私がここに通うようになってからもう半年
あの日、初めてアイツをみかけた
炎天下の中、アイツはそんな事も忘れさせるくらい
輝いて見えた
賭けの代償
「もうっ!このくらいでヘバってるの?」
テニスコートの中で座り込んでいた相手をラケットで指す
「そんな事・・・言ったって。お前十分強いよ。」
「そんな事言ってるから、その青学・・・だっけ?そんな所に負けちゃうんだよ。」
「、お前青学を知らないのかよ?」
「知るわけないじゃん。」
「知るわけないって・・・お前それでも本当にテニスやってるのかよ。」
「うるさいなっ!そんな事言うならもう1セットやるよ!!」
ゲームカウント6−1
私はよくこのストリートテニス場で遊んでいる
でもここじゃもう私より強い奴はいないから、退屈だよなぁ
誰か強い人来ないかなぁ
ここで見るのは、いつも決まったメンバー
今私と戦っていたのは、その中でも強い方に入る玉林中の泉
本当は、コートの外でへばってる布川とダブルスの方が強いらしいんだけど、今はシングルス
ダブルスでもいいんだけど、誰も私と組んでくれないんだよね
下手に誰かと組むと呼吸が合わなくて、かえって力が半減しちゃうし
誰かもっと強い奴来ないかなぁ・・・・・・
「今日も暴れるぞ〜!!」
ストリートテニス場まで行く途中で1人で気合を入れて、ラケットが入ったバッグを肩に背負った
今日は誰と対戦しょうかな
なんて考えは、ストテニ(ストリートテニス場)に着いたと同時に壊されてしまった
「誰・・・・あれ?」
普通より少し長い階段を駆け上がり、ポーンと音がするコートを覗き込む
誰だろう
ここでは初めて見る顔だ
布川を完璧に押さえ込んでる
すごい・・・・・
私がその人をずっと見ていると、泉が私を見つけたみたいで、こっちにきた
「よぉ、。」
「・・・誰?」
「は?」
一瞬、私の質問の意味が分からなかったらしく、間の抜けた声がした
「だからっ、アイツ・・・・・。布川と戦ってる人、誰?」
「あぁ、アイツだよ。桃城って」
「・・・・・アイツが・・・・・」
「桃城」と聞いて、この前泉が言ってた事を思い出した
―――「あ、そういえば最近桃城の奴見ないな。」
泉が発した言葉は私の耳にも届いた
「誰?桃城って・・・・。」
「そういや、は知らないんだったっけ。青学の奴なんだけど
この前、ここに来てさ。ダブルスはいまいちだったけどな。
アイツとシングルスでやったら、多分でも勝てねぇんじゃねぇ?」
・・・・・何?
私がここでは一番だと思ってたのに
そんな奴が私の知らない間に来てたなんて・・・・・・
考えただけでゾクゾクする
会ってみたい
・・・・戦ってみたい ―――
「ゲームセット・ウォンバイ桃城! ゲームカウント6−0」
ゲームはあっという間に終わった
強い・・・・・
「あちー。・・・あれ?ここじゃ見かけねぇ顔だなぁ。」
桃城君が私に気づいたみたいで、汗を拭いながらこっちへ近づいてくる
「あなたが桃城君?」
「・・・・そーだけど。お前は?」
「私は。ねぇ、シングルスで勝負しようよ!!」
「はぁ?いきなりかよ。」
「いいじゃん別に。それに退屈しのぎにはなると思うよ?
なんせ、ここで一番強いのは私だから。」
ここで一番強い と聞いて、桃城君の目つきが変わったのが分かった
「へぇ・・・・。じゃ、いっちょお手合わせ願おうか。」
「そうこなくっちゃ。」
やっぱり
桃城君も強い奴と戦いたいんだ
どことなく私と似てる・・・気がした
「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ・サービスプレイ!!」
「じゃ、まずは小手調べとでもいきますかっ。」
桃城君の実力を測る為に最初は軽くやるつもりだったのに・・・・
「甘ぇーな、甘ぇーよ!!」
そう聞こえた時には、こっちのコートにボールが入っていた
早いっ・・・・
リターンエースとられたっ!!
