半分こ







放課後の教室

クラスメイトが帰った後、私と侑士は揃って日直の仕事をしていた

「私日誌書いとくから、侑士は窓の鍵の確認お願い。」

「あぁ。」

この前は侑士が日誌を書いてくれたから、今回は私が書く番

日直は廊下側に座ってる男女2人で、毎日交代で回っている

あんまり席替えをしないうちのクラスでは、日直の順番が月に1回は必ずやってくる

これが面倒だったりするんだけど、今隣は侑士だからいいかな なんて思ったりしてるんだけどね


いつもよりのんびりと日直をしている侑士を見て、少し疑問に思った事を口にした

「そういえば、部活はいいの?」

いつもは帰りのHRが終わると、私に一言くらい声かけたら、さっさと部活に行っちゃうのに

そんな私の質問にあっけらかんと返事した

「今日は休みやで?」

「・・・そっか、忘れてた。」

そういえば今日って水曜日だったっけ

そんな私の言葉に、侑士は呆れながらも小さく笑って、戸締りの確認の続きを始めた

戸締りといっても教室にある窓だけだから確認はすぐに終わってしまう

1分程度で日誌を書いていた私の元まで歩み寄ってきた

そして頭を悩ませている私に声をかけてきた

そして日誌と向き合っている私の前の席の椅子に、後ろ向きに座った

?どないしたん?」

「今日の数学・・・何やったっけ?」

「何や、覚えてへんの?」

「・・・・・だって」

言葉を濁すと侑士は、日誌貸しぃや と言って、自分の方に日誌を向けた

そして私が持っていたペンを半ば強引に奪うと、サラサラと今日の授業内容を書き始めた

ふぅん、今日はそんなことやったんだ・・・と、くいいるように見ていた


「そういやは午後の授業、ずっと寝てたなぁ。」

思い出し笑いしながら机に肘をついて顎を乗せた

そんな侑士の顔を見て、頬を膨らませる

「しょうがないじゃない、窓際なんだから。」

お昼食べて午後の授業って、丁度窓際に暖かい光が当たって気持ちいい

眠くなくても寝ちゃうんだよ

「・・・・理由が分からんわ。」

そう言って、また呆れたような顔をした

だったら侑士も窓際の席になってみたらいいのに!

そう言おうとした時、甘い匂いが私の鼻をくすぐった


「侑士、甘い匂いがする。・・・何か食べてるの?」

「ん?あぁ、さっき岳人から飴もろうてな、舐めてるんや。」

口の中でコロコロと飴の転がす音が聞こえる

「いいなー、私もちょうだい。」

丁度甘いもの食べたいなーって思ってたんだ

「ええで。何個かもろうたからまだ制服のポケットに入ってるはず・・・・・」

ジャケットのポケットをさぐって飴を探していたけど、一向に飴が出てくる気配がない

しばらくポケットを探っていた手がふと止まった

そして、何味だろう とわくわくしながら待ってる私に、侑士はこう言った

「あかん、今のが最後だったみたいや。」

「ずるいー、私も舐めたかった・・・・・」

もうない と言われると余計欲しくなる

いいなぁ・・・なんて口を尖らせながら小さく呟く

しょうがない、か

帰り道の途中で何か買って行こう


諦めて再び日誌に目を落としていると、頭上から侑士の声が聞こえた

「しゃーないな。」

・・・しょうがない?

そして、何かが砕ける音が聞こえた気がした

・・・・飴?

顔をあげた瞬間、侑士の顔が目の前に映った

何?と思った時には言葉を口にすることができなかった

「ゆうっ・・・・・・・・・・・」

いきなりのキスにびっくりして、顔を遠ざけようとしたけど、侑士がそれをさすまいと後頭部を押さえつけられて

角度を変えて何度も落とされる深いキス

そんな長く甘いキスを繰り返すうちに、だんだん息が乱れてきた

息をするために口を開くと、そこから小さな塊がころがってきた

途端に口いっぱいに甘いモノが広がる

侑士が舐めていた飴・・・・?

でも全部じゃない

一緒に小さな欠片も何個か口に入ってきた

わざわざ飴を半分に砕いてくれたんだ


それからしばらくして、名残惜しそうに唇が離された

「どうや、うまいか?」

「・・・・うん、おいしい。・・・・・いちご味だね。」

飴を半分ずつ分け合ったことで、いちごの甘い匂いがもっと広がった

「あぁ、これで半分こ・・・やな。

 こういう食べ方のが甘く感じる気がせぇへん?」

「そ、そんなことないよ。」

「そうか?」

少し拗ねながら、半分になった欠片を、また口の中で転がし始めた

そんな仕草に小さく笑う

さっきはとっさにあんなこと言ったけど、確かに侑士の言うとおり・・・・・



いつもと違う飴の食べ方

・・・こっちの方が甘くておいしいかもしれない








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こんな飴の食べ方もおいしいかもしれない・・・よ
 100のお題 : 44「半分こ」

        2005年 3月31日  茜