雨上がりの午後
「はぁ・・・・・・・・・」
朝から一向に止む気配のない雨を、教室の窓から眺めながらため息をついた
雨止まないかなぁ・・・・
ボーっと外を眺めているときに、ふと思い出したのは今朝のお母さんとの会話
「、今日は帰ってくるの早いんでしょ?」
「うん、学校終わったらすぐ帰る予定だけど・・・何?」
「ケーキ焼いておくから。帰ってきたら一緒に食べましょv」
お母さんは甘いものが大好きで、よくいろんなものを作ってくれる
今日はケーキ・・・かぁ
「やっぱりケーキには紅茶よね・・・・・・・」
「ケーキにはコーヒーよ。」
独り言を言ったつもりが、横から返事が返ってきて、バッと声が聞こえた方を振り向く
声の主は隣のクラスのだった
「なに一人でブツブツ言ってるの?変だよ。」
「・・・・変でいいよ。今日のおやつはケーキって言ってたんだけど、飲み物はやっぱり紅茶だなーと思ってさ。」
「何言ってるの?ケーキにはコーヒーよ。」
コーヒーなんて苦いもん
絶対ケーキには紅茶なんだから!
それから意味もなく、と2人で『ケーキには紅茶!』『絶対コーヒーだって!』というような話をしていた
私もも結構意地が強い方だから、自分の意見を必死に突き通そうとしていた
私達がそんな会話をしていたら隣の席の人が帰ってきたみたいで、私達の話に口を挿んだ
「何を騒いでるんだ?」
貞治の言葉で、が今まで私と言い争っていた矛先を貞治に向けた
「あ、乾くん。ちょうどよかったちょっと聞いてよ。」
「何だ?」
「ケーキにはコーヒーよね?」
意表をついたの質問に、一瞬貞治の思考回路が固まったように止まった
「・・・何の話だ?」
「だからケーキを食べるときの飲み物よ。私はコーヒーだって言ってるのには紅茶って言い張るの。乾くんはどう?」
の質問にしばらく顎に手をかけて考え込んでいた
「なるほどな。それは重大な問題だ。」
「「・・・・は?」」
いきなり貞治が納得したかと思うと重大とまで言ってきたものだから、も私も怪訝な顔つき貞治を見上げた
『貞治はケーキには紅茶かコーヒーか』っていう質問だったのに、それの答えどころか、重大って・・・・どこが?
「それはそうだろう。なぜかと言うと、答えがない問いかけ。 これほど厄介なものはないからな。」
も私も貞治の言葉を聞いて、納得して頷いた
「・・・・なるほどね。」
「それもそうだね。」
「だろ?」
確かにこの問いかけに答えなんてない
好みなんて人それぞれだもんね
貞治の言葉で私もも、落ち着きを取り戻した所で、が思い出したように声をあげた
「あ、次の時間移動だったんだ。じゃあね〜」
・・・・一体何しにきたんだろう?
私にそんな疑問を残して、はさっさと教室を出て行ってしまった
そしてまた再び教室から見える景色を眺めた
さっきよりも明るくなった空
でも一向に雨が止む気配がない
「そういえばもう梅雨に入ったのかな?」
隣の席で、ノートに何か書き込んでいる貞治に話しかけると、動かしていた手を止めて外を眺めた
「いや、まだ梅雨入りではないな。俺の計算でいくと、正確な梅雨入りの日は・・・・・・・」
私はペラペラとノートをめくって梅雨入りの日にちを調べている貞治の言葉を遮って、話を続けた
「それにしては最近雨が多いよね・・・・・・」
また空に向かってため息をつくと、貞治が「そういえば・・・」と口にするのが聞こえた
「は雨が嫌いだったんだよな。」
「うん、嫌い。だって洗濯物は乾かないし、傘持ち歩くの面倒だし、髪の毛はうねるし・・・・・嫌なことばっかり。
梅雨なんてこなければいいのに・・・・・」
「雨だけじゃなく、ちゃんと晴れの日だってあるじゃないか。」
「そうだけど雨は嫌。」
私がいくら『雨なんて嫌い』と言ったところで急に晴れるわけでもないのは分かってる
シトシトと降っている雨をひと睨みしてから机に伏せた
そしたら相変わらずノートを片手に持ってる貞治が、立ち上がって窓際に近づきながら空を見上げた
「・・・・・・そういえば午後は晴れるはずなんだが・・・・・・」
「本当?」
「あぁ。俺のデータが正しければ今日はいいものが見れるはずだ。」
「・・・・・・いいもの?」
「あぁ。」
なんだか楽しそうに笑う貞治に首を傾げる
いいもの・・・・・って何だろう?
まさか・・・・・・・・・・新しい乾汁!??