「早ぇっ!!さすが桃城だぜ。」
そんな声がコートの外からがやがやと聞こえてくる
ふぅん・・・・
これは本気でやらないとヤバイかも
「おい、お前っ!!」
「何?」
「本気でやれよなー。」
桃城君も気づいてたみたい
だったらこっちも本気でやらせてもらうからっ!!
「ゲームセット・ウォンバイ桃城7−5!!」
はぁはぁはぁっ・・・・・
こんなに息がきれたのは久しぶり
ま、負けた〜っ!!
桃城君はそんなに疲れてなさそう
く・・・・・悔しいっ!!
「お前、強ぇなぁ。」
軽く肩を弾ませながら桃城が私に近づいてくる
「桃城君もね。私、ここで負けたのは初めて。」
二ッと笑って握手を交わす
何だろう・・・・・
悔しいっていう気持ちももちろんある
あるんだけど・・・また戦いたい
その気持ちの方が強かった
「桃城君。」
「何だ?」
「また・・・・・ここに来る?」
「何だ?お前、また俺に会いたいのか?」
「バッ、馬鹿じゃない!そうじゃなくって・・・・・」
いきなり変な事言うもんだから、ガラにもなく照れちゃうじゃん
真っ赤になって抵抗する私に苦笑しながら
「嘘だよ。また一緒に打とうぜ。。」
「へっ?」
「じゃーな。」
歩きながら、ひらひらと手を振って一人で帰っていった
――――――
名前をいきなり呼ばれた
普通名前でいきなり名前で呼ぶ?
・・・・・なんだろう
鼓動が早くなってる
ちょっとがんばりすぎちゃったかな?
また対戦したいな
また・・・・会えるかな
私は桃城君の背中を、見えなくなるまでずっと追っていた――
あれから毎日のようにストテニへ来てるけど、桃城君に会ったのは1回だけ
桃城君とはシングルスでやりたかったのに、何とダブルスを組まされたのだ
人が足りないとかで私が・・・・・
ダブルスやったことないのに!!
なんて反論する暇もなく、勝手に組まされてしまった
しかも何で桃城君と組まなきゃいけないの〜っ
・・・・まぁ、引き受けちゃったものはしょうがない
ダブルスなんて未経験だからたぶん私が足を引っ張っちゃうと思う
なるべく足手まといにならないようにがんばろうっと
・・・・と思ったんだけど、実際はすごくやりやすかった
桃城君が私の動きを読んでくれてるみたいで、私自信思うように動けた
泉から桃城君はダブルスは苦手だって聞いたんだけど・・・・・
私・・・ダブルスもいけるかな と思って、その後泉とも組んでみたんだけど、なんかシックリこなくて・・・・・
桃城君とのダブルスの相性がよかったのかな
桃城君もすごくやりやすかった って言ってくれたし
それ以来、桃城君はここに来ることなく1ヶ月が過ぎようとしている
最近知った青学って学校
青学は大会の常連校らしいから、部活の方が忙しいんだろうな
詳しくは知らないけど、桃城君ははそこのレギュラー ・・・・って
どうしてあれから桃城君の事ばかり考えてるの!?
と自分自身に突っ込みを入れてしまう
あぁ、ここには私より強い人は桃城君しかいないから、もう1回再戦したいんだ
・・・・そうだった
「。」
「やっほー。」
ストテニに着くと、すでに泉と布川が来ていた
まだ時間が早かったせいか、今は私達3人しかいない
「ちょっとお前のラケット見せてくれよ。」
「いーよ。」
布川がストレッチをやめて、私の差し出すラケットを取り、自分のと比べている
学校は違うけど、いつものようにここで顔を合わせているから、今ではすっかり仲良しになっている
「私のを見るのはいいけどさ、女のと比べてもしょうがないんじゃない?」
「ま、参考のためにな。」
「何それ〜。」
「あ・・・・。」
2人で冗談を言いながら笑ってたら、近くでストレッチの続きをしていた泉が声を上げた
「どうしたの?」
私と布川が同時に泉をみる
そのとき、ストテニへあがってくる階段の方から声が聞こえてきた
誰か来たみたい
と振り返ったら・・・・・
「桃城君!」
「あれ・・・・。」
・・・・と、誰?
