今日は久しぶりにテニス部が休みだからデートの約束をしていて
HRも終わって急いで帰る用意をしていたら、急に景吾に放送で呼ばれて、急いで向かった
「、これやっとけ。」
ドアを開けた瞬間に聞こえた声と共に、いきなり数枚の書類を手渡された
有無を言わさない発言
景吾の方をみると、景吾の机の上にもいろんな書類が置いてあった
放課後の生徒会室
今ここにいるのは生徒会長の景吾と副会長の私だけ
そんな時間がかかる内容じゃないけど・・・・・この調子じゃ今日は無理かな
景吾に気づかれないように小さくため息を落とし、書類を持って自分専用のパソコンへと足を運んだ
通り雨
そんな私は今、パソコンの前で固まっていた
何でこんなことになってるの?
「チャンは生徒会の副会長なんだから、これくらい出来るよな、あーん?」
私の頭上から聞こえてくる景吾の声
”そりゃあこんなもの、すぐ出来るわよ”
そう答えたくても声がでない
パソコンに向かって座っている私の後ろに回り込み、そこからキーボードの両脇に手をついていた
ぴったりとくっつけてくる身体
まるで抱きしめられているような感覚に背中が熱くなっていく
ど、どうして私の仕事見てくるの? いつもはずっと椅子に偉そうに座ってるくせに
しかもこんな体勢で・・・・・・・
景吾だってたくさん仕事あるから私を呼んだんじゃないの?
「そこ違うだろ。」
私の耳元で囁くようにそう告げて
マウスに置いていた私の手ごと、包み込むようにマウスを握り、画面に映っているポイントを動かした
触れている箇所からだんだん熱を帯びていくのが自分でもよくわかる
からかってるとしか思えないこの行動
「わ、分かってるわよ・・・・・」
「クッ・・・・・・」
震えるような声でやっとのことで口にした言葉
今の私にはこれが精一杯
私の言葉を聞くなり、景吾は小さく声をあげた
思わず顔を上げて睨みつける
といっても顔は真っ赤だろうから迫力なんてないんだろうけど・・・・・
「・・・・何よ?」
「強がるのもいいが、ミスるなよ。」
満足したのか、名残惜しそうに離れて自分の席に座って、机に置かれた書類に目を通し始めた
景吾が触れた所が未だに熱い
「・・・大丈夫って言ってるでしょ。だけど何で私がこれやらなきゃいけないわけ?」
「しょうがねぇだろ。他の奴らいねぇんだから・・・・」
そういえば昨日から2年生は修学旅行でいないし
3年生もまだ部活入ってる人ばかりで、しかもみんな運動部だからいつものように部活あるし・・・・
結局・・・今手があいてるのは、テニス部に在籍している景吾と私だけ、か
「だからって今日やらなくても・・・・折角のデートだったのに」
口を尖らせて独り言のように小さく呟きながら、さっさと必要事項を打ち込んでいった
「終わったらどこでも連れてってやるから。」
「どこでも?」
「あぁ・・・・・・・・何なら『ここ』でデートでもいいぜ?」
「ここ・・・・って?」
ここって言われても生徒会室で、しかも書類の整理しなきゃいけないのに
どこをどうしたらデートになるんだろう?
首を傾げながら画面から景吾の方へ目を移すと、また立ち上がって私の方へ近寄ってきた
何か、嫌な予感・・・・・・
何となくそんな感じがして立ち上がろうとする一足先に景吾に腕を掴まれて、抱きしめられた
収まりかけた鼓動が再び早くなっていく
付き合って3ヶ月経つけど、いきなり抱きしめられたりするのが未だに慣れない
いくら2人きりといっても、ここは生徒会室
いつ誰が入ってくるか分からないのに、景吾は構うことなく抱きしめた腕を離さない
無理やり絡められた腕を解こうともがいていると、更に抱きしめる力を優しく込めた
「ち、ちょっと景吾・・・・・・」
真っ赤になって抵抗する私を見て、ふっ と小さく笑って抱きしめる力を緩めた
「・・・冗談だ。早く仕事終わらせろよ。」
するっと腕を離して自分の席に座って、また書類と睨めっこし始めた
私は未だに熱い身体を何とか抑えつつパソコンに向かったが、頭の中は景吾でいっぱいだった
「何で景吾いつもあんなことしてくるんだろう?」
次の日
朝、学校へ登校するなり、隣の席の忍足君に話を持ちかけた
おかげで昨日は仕事もなかなか進まないし、大変だったんだから・・・・・
でも、いつも抱きしめてはくるけど、それ以上のことはしてこない
今まで景吾は何人も女の子と付き合っていたって聞いてるし、手も早いって聞いてたから・・・・・・
確かに私自身そんな雰囲気になったら今はまだ困るし、戸惑うと思うけど
抱きしめられるだけでドキドキして大変なのに・・・・・
だけど付き合って3ヶ月も経つのに、キスもしてこない景吾に不安を持っていた
もしかして・・・・・飽きたのかな?
