いつもよりも数段賑やかな学校

何度か足を運んだことのあるこの学校だけど

いつもは中まで入ることは許されない

僕とは別々の学校だから



だけど

今日は堂々と校舎の中まで入ってこれる



今日は1年に1度の学園祭







   The price of a thought







  「――周助、何で土曜日に来れないの?」

  「土曜日はテニスの練習試合が入っちゃったんだ。だから日曜に学園祭行くよ。」

  「そ、そうなんだ・・・・・・」

  「土曜日じゃなきゃダメだった?」

  「そんなこと、ないけど・・・・・」

  「じゃあいいじゃない。」

  「・・・・・・うん、だったらその日はずっと校舎内で仕事してるから校舎内にいてくれる?

   その方が見つけやすいだろうし」

  「分かった。・・・・その代わり、今日はずっと傍にいてくれるんだよね?」

  「え、周助っ・・・・・・・・・」







こんな話をしていた先週の休日

週末にあるの学校の学園祭は、土曜日に来てほしいと言われていたんだけど

急にテニス部の練習試合が入ってしまって行けなくなってしまった


そして

昨日の練習試合は、と付き合いだして初めて1人で挑む試合だった

いつもどんな試合でもは必ず応援に来てくれる

だけど昨日は何かが足りなかった

それが何かは分かっていたけど

この日だけはどんなに望んでもが来るわけではなかったので、そのもどかしさをテニスにぶつけて


 

―――早くに会いたい―――

この想いだけが膨らんでいった

 

不思議だね

望めばすぐに会えるはずなのに

会えないときほど、余計に会いたくなるなんて

 

 

 

 

 

初めて入るの学校

校舎の中にいて、と言われて向かう先はある教室

 

確か3年2組だよね

ここが・・・・の教室

3年生の教室は学園祭には使われていなかったみたいで、静まり返っていた

外や下の階から聞こえてくるいろんな声が耳に入ってくる中、僕は誰もいない教室へ足を踏み入れた


・・・ここで授業受けたりしてるんだ

いつも見れない愛しい恋人の姿を思い浮かべて、僕は一人笑みを浮かべていた



















朝から校舎を適当に回ってるけど、未だに愛しいとは会えないまま

どんどん時間だけが過ぎていく

こんな広い校舎だし、学園祭を物凄く楽しみにしていただから

今も一生懸命走り回っているんだろうな

そんな事を想いながら写真部の展示を眺めていたら、後ろで喋っている声が聞こえてきた

大声で喋っているので、聞く気がなくても耳に入ってきてしまう





「なぁ、外にすっげー可愛い女の子がいたの、お前見た!?」

「何だよそれ・・・・」

「いや、マジ可愛いんだって!ミニの・・・何ていうんだっけ・・・・・

 そうだ!バドガールの格好してて・・・やべぇ、俺タイプかも」

「マジかよ・・・そんなに言うなら行ってみるか。」

見たところ、他校の生徒って感じだったけど・・・・・

僕は特に気にすることもなく、そのまま展示を眺めていた

  

  

  

それからしばらくしても何の反応もない携帯を見て、小さくため息を漏らした

はどこにいるんだろう

また電話をかけてみるけど、聞こえてくるのは「只今電話にでられません」という機械音だけで

僕の聴きたい声は未だに聞けない


「もしお暇でしたらここ寄ってみてくださーい。」


何の役にもたたない携帯をポケットにしまって、廊下を歩いている時

すれ違い様、そう言われてチケットを渡された

手渡されたチケットに目を落とすと、カフェでハロウィンの企画をやっていて

どうやらこのチケットを持っていくと、甘いお菓子をくれるらしい

甘い、と聞いて、すぐに甘いものが大好きなの顔が思い浮かんでしまう

折角もらったチケットだし、仕事で疲れてるに少しでも何かしてあげたくて

校舎を抜け出し、外のカフェに向かって歩いていた











外も案外広いんだ

この風景綺麗だな・・・・・カメラ持ってくればよかったかな

なんて考えながら歩いていてたとき

僕の視界に恋人の姿が映し出された


こんな人ごみの中でも

だけはすぐに見つける自信がある

誰よりも愛しいから


だけど、今日のはいつもとまったく違う格好をしていた

初めて見るに僕は思わず目を疑ってしまう


「え、・・・・・?」


僕の声で反応したは僕の姿を見て、目を見開いていた

「周助!?どうしてここに・・・・・・・・」

そう言ったまま、しばらく固まっていた

そういう僕も今のの姿を見て硬直した


さっき男子が話していた「バドガールの格好していた女の子」って・・・

まさかのことだったの?


