お願い もう少しだからがんばって!

そんな私の思いも虚しく、その日は訪れた










  
あなたと私の未来予想図2











今日の光景はずっと1日変わらないだろうな・・・・・・

なんて思いつつ、朝から休み時間毎に、入れ替わりに教室へ入ってくる女の子達の姿を目で追った

バレンタインよりはマシだと思うけど

あきらかにうちのクラス以外の子がたくさんいる

その子達の目的である周助の周りには、更にたくさんの女の子達で溢れていた

私と周助の席は結構近いけど、それでもここから周助の様子を覗き込まないと窺うことはできないくらい


「不二君、1日早いけどお誕生日おめでとう!!」

「おめでとーっvv」

「ありがとう。」


周助が少し圧倒されながらもいつもの笑顔で返事をすれば、女の子達は更にざわめきだす

そして黄色い声と共に、女の子達は可愛くラッピングされたプレゼントを差し出した

中にはサボテンを持ってきていた子もいた

前に周助がサボテン好きって言ってたのを覚えていたんだ

周助・・・・受け取るのかな?






少し前から付き合いだした周助のお誕生日は2月29日

閏年がこない限り、誕生日の当日にお祝いをしてあげることはできない

次にそれができるのはあと3年後・・・・・

だから、閏年が来ない今年は前日の28日にみんな周助の誕生日プレゼントを持ってくる

朝から周助の事を好きな人、憧れてる人などが続々と教室へ来てはプレゼントを手渡す所を見る

見る度に複雑な想いを抱えて・・・・・それでもそんな気持ちを口に出すことはない

周助を困らせることはしたくないから

女の子達が勝手に持ってくるだけだから、周助が悪いわけじゃない

そんなのは分かってる


私もプレゼントは持ってきて鞄に入ってるけど、この状況じゃ渡せないし・・・・・

一番におめでとうを言いたかったのに、それすらも言える状態じゃない

それどころか今日は、まだ周助とお話してない・・・・・・・・おめでとうも言ってないし

周助と喋りたくて近くまで行くんだけど、すぐに他の女の子が割り込んでくる

そして、プレゼントとは別に鞄の中に入っているサボテンを覗き込んだ

少し前に周助から預かった大切な大切なサボテン

もう少しで綺麗な花が咲きそうだったから、もし今日咲いたら渡したいと思って持ってきたんだけど・・・・・

まだ咲きそうにない


はぁ と深いため息をついて周助の席を見た

寂しいよ、こんなに近くにいるのにどうして会話すらできないの?

相変わらず女の子達がたくさんいて、周助本人の姿は見えない

そして聞こえてきたのは、こんな言葉

「悪いけど、プレゼントは受け取れない。ごめんね。」

柔らかい口調で、そう言ったのが聞こえた


周助・・・・・・

その瞬間、たくさんの女の子達の間から周助と目が会った

私の顔を見て、ニコッと笑う

周助を見ていると、席を立ってこっちへ近づいてきて、何かと思ったら私の手を取った

「あ、あの?」

急に周助がこんな行動にでて、どうしたんだろう?と思いながら声をかけた

私達が付き合ってる事は、誰にも言ってないから誰も知らないと思う

別に言いふらすことじゃないし・・・・・

周助のそんな行動を、女の子達は不思議そうにこっちを見ていた


「不二君!急にどうしたの!?」

「どうしてちゃんの手なんか・・・・!」

「どうしてプレゼント受け取ってくれないの!?」


周助が質問責めにされている間、私は一人おろおろしていた

周助ってば突然どうしたの?

2人の時はともかく、教室でこんな大胆な行動をとることなんてなかったのに

そんな中、周助はいつもの笑顔でこう、答えた

「『どうして?』 ・・・だって、彼女がいるのに、しかも彼女の前で他の人からのプレゼント受け取る人がいると思う?

 行こう、。」

「えっ、ちょっと・・・・・・」

唖然とする女の子達を背に、周助に手を引っ張られて2人で教室を抜け出した



















早歩きで連れてこられたのは屋上

今は2月ということもあって、人が1人もいなかった


「やっと抜け出せたよ。」

「周助らしくない・・・・どうしたの?急に。」

と2人の時間を過ごしたかったから・・・・っていう理由じゃダメ?