『手伝ってくれ』とか言われるの?
まさか試飲とかさせられるんじゃないでしょうね!?
・・・・でも部員でもないのにそんなこと頼まないよね
いや、部員じゃないからこそ、試飲させて味の感想とか聞こうとしてるのかも・・・・
ま、まさか・・・・・ねぇ?
未だに口元を吊り上げて微笑んでいる貞治に、少し恐怖を感じた
「・・・どうしたんだ、?」
「べ・・・・別に。何でもないよ・・・・・・・」
「そうか?・・・・・・・・・・あ」
『あ』と言われて肩がビクッと揺れた
な、何!?
「、後ろ見てみろ。」
「う、後ろ?」
後ろは窓しかないのに・・・・・・・
何がしたいのか分からない貞治の言葉にビクビクしながらも、ゆっくりと後ろを振り返った
「あ・・・・・虹だ。」
「虹だな。」
虹なんて久しぶりに見た
さっきまで雲しかなかった空に晴れ間が見えはじめて
その青空に大きな虹の橋が架かっている
よく見ると、まだ霧雨が降っていて
まさに、お天気雨
しばらく虹を眺めていて、さっきの貞治の言葉を思い出した
「もしかしていいものって・・・・・・・これのこと?」
「あぁ、そうだが?」
「よかった〜・・・・・」
本当によかった〜とホッと胸を撫で下ろした
乾汁の実験じゃなくて本当によかった・・・・・
そんな私の行動に貞治が首を傾げた
「・・・どうしたんだ?」
「な、なんでもない!」
これ以上余計なこと言うと貞治に怪しまれると思い、慌てて話題を切り替えた
「ねぇ、虹ってどうしてできるんだろうね。」
私の質問を聞くなり、眼鏡を手で押し上げ、得意そうに話しだした
落ちてきそうになる眼鏡を手で押し上げるのは貞治の癖
そう、もうずっと前から見てきた・・・・・・
「簡単に言えば空気中の雨粒に太陽の光が当たって屈折し、できるんだ。
・・・・は虹って何色に見える?」
そう問いかけられて、今まだハッキリと見えている虹の色を挙げた
「えっと、赤でしょ、それに橙、黄色、緑、青、藍色、紫 ・・・・・の7色かな?」
「そうか。」
「え、違うの?」
「科学的にみて虹の色は『連続した変化』であって、特定の名前で分別するのは不可能なんだ。
まぁ、『all the colors of rainbow 』という表現が一番適切な言葉かな。」
「all the colors of rainbow・・・?」
「”あらゆる全ての色”という意味だ。」
そうなんだ・・・・・・
貞治の説明に頷くしかできない私
「色の認識は人間の環境や言語、文化の違いに大いに影響を受けると考えられる。
つまり、それぞれの国や文化圏にによって、色の認識の違いがでるんだ。」
「・・・・ふーん。 じゃあ雨が降らないと虹は見れないってことだよね?」
「まぁ、人工的に作れる場合もあるから100%・・・とは言えないが、そんなところだな。」
人工的・・・・・そっか
霧吹きとか水まきとかでも虹ってできるもんね・・・・・
でも霧吹きなんかじゃ、こんな大きな虹は見れないよね
一通り貞治の説明を聞いて、また滅多に見ることのない虹を眺めていて、ある言い伝えを思い出した
「そういえば虹のふもとには宝物があるっていう言い伝えあるよね?」
「あぁ、聞いたことあるな。」
私の言葉に貞治も頷く
「宝物かぁ・・・」
「宝物って言ったら、黄金か?」
中身はどんなのだろう?と想像を膨らませているところに、真顔でそう答える貞治に
私は呆れて小さくため息をつく
「・・・貞治、夢ないね。」
「そうか?まぁ、そんな言い伝えの方が不思議だろう。」
「・・・・そうだけど、さ。」
そんな会話のあと、また2人して大空に浮かぶ虹を見ていた
今、私の瞳には7色に輝く虹が映っている
貞治の瞳にも7色の虹が映ってるはず
でも同じ色が見えてるとは限らないんだよね
・・・だけど、同じ色が同じように見えているといいな
「少しは雨も好きになったか?」
「・・・・・少し、ね。」
宝物なんて人それぞれだろうけど
もし私が宝物を見つけたら
私はきっと、この瞬間ときが続けば・・・・・・と思うんだろうな
貞治と一緒にいる、この瞬間ときを――――
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Kさまに捧げるドリームでした☆
久しぶりに乾さんを書いてみました!
ちゃんとなっているでしょうか??
まぁ、意味の分からない文章はいつも通りなんですが(笑)
乾さん、お誕生日おめでとー!!
100のお題 : 24「雨上がりの午後」
2005年 6月 3日 茜