僕達の間に少しだけ、冷たい風が流れてきた

何も知らない周りの人達は、ただ僕達の行動を見ていた

 

「僕に”校舎内を適当に回ってて”って言ってたのは・・・・こういう事だったの?」

「私も本当はこんなことしたくなかったんだけど・・・・・・。

 今日の午前中だけでいいから!って念を押されて」

「だからしきりに僕に「土曜日に来て」って言ってたんだね。」

「・・・・ご、ごめんなさい。だって、周助怒るでしょう?」


まったく困ったお姫様だな、

そんな短いスカート穿いて

ほら、今もの事を見てる奴がいるの・・・気づいてる?




僕以外の誰にもの素肌なんて見せたくないのに

僕以外の誰にもを触れさせたくないのに

そんな僕の想い、気づいているの?

急いで自分の上着を脱いで、そのままの肩に羽織る

いくら学園祭だからって、今はもう10月なんだから

そんな格好してたら風邪引いちゃうのに


怒られると思って俯いたままのの細い顎を軽く持ち上げて、素早くキスを落とす

怒ってないわけじゃないけど

にそんな悲しい顔はさせたくないから


「しゅ、っ・・・・・・・」


周りにいる人達に見せ付けるかのように深く深く

周りからはいろんな声が聞こえるけど、今聴きたいのは誰の声でもなく

の声だけ



「・・・・はぁ。周助!何でこんな所で・・・・・・」

さっきまで悲しそうにしていた顔は、いつの間にか赤く染まっていて

小さく唇を尖らせながら困った顔をしていた

、僕に黙ってそんな服着て・・・・・僕が怒ってないとでも思ってる?」

「・・・・・・・・ごめんなさい。」

確かに、黙ってこんな格好での綺麗な素肌を他の人に見せた事は怒ってるけど

にはこんな悲しそうな顔はしてほしくないから


全てから守るように上着の上からをキツク抱きしめて

その場を離れた

 

 

 

上着を脱いで薄着になり、更に冷たい風が僕との間を通り抜けるけど

そんな風さえも遮るほどにを抱き寄せて歩き出す

「周助・・・そんなにくっついたら歩きづらいよ。」

少し困った顔して軽く僕の身体を押してくる手を、包むように掴んだ

「そう?だって・・・・・・」

「だって?」

首を傾げながら僕の言葉を待ってる

そんな小さな仕草だって愛しいと思ってしまう

「この方がを感じれるしね。」

そう言いながら、更に包むように抱きしめる

「・・・・周助、本当にごめんね。」









「Trick or Treat」

突然そう告げれば、俯いていたが慌てて顔を上げる

「・・・え、急に言われてもお菓子持ってないし・・・・」

「お菓子ならここにあるよ」

しきりにバッグの中を探してるの手にポンと乗せてあげた

「・・・蜂蜜キャンディ?」

「うん。蜂蜜、好きでしょ?」

甘いものが大好きなの為に

僕は常に飴などを持ち歩くようになったから

「うん!ありがとう、周助。」

キャンディをもらって嬉しそうに頬を染めてるに小さく笑みを漏らす



だけどね

もっと甘いものあるんだけど・・・・

なんだか、分かる?



「今度は僕がもらうとするよ。を、ね。」


僕には極上のお菓子があるから

僕だけしか味わうことができないから


「わ、私!?」

僕の腕の中で驚いてるの頬にそっと口を寄せて

耳元でこう、囁いた

「今日は僕がどれだけ心配したか、教えてあげる必要があるみたいだからね。」

「えっ・・・・・・」


そして、僕の想いと共に

蜂蜜よりも甘い唇にキスを届けた



いつだって僕はの隣にいるから

だから

の隣はいつも僕にいさせてくれるかな




、いつだって僕は

  君が大好きだよ――――







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本当は学園祭の日に仕上げたかったんだけど・・・遅くなってごめんなさい!!
しかも短くていいって言ってくれたのに、何気に長くなったし( ̄□ ̄;)
これはラムちゃんに捧げるので、煮るなり焼くなり破るなり(?)
好きにしてくださいvv

  2005年10月21日 茜