 今日は一言も喋ってなかったんだよ?」

そんなの僕には耐えられないよ なんてさらりと言ってくれるから、逆に私の方が恥ずかしくなって俯いた

気づいてたのかな・・・・・私の気持ちに

今日、ずっと寂しいと思ってた

こんなに近くにいるのにお喋りすらできない

たくさんの女の子達に囲まれている周助を見るたびに、胸が痛んだ

周助は優しいから自分のために来てくれた女の子をないがしろにできなかったんだと思う

それでもこうやって外へ連れ出してくれた事が今はすごく嬉しい




「周助・・・・・」

「どうしたの?」

「・・・・一緒にいたい。」

「今一緒にいるじゃない。」

「そうじゃなくって・・・・」

今も一緒にいるけど、今日放課後も一緒にいたいって意味で言ったのに・・・・・

少し困ったように言い返すと、クスッと笑われた

「嘘。ちゃんと分かってるよ。」

ポンポン と子供をあやすかのように優しく頭を叩かれ、話をつけ加える

「あの、ほんの少しの時間でいいの。それでもいいから・・・・・・」

きっと夜は周助の家では誕生日パーティーをするはずだから、遅くまで引き止められない

だけど、ほんの少しの時間だけでも一緒にいたいから

は僕と会うのは、ほんの少しの時間でいいの?」

「え?」

何を言ってるのか分からず、周助の顔を見上げる

「時間がある限りとずっと一緒にいたい・・・って思うのは僕だけなの?」

「私だってできればずっと一緒にいたいけど、家でもパーティーするんでしょ?」

「うん。家族みんなそういう事好きだから・・・・・。だからさ、も一緒にお祝いしてくれない?」

「そんな・・・・折角の家族のパーティーなのに私なんかが行って・・・・」

私も周助のことお祝いしたいけど、家族の中に私なんか混ざっちゃったら・・・・

と思い、言葉を続けようとしたのを周助が止めた

「今日は僕の誕生日でしょ?それを誰よりもに祝ってほしいんだよ。」

太陽よりも眩しい笑顔でそう言われて素直に返事をしてしまった

「私もお祝いしたい。」



















 *


「こんにちは。」

実は周助の家には何回か遊びに来ていて、お姉さんやお母さんともすっかり仲良くなっていた

由美子さんが玄関まで来て快く迎えてくれる

「あらちゃん、いらっしゃい。上がって。」

「お邪魔します。」




もうすぐ準備が終わるから と言って、今日はそのままリビングに通された

周助と私は2人で話をしていたけど、お母さんと由美子さんが忙しそうで、周助に『ちょっと待ってて。』と言ってキッチンへ向かった

「あの、お手伝いしますよ。」

「いいのよ、座ってて。」

申し訳なさそうに由美子さんを見ると、笑顔で話を続けた

「それにちゃんを私たちが独占していたら周助に睨まれそうだしね。」

「えっ?」

言ってる意味がすぐには分からず笑っている由美子さんに首を傾げていると、後ろから誰かに抱きしめられた

間違いなく周助の温もり

「今日は僕のお祝いだからね、はずっと僕の傍にいて。」

「しゅ、周助!!」

後ろから優しく抱きしめられながら耳元でそんな事を言われて、顔が真っ赤になるのが自分でも分かった

いきなり抱きしめられたのと、お姉さん達の前ということもあって、恥ずかしさでいっぱいになった

そんな私達を見て苦笑しながら由美子さんがボールに入った生地を混ぜ始めた

「ここはいいから周助の傍にいてあげてくれる?」

「は、はい・・・。」


しぶしぶと席に戻ると、キッチンから『本当に仲がいいわね〜』

なんて言う由美子さんとお母さんの声がして、また恥ずかしくなった

そんな私を周助は横で見ながらクスッと笑っていた













しばらくして、周助の誕生日パーティーが始まった

テーブルの上にはたくさんの料理が並んでいる

中央には大きなケーキ


「誕生日おめでとう、周助!」

「ありがとう。」



そこから始まって楽しく会話しているうちに、いつの間にか時間は午後9時を指していた

