「・・・・・んっ」
カーテンの隙間から漏れてくる暖かい日差しを受けて、目が覚めた
新築特有の香りがする部屋から差し込める朝の光は、明るく辺りを包んでいた
時計を見ると、朝の5時半
一応目覚ましをセットしておいたけど、その1時間も前に起きちゃったのね・・・・・
ふと、自分の左手に目を移した
左手の薬指には指輪がはめられている
そして、隣には・・・・・・・
愛の言葉
まだ見慣れぬ部屋の光景を見渡した
昨日から2人で住み始めた大きな一軒家
今まで1人暮らしだった私にとっては、少し大きすぎる気もしなくはないけど
そして私の隣には、愛しい景吾の姿
景吾から規則正しい寝息が聞こえてきて、思わず笑みをこぼす
直接伝わってくる景吾の体温と柔らかい肌が、温かくて心地よくて
彼の腕の中に居るという事に、言いようのないくらいの安心感を覚える
手を伸ばして、額にかかる髪の毛をそっと払った
そして景吾のキメ細かい頬をそっと撫でた
いつもは私が目を覚ますと既に景吾が先に起きてるから、寝顔を見ることはほとんどと言っていいほどなかった
景吾より先に起きれれば、毎日景吾のこんな顔が見れるんだ
景吾の寝顔を見ながら、昨日の事を思い出す
昨日、結婚したんだよね・・・・・・・
親族や友人が祝ってくれたのにまだ実感が湧かなくて、隣で寝ていた景吾の髪を弄んでいた
「おい、いつまで触ってるつもりだ?」
寝てると思っていた景吾の口が突然開いたかと思うと、ゆっくりと長い睫毛に縁取られた眼を開けた
「け、景吾!?起きてたの?」
「当たり前だ。の目が覚める前から起きてたぜ。」
「そうなんだ・・・・おはよう、景吾。」
『おはよう』あなたに伝える一番最初の挨拶
これからは毎日言えるんだね
私がそう言うと、枕元にあった時計を見て呆れたような声をだした
「まだこんな時間じゃねぇか。もう少し寝てろよ。」
そう言うと同時に、もっと近くまで引き込まれて、優しく抱きしめられた
「・・・何か夢みたい。」
「夢なんかじゃねぇよ。」
嬉しくて、甘えるように身を摺り寄せた
そんな私に、フッと笑う景吾の声が聞こえた
あまりにも幸せ過ぎて、これはすべて夢なんかじゃないのかと思えてしまう
再び目を閉じた景吾の顔を見ながら、昨日の結婚式を思い出した
私達が挙げた結婚式は、親族と友人のみの小規模なもの
それは私が望んだことだった
純白のウエディングドレスに身を包み、お父さんの腕を掴んで
扉を開けると、ステンドグラス越しの木漏れ日と荘厳なパイプオルガンの響き
真っ白な大理石のバージンロードが続いていた
そしてバージンロードの先で待っている景吾
心なしか景吾も緊張してるみたい
愛する人の元へ、幸せへと続く道を一歩ずつ踏みしめていく
10mくらいの距離がすごく長く感じた
『あんなまどろっこしいことしないで、さっさと俺の元へ来い』って景吾が後で言ってたけど、さすがにそうはいかないよ
やっとのことで景吾の元まできて、お父さんの手を離して景吾の傍へ
永遠の愛を誓い、指輪の交換をして口付けを交わす
扉が開けられる前にお父さんと交わした言葉―――
「幸せになりなさい。」
ずっと『結婚』ということにいい顔しなかったお父さんが、その時初めて笑って告げた言葉
「幸せに、なります。」
私も泣きそうになるのを堪えて、笑顔を返した
偽りのないこの気持ち
それを今日、この日に誓う
中学の時には分からなかったこの気持ち
誰よりもあなたの傍にいる
2人で幸せになろうね
あなたを愛し、あなたから愛されること
その幸せを教えてくれたのは、紛れもない景吾
誰よりも愛しいあなたが教えてくれたから・・・・・・
そのまま教会の外へでると、出席者のみんなからのフラワーシャワーが待っていた
そして、しばらくその場で歓談をしていると、懐かしい声が聞こえてきた
「跡部〜!〜!久しぶりだなー。」
声のするほうをみると、氷帝に通っていた頃のテニス部レギュラー達が集まってきた
卒業して以来、あんまり会うこともなかった彼らに久しぶりにあって、嬉しくて思わず声をあげた
「向日君、忍足君!!みんなも。久しぶり!」
「俺らん中で一番初めに跡部が結婚するなんてなぁ・・・。それにしても、ちゃん綺麗やね。」
「ありがとう。」
「先輩、ご結婚おめでとうございます。」
いつになっても鳳君は礼儀正しいな
なんて思いながら「ありがとうございます。」と返事を返す
「しっかし、本当に結婚するとはな・・・・。」
「あん?何か文句でもあんのかよ?宍戸。」
「いや、別に・・・・・」
久しぶりにあっても相変わらずのみんなに笑みをこぼす
「、やっぱりこいつらには招待状出さなくてよかったんじゃねぇか?」
「何でよ。中学からの友達なんだから出すのは当たり前でしょ?」
「そうだそうだーっ!」
「そうやで?こんな友達想いな俺ら、他にはいないで?」