ってついつい口に出しそうになっちゃった
桃城君の隣にいる女の子
誰・・・?
「杏ちゃん。」
「泉君、布川君。久しぶり〜。」
「杏ちゃん」と呼ばれた女の子が走ってこっちへ来た
後ろから桃城君もゆっくり歩いてくる
「そういえば、今日はと打ちにきたのかよ?」
桃城君に、泉が尋ねた
「・・・あぁ、まあな。」
どうしたんだろう
何か・・・桃城君怒ってる?
「・・・じゃあ打とうよ。」
そういう私も素直に言えない
気になる事があるから
その子誰なの?
泉や、布川とも知り合い見たいだけど・・・
桃城君の彼女・・・なのかな?
どうしてそんな事気にするのか・・・・それは私にも分からない
分からないけど気になるの・・・・・
「フィッチ?」
「スムース」
桃城君がくるくるとラケットを回す
何か今日やりづらいな・・・・
お互いギクシャクしちゃってる気がする
何でだろう
「なぁ・・・・」
「何?」
ふいに桃城君が声をかけてきた
でもいつものように笑顔がない
声のトーンも心なしかいつもより低い
何かいつもの桃城君じゃないみたい
「賭け・・・しないか?」
「・・・・・何を賭けるの?」
「負けた方が勝った方の言う事を1つ聞く・・・・っていうのは?」
「・・・いいよ。」
勝つ自身は100%・・・・ではない
だけど、何か賭けるともっとがんばれるからね!!
勝ったら何言う事聞いてもらおうかな
杏ちゃん・・・・って子の事、聞いちゃダメかな
今はどうして急に桃城君がこんな事を言い出すのかなんて、考えもしなかった
「1セットマッチ。サービスプレイ!!」
今日は最初から全開でいかせてもらうから
「15−0」
いきなりサービスエース
よしっ、いける!!
・・・・何か今日の桃城君おかしい
プレイ中も全然笑わないし・・・・
必要以上に話しかけてくれない
ここに来るまでは杏ちゃん・・・っていう子と普通に喋ってた・・・よね?
何か・・・・怒ってる
でも何に対して怒ってるのか分からない
何か学校であったのか・・・・
それとも私と一緒にいる事が嫌で不機嫌になっているのか
・・・・でも今はゲームに集中しなくちゃっ!!
絶対に勝つんだから
「ゲームセット!ウォンバイ桃城6−0!!」
実際かなり勝つ気でいたんだけど
あたしが勝ったら・・・・なんて事も少なからず考えてた
でも・・・・
何?
前より強い・・・
腕を上げた・・・・ううん。力とかスピードは前やった時とそんなに変わってないもん
・・・・この前のは手を抜かれてたの!?
そう思ったら、何か無性に腹が立ってきた
ツカツカと桃城君に近づく
「桃城君!!」
「・・・何だよ?」
少しだけ不機嫌そうに私をみる
「どういう事?この前シングルスやった時は手を抜いてたの?
確かに初めてやった時、最初にサーブ打った時は、私もどんなものか試したけど、真剣に勝負したわ。
手を抜かれる事がどれだけ相手にとって、嫌な気分になるか分かる!?」
「・・・・悪ィ。確かにこの前は本気でやっていなかった。
でも今日はどうしても勝ちたかったんだ。だから全力でやらせてもらった。」
「どうして今日は勝ちたかったの?・・・・賭けの事?」
「・・・あぁ。」
「そうだったね。
で?賭けは賭けだからね。何をすればいいの?」
乱れた息を整えながら桃城君に尋ねると、私の方に近づいてきた
何をするか分からなくて、私は逃げるわけでもなくただ黙って立っている
桃城君が私の前に立って、私を見る
身長に差があるから少し見下ろされてる感じ
何? と思って目線だけ上げた次の瞬間
私の顎を、大きな手で少し上に持ち上げて
・・・・唇が触れた。
桃城君以外のみんなが驚いてる
泉も布川も・・・・杏ちゃんも
そして私も
軽く触れた唇はすぐ離された
「・・・・・・・」
きっと、その時の私はすごく間抜けな顔をしてたと思う
「・・・・・何?」
えっ・・・・ちょっ・・・・・どういうこと??
