知ってるはずはないと思っていた
・・・だけど、知っていると信じたかった
かけがえのないもの
私が周助と付き合いだしてから半月が経った
周助とは同じテニス部だったから、前から喋ったりはしてたけど
告白したのは周助の方から
私も周助のことをずっと気になっていて、告白しようと思っていたけど伝える勇気がなくて・・・・
だって周助ってすごいモテるから
私なんかより可愛い子、たくさんいるし・・・・・・
なんて思って半分諦めていたんだけど、周助が告白してくれて無事に付き合うことが出来ました
「周助、おはよう。」
「おはよう。今日はちゃんと起きれた?」
「大丈夫だよ。」
付き合いだしてから、朝が弱い私を見て、毎日迎えにきてくれて一緒に登校してる
昨日は周助が迎えにくる少し前に慌てて起きてバタバタしちゃってたけど・・・・・
だって今日は・・・・・・・・
繋がれている手をキュッと握りなおして、私の隣を歩いている周助に声をかけた
「・・・・周助」
「どうしたの?」
「今日って何の日か、知ってる?」
私のこの発言に周助は首を傾げながら答えた
「え、今日?何かあるの?」
「ううん、何でもない・・・・・・・」
私は何事もなかったかのように、話をそらした
・・・・そうだよね
今までも部活以外に喋る機会なんてあんまりなくて、付き合いだしてから部活以外でも喋るようになったくらいだもんね
私はちゃんと周助の誕生日知ってるのに
ただ、恋人が自分の誕生日を知らないだけ
他人から見たら ただそれだけのことだと思うけど、私にとってはそれが心に重くのしかかってくる
生まれて初めて付き合った人と、初めて過ごす1年に1度の記念日だから
・・・・・少しの間でもいい 一緒に過ごしたい
だけど、今更そんなことを言ってもきっと周助を困らせるだけ
まだ付き合って間もないんだし、周助が私の誕生日なんて知ってるわけないよね
だけど、知っていると 知っていてほしいと、心のどこかで信じたかった
*
それから周助とは何があるわけでもなく、放課後の部活も終わりを告げた
今日の休み時間に友達が「おめでとー!」って私の誕生日を盛大に祝ってくれた
それはすごく嬉しいけど、「おめでとう」と言われる度に周助の顔が頭から離れない
同じクラスにテニス部員は1人もいないし、クラスでの騒ぎを知ってる人もいない
今日はいつもより部活の時間が短い気がしたけど、あまり気にせず片付けをしていた
今日はこのまま終わっちゃうのかな?
ふぅ と小さくため息をついた後ろから声がした
「ちゃん、ほい。」
呼ばれて振り向くと、英二がニコニコしながらボールが入ったカゴを私に差し出していた
意味が分からず聞き返す
「何、これ?」
「これも片付けといて。」
前にやったゲームのバツゲームで1ヶ月間、英二はボールの後片付けをする事になっていた
それからまだ1ヶ月経ってないし、今まで毎日キチンと片付けてたじゃない
「なんで?英二いつも片付けてるじゃない。なのに・・・・」
今日に限って・・・と言おうとした横から大石君が口を挿んだ
「あ、そういえばそれが終わったら竜崎先生の所に行ってもらえる?何か呼んでこいって言われたからさ。」
「・・・・分かった。」
「じゃ、よろしくねん。」
そう言うなり、2人して部室の方へ逃げるように走っていった
そんな2人の背中を目で追いながら、また小さくため息をついた
今日って私の誕生日だよね?
何か、いつものみんなと明らかに違う気がする
それに周助も・・・・・
いつもは部活が終わって少しでも会話してから着替えとかするのに、今日は部活が終わるなりすぐに部室へ入っていっちゃった
どうしたんだろう
何か今日は周助と全然喋る時間がない
それだけで涙が出てきそうになる
溢れてくる涙を堪えながら後片付けを続けた
それから竜崎先生の所も行って、ようやく全部の仕事が終わって、部室へと向かう
あとは部誌だけだよね・・・と思いながらドアのノブに手をかけた
いつもはガヤガヤとしている部室も、今日は誰の声もしない
竜崎先生の用事もたいしたことなかったから、そんなに時間は経ってないはずなんだけど
みんなもう帰ったのかな
と、ドアを開けると
「Happy Birthday、ちゃん!!」
その声と共に、目の前には帰ったと思っていた部員達の姿
もちろん周助の姿も・・・・・・
「何・・・これ。」
いきなりのことに、驚くより先にただ唖然とする
どういうこと?
辺りを見回すと、部室内も綺麗に掃除されていて飾りつけまでされている
それに中央には大きなケーキも
私の・・・・・・ため?