彼は景吾と同じテニス部で仲もいいから、いろいろ相談に乗ってもらったりしてる
「あんなことって?」
「だ、だから・・・・・いろいろと」
「いろいろと・・・何?」
頬杖つきながら私を見てニヤニヤしている忍足君
絶対分かってるはずなのに、わざと分からないフリをしてる
「・・・・・もう!忍足君!」
「冗談やて。それは跡部なりの愛情表現やろ?」
「景吾なりの・・・愛情表現?」
相変わらずの笑顔で言う忍足君に納得できずに首を傾げるばかり
確かに抱きしめられたりすると安心するけど、ちゃんと言葉で言ってほしい
「言葉で言えへんこともあるさかい。」
「言葉で言えないこと・・・・・・?」
その時は忍足君の言葉の意味が理解できずにいた
*
「!」
昼休み、ご飯も食べ終わって次の数学の用意をしていたら、大声で呼ばれて
振り返ると息を切らしながら教室へ駆け込んできた亮くんの姿があった
「亮くん、どうしたの?」
「・・・・分かってるくせに。頼む!!」
いつものように手のひらを合わせて頼み込んでくる亮くんに苦笑して数学のノートを差し出した
大方、忍足君とテニスしてて次の数学の宿題のこと聞かされたんだろうな
いつも授業中は寝てるみたいだから・・・・・・
「しょうがないな。じゃあね、いちごミルクで手を打ってあげる。」
「あぁ、悪ぃな。いつもいつも。」
私の手からノートを受け取るなり、隣の忍足君の席に座って写しはじめていた
「悪いと思うなら自分でやってきなよ。」
「今は毎日部活で忙しいんだよ。家に帰ったら飯食って少しのんびりして寝ちまうし・・・・・」
「そんなんでテストどうするの?」
「・・・まぁ何とかなるだろ。」
ならないって・・・・・
何とかなるなら誰も勉強なんてしないから と心の中でため息ついて、急いでノートを写している亮くんを見た
「宍戸、お前何やってんだよ。」
すると突然、意外な声が降ってきた
2人して顔を上げると、眉間に皺を寄せた景吾が仁王立ちしていた
なんか・・・・怒ってる?
でも亮くんは平然としながらノートの写しを続けた
「何って、数学写させてもらってんだよ。今日当たるからな。」
「そんなのいちいちに借りるな。・・・・・、ちょっと来い。」
「ちょっと、景吾・・・・・」
亮くんに一言告げた後、私の手を引っ張って椅子から立たせ、廊下へ連れていかれた
廊下の人気のない所まで手を引っ張られて、手を離されると、小さくため息をついていた
一体なんなの?
「・・・・・・お前も簡単に貸すなよ。」
亮くんに言ったときよりは柔らかい口調
だけど、その顔は明らかに怒ってた
「だって困ってたし・・・・いちごミルク買ってくれるって言ってたし・・・・・・」
「いちごミルクだぁ?そんなもんで簡単に貸すなんてお前も相当単純だな。」
・・・・・・何でノート貸しただけでここまで言われないといけないの・・・・?
景吾はいつもそう
ちょっと亮くんや忍足君と話すると怒って・・・・・
次の瞬間、何かの糸がプツンと切れたかのように言葉が飛び出してきた
「なによぉ、別にノート貸すくらいいいじゃない!!いっつも景吾はそう。
それに亮くんとは1年の時から同じクラスなんだから!!」
「俺の前で他の男の名前なんて呼ぶな!」
「もぉ〜!!景吾の馬鹿!!」
「・・・・お前、俺様を『馬鹿』呼ばわりするなんていい度胸じゃねぇの?」
「もう知らない!!」
引きとめようとする景吾の手を振り払って全速力で教室へ向かった
それ以上景吾が追ってくることもなかった
・・・・さすがにさっきは言いすぎだったかな
午後の授業はまったく頭に入ってこなくて、代わりにさっきの口喧嘩のシーンが頭の中を駆け巡っていた
そして、今 HRの前に景吾に謝ろうと、景吾のクラスへ足を運んでいた
・・・・・・でも、来なければよかった
教室の手前で歩いていた足が止まった
景吾と隣の女の子 2人で喋ってる
背中をむいてるから景吾の表情は見えないけど、女の子の方はすごい楽しそう
ちょっと赤く頬染めてるし・・・・・・・
なによ・・・・・私には『仲良く喋るな』とか言ってるくせに
自分は楽しそうに喋ってるじゃない
なんだか悲しくなって、景吾に会う気になれなくて
HRが終わるまで人気のない階段でうずくまっていた
あれから大分時間も経って、生徒の声もだんだんと聞こえなくなっていった
・・・・私も帰ろう
ゆっくりと立ち上がって、鞄を取りに教室に向かった
もうみんな帰ったと思ったのに・・・・・・・
私の隣の人は一人で頬杖ついて外を眺めていた
・・・・・何でいるの?
