「ううん、特には・・・。どうして?」
「・・・一緒に年越ししないか?」
「うん!!」
一緒に過ごせる事が嬉しくて、当たり前のように返事をして電話を切った後、ふと気づいた事
『じゃあ31日夜の11時に、この前遊びに行った観覧車がある所の前で―――』
観覧車がある所・・・? 神社じゃなくて?
貞治の言葉に疑問を感じながらも、31日が楽しみで待ちきれなかった
クリスマスを過ぎた後の年末は慌しく過ぎていき、あっという間に大晦日になった
夜家を出るのは初めてで、親には「友達と初詣に行ってくる」と言った
「誰と行くの?」 「何時頃帰ってくるの?」 「携帯持った?」
などと、心配していろいろ聞いてくるお母さんに、これ以上突っ込まれる前に家を飛び出てきた
ごめんね、お母さん 嘘ついちゃった
一緒に行くのは友達じゃなくて
貞治・・・ 彼氏となんだ
「貞治!!ごめん、待った?」
「いや、時間通りだ。」
「よかった。でもどうして待ち合わせをここにしたの?やっぱり年越しって言ったら初詣でしょ?」
「初詣は後で行くよ。とりあえず年が明けるまでは、ここにいないか?」
「・・? いいよ。」
何でだろう・・・・と思ったけど、貞治には考えがあるらしく、黙っていう事を聞くことにした
いくら年を越すからっていっても、やっぱり外は寒い
手をこすり合わせて息を吐く私をみて、貞治が近くにあった自販機からホットティーを買ってきてくれた
「ありがとう。」
「、後1分で年が明けるぞ。」
貞治が自分の腕時計を見て、私にそう告げた
「早いねー。」
と貞治に、にこっと笑って、私は自分の時計を見た
時間は11時58分
「ねぇ、貞治。まだ2分あるよ。」
「いや、そんなはずはない。俺の時計ではもう59分23秒だ。」
「貞治の時計が少し狂ってるんじゃないの?私のはまだ58分18秒だもん。」
ホラ と私の時計を見せると、貞治も自分の時計を私に見せてきた
「の時計の方が違うんじゃないのか?俺はちゃんと時報を聞いて合わせてきたんだ。」
「私だってテレビのニュースを見て細かく設定してきたんだから。」
私達はカウントダウンも忘れて、ここの雰囲気にはとうてい似合わない会話を繰り返していた
「俺の時計が合っている確率100%。」
「貞治の意地っ張り!」
そんな言い合いをしていると、街灯しかついていなくて、貞治の顔さえハッキリと見えていなかった空間に明るい光が差し込んできた
私は思わず光が射す方向を見た
真っ暗だった観覧車に一瞬で色とりどりの明かりが灯って、中央には「HAPPY NEW YEAR」の文字
突然の出来事に、目を見開いて観覧車をじっと見ていた私の肩を寄せてきた
「・・・言い合いしている間に、年明けちゃったね。」
「あぁ・・・・」
お互い顔を見合わせて、笑った
こんな些細な事が、すごく楽しくてたまらない
「貞治、明けましておめでとう。今年もよろしくね!」
「こちらこそ。・・・・、クリスマスは、悪かったな。」
「もういいよ。 でもっ!来年のクリスマスは絶対一緒にすごそうね。」
「あぁ。来年だけじゃなくて・・・・。」
「・・・貞治?」
首を傾げる私の背中に手を回して、そっと抱きしめて
「これからも、俺とずっと一緒に過ごしてくれるか?」
その言葉が、私にはプロポーズのように聞こえたのは、きっと気のせいなんかじゃないよね?
「・・・うん!よろしくね!!」
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Kさまに捧げる、乾さんのカウントダウンドリームでした☆
執筆期間は1日。さすがに短いと思いますが、今の私には精一杯でした。
カウントダウンドリーム、Kさまもがんばってくださいませv
Kさまの跡部さん、楽しみにしていますvv(←軽く催促)
まだカウントダウンには早いし駄文ですが、受け取ってくれれば幸いです。
2004年12月6日 茜