「、好きだ。」
えっ・・・・私の事?
みるみる顔が赤くなってくるのが、自分でも分かる
どうして急にこんなこと・・・・まさか
「賭けって・・・・・・」
「絶対に俺が勝って、この事をに伝えたかったんだ。」
桃城君・・・少し照れてる
それを隠そうとそっぽを向いて話を続ける
「今日お前がアイツらと楽しそうに話してるの見て・・・・俺・・・・・。」
「桃城君もバカだね。」
「悪ィ・・・・・。」
私も桃城君に言いたい事がある
今の素直な気持ち
「・・・私も好きだよ。」
「へっ??」
そう言って桃城君に抱きつき、頬に軽くキスをした
まさか私からキスするなんて思ってなかったんだろうな
桃城君の目が点になってる
だけど、やられっぱなしって性に合わないんだよね
桃城君の体温を肌で感じながら、私もどうしても聞きたかった事を聞く
「・・・・・私も聞いていい?」
「何だ?」
「杏ちゃんと・・・・どういう関係?」
「あぁ、橘妹か。」
「橘妹・・?」
「敵校の妹だ。たまにここで会うくらいだから別にの思ってるようなことはないぜ?」
口の端を持ち上げて、見透かしたように笑う桃城君
もうっ
桃城君にはバレバレだね
私も・・・・杏ちゃんに嫉妬してた事に
「桃城君・・・好きだよ。」
「俺もが好きだぜ。」
桃城君の腕の中で目を閉じてると、だんだん周りの声が耳に入ってきた
そしてここが公衆の面前である事に・・・・・やっと気づいた
「キャーっ!!!」
「な、何だぁ!??」
叫びながら勢いよく桃城君から離れた
私の声に桃城君も大声を上げた
周りでは泉や布川、杏ちゃんだけじゃなく、後から来た人達も何人かいて、みんなこっちを見てる
・・・・・って事は・・・・今までの全部見られてたんだよね・・・・・・?
ここがストテニだって事すっかり忘れてたぁ〜!!
恥ずかしさのあまり、急激に顔が赤くなるのが自分でも分かる
「桃城君のバカ〜!!何もこんな・・・・こんな所でっ!!」
「お前だって・・・その、何だ・・・・」
「何よ!!」
「キス・・・・・してきたじゃねぇかよ・・・。」
照れながら目線を逸らし、そう言う桃城君
キス という言葉だけで、今の私は動揺しちゃうくらい恥ずかしさでいっぱいだった
「こんな所で・・・そんなこと言わないでよね〜!!」
もうストテニにこれないよ〜!!
逃げ出したい・・・・・
「私・・・帰る!」
「おい、待てよ!」
「何よ?」
「俺も行く。」
「え?」
「ハンバーガーでも奢るぜ? 初デートがファーストフードっていうのもいいんじゃねぇ?」
「・・・・バカ」
私が俯きながらもコクンと頷くと、桃城君は二ッと笑って私の手をとった
そして2人でストテニを後にした
「もうストテニに行けないよ・・・。」
「どうしてだ?」
「どうしてって。桃城君があんな所でっ・・・」
キスなんてするから―――
セリフが頭の中で浮かんでいても、伝えるのが恥ずかしくて思わず言葉を濁す
「あんだけ派手にやっときゃ、これからに近づく奴いなくなるだろ?」
「・・・・えっ」
「もう俺から離れるんじゃねぇよ。」
少し照れながらも、真剣に言う桃城君がすごく嬉しくて
愛しくて
また抱きついた
私こそ
頼まれたって離れてやるもんか!!
これから先もずっとずっと
私の傍にいてね―――――
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かなこ様の等価交換の品v
「桃城君で!!」ということなのでしたが・・・・。
桃城君初の私にとっては・・・・すごく難しかったです〜。
甘々になってしまいましたが許して下さい!!(土下座)
当初のリクエストと全然違います・・・よね??
こんなのでいいでしょうか?(ドキドキ)
よかったらもらってやってくださいまし。
またリヴでもお会いしましょうvv
2004年9月23日 茜