教室へ足を踏み入れると、気配を感じたのかゆっくりと振り返って私と目を合わせた
「どないしたん?ちゃん。跡部の所に行ったんやないの?」
「・・・・・・そうなんだけど・・・・・・もう分かんないよ」
今にも泣き出しそうな表情の私に、忍足君が目を見開いていた
「分かんないって・・・・何かあったん?」
「私が他の男の子と喋ってるのを見かけると『何してるんだよ』って言ってきて。
そういう所は私の事、想ってくれてるのかな って思ったりするけど・・・・・・
景吾、本当は私のこと好きじゃないのかな?」
「そんなこと言うたかてあんなに愛されてるやん。」
「・・・・・景吾、言葉では言ってくれないし・・・・・何か、自信ない。」
そう、私は一度も景吾から『好き』とかそういう言葉を聞いたことがない
付き合ったときも『俺様と付き合え』って言われただけだし・・・・・・・
ちゃんと口で言ってくれないと不安になるんだもん
それでなくても付き合ってるっていっても景吾は本当にモテるから
「も・・・・分からないよ。」
さっきと同じ言葉をもう一度呟いて、その場に座り込んだ
「跡部の気持ち、知りたいか?」
ふわっと大きな手で頭を撫でられたかと思うと、予想外の言葉が私の耳に入ってきた
景吾とはまた違うゴツゴツした手 景吾とは違う少しひんやりした手
「・・・・・・・え?」
「俺にええ考えあるんやけど・・・・・・・」
そう言われて手を引かれたまま、連れてこられたのは屋上だった
今日は朝から厚い雨雲に覆われていて、昼間でも空は薄暗かった
私は何がなんだか分からずにただ黙ってついて行ったけど、屋上の扉を開けた瞬間、足がすくんだ
・・・・・景吾がいたから
どうしてここにいるの?
・・・・・・そういえば前に忍足君が言ってた気がする
『部活ない日はたまに屋上にいるときがある』って・・・・・・・
まともに景吾の顔が見れない
忍足君と繋いだ手も離そうとするのに、忍足君が力を込めて離してくれない
スタスタと景吾の方へ歩いていく忍足君の数歩後ろを、隠れるように歩いていた
「跡部、ちょぉ聞きたい事あんねんけど・・・・・・・」
「忍足・・・・・お前その手離せ。」
その声は顔を見なくても明らかに怒ってるって分かる
いつもと違う景吾の低い声に肩が揺れた
「ちゃん苛めてるん?」
丁度その時頬に冷たい感触がした
ちらっと空を見上げると、サァ・・・・と小粒の雨が地上に落ちてきた
それでも関係なく景吾と忍足君は話を進めていた
「あん?てめぇに何か関係あんのかよ?」
「あるで。その度に俺に泣きついてくんねん。」
「ち、ちょっと忍足君・・・・・・・・」
相談してるのは事実だけど泣きついたりしてないよ
と、撤回しようと忍足君を見上げると、小さく微笑まれた
『ええからまかせとき』 って言葉が言わなくても伝わってきた気がした
でも・・・・・・・
「それで、何度か話してるうちに意気投合してしもてな・・・・・・」
「・・・・何が言いたい?」
「俺ら付き合おうと思うてんねんけど・・・・・・」
忍足君の言葉に景吾がいきなり大声をだして話の続きをかき消した
見たこともない表情と声の大きさに、私はただびっくりするだけだった
「てめぇ、いい加減にしとけよ!がそんな簡単にお前を好きになるわけねぇだろ。
それにな、俺はが好きなんだ。これだけは誰にも譲れるかよ!」
「・・・・け、いご?」
一瞬、時間が止まった気がした
忍足君の胸倉を掴んで、今にも殴りそうな勢いの景吾を止めようと掴んでいた手を止めた
今の・・・・・空耳なんかじゃないよね?