呆然とする私に周助が声をかけてきた
「驚かせてごめん。実はみんなで計画していたことなんだ。」
「どういうこと?」
わけが分からない私に大石君が近寄って説明してくれた
「いつもがんばってくれているマネージャーに感謝の意味を込めて、みんなからささやかだけどパーティーをしようってことになったんだ。
だけど、部活はちゃんとやらなきゃいけないし飾りつけの時間もなくて、今日はいろんなことを頼んじゃって悪かったね。」
説明してくれる大石君の後ろからひょっこりと顔を出したのは英二
手のひらを合わせて謝ってきた
「ちゃん、ごめんにゃ。ボール押し付けちゃって・・・・明日はちゃんと自分でやるから。」
「大丈夫だよ、英二。」
まさかみんなが私の誕生日を祝ってくれると思ってなかったから
こんな楽しい誕生日は初めてだよ
ありきたりな言葉しか出てこないけど、たくさんの感謝を込めて・・・・・
「みんな、ありがとう!!」
それからみんなで限られた時間の中、盛大に盛り上がった
*
楽しかったパーティーも終わりを告げて帰り道、周助と並んで帰ってる
「それにしても今日はびっくりしたよ。」
「楽しかった?」
笑顔で聞いてくる周助に、私も微笑みながら返事を返す
「もちろん。」
「それならよかった。それより、朝はごめん。」
「何が?」
「朝、が『今日って何の日か知ってる?』って聞いてきたじゃない。
本当は僕、今日がの誕生日だって知ってたんだ・・・・なのに嘘ついてごめん。」
「いいよ。理由が分かったし、周助が私の誕生日を知っててくれて嬉しい。」
「もちろん知ってるに決まってるじゃない。」
知ってるはずないと思っていたのに、知っていたことだけでも嬉しい
「ちょっとここ、寄って行かない?」
学校と家との中間に位置する小さな公園
そこで私は周助に告白された
私たちの思い出の場所
「いいよ。」
ベンチに並んで座って暗くなった空を見上げると、星が綺麗に輝いていた
「、誕生日おめでとう。」
視線を周助の方へ戻すと、可愛くラッピングされた包みを差し出していた
「ありがとう。・・・開けてもいい?」
「うん、気に入ってくれるといいんだけど・・・」
カサカサと包みを開けると、中からでてきたのは数本のマニキュア
それも私の好きな色ばっかりで思わず声をあげた
「可愛い・・・・・・」
「そういう色って好き?」
「大好き。私の好きな色、よく分かったね。」
普段、好きな色なんて聞かれることなんてないから、周助にも私の好きな色なんて教えた事はないのに
どうして分かったんだろう・・・・・・
「うん、にはこういう色が似合うと思ったからね。」
「ありがとう。早速今度のデートの時に使うね。」
「それは嬉しいな。楽しみにしてるよ。」
今から次のデートが楽しみになっちゃう
周助からもらったものを鞄にしまおうとしていると、目の前に咲いていた桜の花びらが1枚 一緒に舞い込んできた
「・・・・早く夏にならないかな」
ふと呟いた言葉が周助にも届いたみたいで、聞き返された
「どうして?は春は嫌い?」
「嫌いじゃないけど・・・・・・桜を見るとどうしても卒業、とか別れのイメージが強いの。」
私だけかもしれないけど、『入学や出会い』よりも卒業とかの方がイメージが大きい
だから、桜を見ると少し悲しくなる
「の『桜を見ると出会いよりも別れのイメージが強い』っていうのを僕が取り除いてあげるよ。」
「どう、やって?」
頭にあるイメージを変えるのって大変だよね?
だけど、本当にできるなら取り除いてほしい
「僕とが出逢ったのは桜が咲いていた時期じゃない。」
「・・・・うん」
そういえば・・・・・・・・
周助と出逢ったのは、桜が咲き乱れる入学式の日だった
あの出逢いがなかったら、今 私はこんなに幸せじゃなかった
「そして、今また桜の季節になってるね。
だからってわけじゃないけど、に伝えたい事があるんだ。」
「・・・何?」
「これからたくさんの季節が繰り返し過ぎていくよね?その季節を僕はずっとと過ごしていくつもりだよ。」
「えっ・・・?」
私の顔を見てニコって笑った
「僕からのキス、受け取ってくれるかな?」
「え、キス・・・・?」
キスは今までにも何回かした事ある
だけど、どうして急にそんなこと?
これが私に伝えたいこと、なのかな?
急にそんなことを言い出すのか分からず、首を傾げた
「うん、唇にキスするんじゃなくての心にキスをしたいんだ。」
心に?どういうこと?
ますます分からなくなってくる
「どう・・・やって?」
周助の言ってることが分からず返事を待っていると、私の髪を優しく撫でながらこう言った
「の気持ち、僕に教えて?」
私の・・・・周助に対する気持ち?
そう言われて ハッとした
そういえば・・・・・
告白された時も、嬉しくて私はただ返事をしただけ
周助から「好きだよ」って言われるけど、私から言ったことはない
・・・・もしかして、周助はそれを望んでたの?
不安げに顔を上げると、周助の穏やかな顔が映った
好きな人に『好き』って言葉にしなくても、想いは伝わるかもしれない
実際に私もそうだと今まで思ってた
だけど、本当は不安・・・・・だったのかな?
そうだよね
言葉にしないと伝わらないことだってあるんだよね
こんなことにも気づかなかった
不安にさせちゃってごめんね・・・・・・
だけど私の気持ちはいつだって同じ――
「私は、いつだって周助が大好き。」
「僕も・・・が大好きだよ。」
私の言葉を聞いて、嬉しそうに抱きしめてくれた
「もう1度聞くけど・・・・・僕からのキス、受け取ってくれる?」
「もちろん、当たり前でしょ。」
笑いあって、お互いの温もりを感じながら何度もキスをした
唇に想いを込めて、心にキスを――――
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ラムたんに捧げますお誕生日のお祝いドリでしたvv
ラムちゃんvお誕生日おめでとう!!
って、遅っ!10日も過ぎてるし・・・・
遅くなってしまって本当に申し訳ございませんでしたーっ!!(土下座)
もっと早く書けなかったものかと心から反省しております。
しゅ・・・・周助さん
こんな感じで・・・大丈夫かしら??
こんなものでよければ、持って帰ってくださいませ☆
2005年 3月25日 茜