「跡部は一生この性格のままだな・・・・」
「ちゃんも大変だね〜。」
「辛い事があったらいつでも相談乗ってあげるで。」
みんなの言葉に、景吾は小さく舌打ちをした
「だから呼びたくなかったんだよ・・・・・・」
「まぁ、ええやん。」
その後もレギュラーのみんなで楽しく喋っていて、それでもずっと隣にいてとっても優しい景吾に、改めて
――景吾と結婚できて、すごい幸せ――
そう思うと涙が溢れてきて、目の前が霞んできた
それを景吾に見られて「何泣いてんだよ。」って言われる前に目を逸らした
「。」
ふいにそう呼ばれたかと思うと、身体がふわりと宙に浮かんだ
「ちょ、ちょっと景吾・・・・・・・」
いきなりのことに戸惑う私に、景吾が耳元で囁いた
「愛してる。」
私たちの目の前にいたみんなは、それを見ると同時に冷やかしはじめた
「跡部やるじゃん!」
「ラブラブっぷり見せつけんといてな。」
他のみんなは、呆れていたり、冷やかしを止めたりで・・・・・・
「てめぇら、うるせぇよ。」
少し照れた表情をしながらそう言う景吾に抱かれたまま、私も今の気持ちを伝えた
「私も愛してるよ。」
そんなことを思い出しながら、目を瞑り少しの眠りについた
*
朝食も食べ終わってのんびりしていた頃・・・・・
ピーンポーン―――
「・・・誰だろう?」
「放っとけよ。」
丁度食器を荒い終えて、手を拭いてから玄関に行こうとしたら景吾に止められた
リビングで洋書を読でいたけど、チャイムの音で目線を本からずらした
「でも宅配便とかかもしれないじゃない。」
「はい・・・」
カチャ と玄関のドアを開けると、そこには見慣れた人たちの姿・・・・・・
「よぉ、!新婚生活はどうだ?」
一番に声をかけたのは向日君
その後ろからレギュラーのみんなが声をかけてきた
「仲良うやっとるか?」
「それにしても大きい家だな。」
「そうですね。」
「ふぁ〜っ。眠い・・・・・」
「み、みんな!?どうしたの?」
いきなり大人数の訪問者にただ驚く
「どうしたの?って。昨日結婚式やってラブラブやろうから、どんなもんか遊びに来たろ 思うてな。」
二ッと私に笑顔を振りまいて、手に持っていたお菓子を差し出してきた
「お前ら・・・・・来るんじゃねぇよ。」
後ろから声がして振り向くと、リビングにいた景吾が玄関まで来ていた
そして忍足君達の顔を見るなり不機嫌な顔になって、玄関まで既に入ってきていたみんなを追い返そうとしていた
「そんな、追い返しちゃ悪いじゃない。」
折角来てくれたのに・・・・と呟くと、みんなが騒ぎ出した
「そうやで、跡部とちゃんのラブラブっぷりを見にきてやったのに、追い返すことないやん。」
「そうだぞ、跡部!ケチくさいのは相変わらずだな〜!!」
「ね、景吾。いいでしょ?」
手のひらを合わせてお願いしてみると、景吾はチッ と軽く舌打ちして「・・・仕方ねぇな。」と小さく言い放った
みんなをリビングに通してから、人数分の紅茶とお菓子を用意した
「ちゃん、昨日は跡部に寝かせてもらえんかったんとちゃうの?」
「えっ・・・・・・・」
みんなの分の飲み物を用意していると、忍足君が近づいてきて、こんなことを聞いてきた
私が返事に困っていると、いつの間にか景吾もキッチンへ来ていて、代わりに返事をした
「忍足、余計な事聞くんじゃねぇよ。」
「ええやん、新婚なんやさかい、大変やな。」
私は恥ずかしくて、返事できずに俯いていた
「おい、忍足・・・・・・」
「すまんすまん、ちゃん怒らんといて?」
「うん、大丈夫だよ。」
それからしばらく雑談をしていた
途中で慈郎ちゃんは寝ちゃうし、長太郎君は礼儀正しいし
中学時代とまったく変わらない光景・・・・・
昨日もこんな感じだったし・・・・・
そんな楽しいひとときを景吾と一緒に過ごしていた
「跡部、ちゃん。」
少し沈黙があったかと思うと、忍足君が急に真顔で私達に声をかけてきた
急にどうしたんだろう?と、思わず首を傾げた
いつの間にか慈郎ちゃんも起きていて
そしてみんなで「せーの」って声を揃えて、次に聞こえてきた言葉は・・・・・・
「結婚おめでとう!!」
一瞬、景吾と顔を見合わせた
まさかそんなことを言ってくれるとは思ってなかったから
「・・・・・それ、昨日も聞いたぞ。」
微笑んだ私とは対象に景吾は、呆れた顔をしている
「ええやん。昨日は昨日。今日は今日やし。今日はみんなで揃って言おうと思うてな。」
「昨日はいろんな人から言われたからさ、今日もう1回言っとこうと思ってさ。」
昨日も聞いたけど、改めて聞くとまた嬉しさがこみ上げてくる
「みんな、ありがとう。」
「跡部はー?」
いつまでたっても返事をしない景吾を急かすように、向日君が声をかけた
「あ?あぁ・・・・・・。」
「あぁ、じゃ分からんって。」
もしかして、景吾も照れてるのかな?