本当、なの?
「・・・・・・・・ちゃん、ちゃんと聞いたか?これが跡部の本音やで。」
「忍足君・・・・・・」
景吾に掴まれていた腕をほどいて、制服を直してドアの方へ向かっていった
「じゃあ俺はそろそろ家にでも帰るとしますか。雨も滴るいい男 ってな。」
そう言って、歩きながらひらひらと手を振って校舎へと消えていった
「・・・・・・・・・それで?これは一体どういう事だ?」
一瞬、何のことか分からなかったが、何となく状況は読めてきた
多分俺の考えがあってんだろうが、一応確認のためにに問いただしてみた
「・・・・景吾の事を忍足君に相談してたら・・・こうなってた。」
「こうなってた じゃねえよ、よりにもよって忍足なんかに・・・・・・」
チッ と小さく舌打ちしながら、雫が滴り落ちている髪の毛をかきあげた
『ごめんね』と、しゅん と肩をすくめて、でも・・・・と話を続けた
「だって・・・景吾がいつも肝心なこと言ってくれないから不安で・・・・・本当はもう好きじゃないんでしょ?」
「本当に俺がお前のこと、好きじゃねぇと思ってんのか?」
「・・・・・・・・・・」
やっぱり俺の言葉が足りなかったみてぇだな
にこんなに不安にさせちまった
雨ですっかり冷たくなったの身体を優しく抱き寄せた
制服越しに小さく伝わる鼓動と温もり
もう、止められねぇかもな
「一度しか言わねぇからよく聞いとけ。俺はな、が好きでたまんねぇんだよ。
ちょっとでも目を離したら誰かにとられそうで・・・・・不安でたまらなかった。」
本当はすぐにでもキスもして、さっさと俺だけのものにしたかった
だが、一度お前に触れたら、もう戻れねぇ気がして・・・・・
自分が抑えられなくなりそうで・・・・・それくらい愛してるんだ
チッ 俺らしくねぇな
俺は心の中で、今日何度目かの舌打ちをした
「景吾、大好きだよ。」
「あぁ・・・・・・分かってる。」
小さな身体で俺の背中に手を回してきた
・・・・可愛いことしてくれんじゃねぇの
お前は『言葉』が聴きたいって言ったが・・・・・・
俺だってお前の『言葉』聴きたかったんだぜ?
「雨止んだ。」
気づかなかったが、空を見上げるといつの間にか雨も止んで厚い雲の隙間から光が射し込んでいた
「通り雨だったんだろ、もう晴れてるから平気だ。」
「うん、でも制服びっしょり・・・・・・・」
気持ち悪そうに身体に張り付いた制服を引っ張ってるの手を引っ張った
「。」
「なに?」
「俺ん家行くぞ。風呂入らないと風邪引く。」
「・・・・・・・は?」
言うよりも早く歩き出そうとする俺に、の目が一瞬見開かれた
まるで『今なんて言った?』って顔つきだな
しょうがねぇからもう一度、もっと分かりやすく耳元で囁いた
「俺が入れてやるよ。」
「いいです!一人で入れます!むしろ自分の家で入ります!!」
「遠慮すんなよ、俺が入れてやるんだぜ?ありがたく思えよ。」
顔を真っ赤にして逃げようとするの腰に素早く手を回して、ぐっと引き寄せた
「け、景吾・・・・冗談、だよね?」
「俺はいつだって本気だぜ。」
いつだって本気でを愛してる
こんな気持ちは初めてなんだ
それ故に、いつも嫉妬してた・・・・って言ったらお前はどんな顔するんだろうな
―――そんなこと、言わねぇけどな
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美咲様からのリクエスト。景吾さんで『彼女を苛めたりからかったりして楽しむ景吾。
だけどヤキモチ焼き』という設定で書かせてもらいましたーv
話が支離滅裂な感じがするのは、私だけでしょうか?(汗)
美咲ちゃんにはカードやブロマイドなどいただいたりしていたので、せめてものお礼にと
こんなものですが書かせてもらいましたvv
ちゃんと侑士も登場させましたのでvv 可哀想な役だけど(苦笑)
侑士スキー様から苦情がきそうで怖いです(>_<)
美咲ちゃんvこれからも仲良くしてやってくださいvv
2005年 7月 13日 茜