なんて勝手に解釈して、笑いそうになるのを堪えた
「そんなことより、お前らいつまでいるつもりだよ。」
「跡部が素直に『ありがとう』って言うまでいるで。」
「そーだそーだ!!言えー。」
「人間、素直が一番ですよ。」
「・・・・てめぇら。」
それからまた家中が賑やかになって
みんなで久しぶりに中学の時とかの話をしたり、私にいろいろ景吾の様子を聞かれたり・・・・で
みんなが帰る頃には日が沈みかけていた
「長居しちゃってすいませんでした。」
「じゃぁな、元気でやれよ。」
「また来るからなー。」
向日君の言葉に景吾が振り向いた
「二度と来るな。」
「もう、景吾ったら・・・。また来てね。」
みんなが見えなくなるまで見送ってから、景吾の隣へ座った
「やっとうるさい奴らが帰ったぜ。」
洋書を読んでいる合間に、コーヒーを飲みながらホッと一息ついていた
「そんなこと言っちゃ悪いじゃない。」
「いいんだよ。どうせ冷やかしに来ただけに決まってんだからよ。」
それは・・・・・・・そうかもしれないけど
と思っても口には出さなかった
そして今日で2日目となる、2人の寝室へと入ってきて、ダブルサイズのベッドに横になった
いつか、あなたの心の全てが私でいっぱいになることを望んでいたあの頃
それが叶った今でも、不安になることだってある
昨日に行った結婚式
こんなに幸せなのに、少しだけ・・・・・不安もあるの
景吾の胸に顔を埋めて、ギュッとしがみついた
そしたら優しく抱きしめられて、片方の手で頭を撫ではじめた
まるで子供をあやすかのように
「眠るまでこうしててやるから、もう寝ろ。」
「うん・・・・・・ねぇ。」
「何だ?」
「景吾って・・・・永遠の愛って信じる?」
「何だよ、急に。」
「何となく。昨日永遠の愛を誓ったじゃない。だけど、本当に永遠なんてあるのかな・・・・って」
昨日誓ったばっかりなのに、突然そんなことが浮かんできて離れない
最初は何を言ってるんだ?って顔をしていた景吾も、何となく分かってくれたみたい
「は俺との愛を何処まで続ける予定なんだよ。」
「そりゃあ・・・・・一生。」
「俺が死んだ後もか?」
「それでも・・・・一生景吾を愛するよ。」
本当はそんなこと・・・・景吾が死んだ後なんて考えたくないけど、もしそうなっても
私にはもう景吾しか愛せないから
「・・・・俺も同じだ。これが永遠の愛でいいんじゃねぇか?」
「・・・・・・そうだね。そう思うことが大事なんだよね。」
永遠なんてこの世にあるわけない
だけど、今の私の気持ちは真っ直ぐに景吾に届いている
あなたへの想い・・・・誰よりも愛しているから・・・・・
「景吾、結婚してくれてありがとう・・・・・」
「ばーか、そりゃこっちの台詞だ。」
フッと笑って、景吾の整った顔が近づいてきた
そして触れるだけのキス
「今日はもう寝ろ。明日は思いっきり愛してやるから。」
「景吾ったら・・・・・・・・」
昨日だってそんなこと言って、今日起きるの大変だったんだから・・・・・・
なんて言っても、愛する人に抱かれるのは嬉しいから
景吾の腕の中でそっと瞳を閉じた
あなたと私、2人で歩いていこう
これからという時間を・・・・・・
幸せな時間の中を
永遠の愛の誓いを胸に、2人で幸せになろうね
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ももこ様のキリ番リクエスト!
「跡部ドリで、激甘の新婚ドリをお願いします!」
とのことでしたので、景吾とのラブラブ新婚生活を書かせていただきましたvv
新婚生活というより、結婚式が中心になってしまいましたが・・・(汗)
ももこ様、いつも遊びにきてくださってありがとうございます!!
こんなものでよろしければ持って帰ってやってくださいませv
また遊びにきていただけると、とっても嬉しいですvv
2005.03.10 茜