「あ、もうこんな時間!帰らないと・・・・・」

慌てて帰る支度をするけど、その動作はとても遅い

まだ・・・・・周助といたいから

それに・・・・・・・・・

鞄の中に入っているサボテンの様子を見ても、朝よりも蕾は膨らんできたものの、まだ咲いてはいなかった

今日渡したかったのに・・・・・



、今日泊まっていきなよ。」

「・・・・えっ!何、急に」

いきなり周助がそんな事を言い出すから、びっくりして声が大きくなってしまった

泊まっていきなよ・・・って言った??

いきなりの展開に頭がついていかなくて、返事に困っていた

「僕はまだといたいな、って思ったんだけど・・・・。帰るなら送っていくよ。」

私と同じことを考えてたの?

一緒にいたい それは私だっていつも思ってるよ

思ってるけど、言えなくて・・・・・・・


だけど、今日は少しだけ我侭、言ってもいいかな?

「私も、もっと周助と一緒にいたい・・・・・・・。」

「無理してない?」

「してないよ、でも・・・本当に泊まってもいいの?」

「もちろん。」

何よりも周助の誕生日の日にずっと一緒にいられることが嬉しい

『泊まっていきなよ』そんなことを言ってくれた周助に笑顔を返した













「お風呂、ありがとう。」

急に泊まることになっちゃったから何も用意なんてしてなくて、周助にパジャマを借りた

周助のパジャマは少し大きいけど、ふんわりと周助の匂いがする

まるで抱きしめられてる感じがして、それだけでも嬉しくなる

「ちゃんと温まった?」

「子供じゃないんだから。」

「クスッ。あ、髪の毛まだ濡れてる・・・・・」

普段では結構長風呂だから、人の家なのにそんなんじゃ悪いから急いで出てきたんだよね

少しだけドライヤーかけてきたけど、それでもまだ髪の毛はほんのり濡れていた

「こっちおいで?」

引き出しからドライヤーを取り出して、私に自分の元へ来るように催促する

私は、周助が手招きする前にちょこんと座り込んだ

とたんに暖かい風と共に周助の手が私の髪を撫でる

その仕草がとても気持ちよくて、思わず目を閉じた



「周助の手、気持ちいい。」

「そう?・・・・・の髪、柔らかくて好きだな」

独り言のように呟きながら、周助は私の髪を梳く

私はそのままだんだんと記憶がなくなっていって・・・・

いつの間にか眠っていた





目が覚めたらちょうど周助がお風呂から出た所だった

慌てて起き上がる

「ご、ごめん!私寝てた?」

「少しね。よく眠ってたから起こさないでいたんだ。」

いつの間にかベッドへ運ばれていて、周助が運んでくれたんだと分かった

「ごめんね・・・・。」


謝りながら周助を見ると、周助も髪が濡れているのに気がついた

「周助、来て?」

さっき髪の毛乾かしてくれたから、今度は私が周助の髪を乾かしてあげる

前から、周助の髪は綺麗でいいなーと思っていたけど、触ってみると、本当にサラサラで羨ましい

が気持ちいいって言ったの、分かるよ。」

「でしょ?」

やっぱり髪が短いとすぐに乾いちゃうもので、5分もかからずに乾いてしまった


「はい、もう乾いたよ。」

「もう・・・・終わりなの?」

「えっ・・・?」

もう終わりなの? って・・・・完璧に乾かしたのに、これ以上まだやるの?

と思ってドライヤーを片付けていた手を止めていたら、笑われた

「クスッ。冗談だよ。」

周助の言葉には驚かされることばっかり

周助も私の反応を見て楽しんでるみたいだけど、私にはまだ慣れていなくて、全て本気にとってしまう

そしてドキドキしちゃうんだ・・・・・・

周助は私のそんなキモチ、気づいてる?







「そうだ、に渡したいものがあるんだけど・・・・・」

と言って私に背を向けた状態で机の引き出しを開けていた

「なぁに?」

あ・・・渡したいものといえばっ

周助が私に背を向けているその隙に、私は自分の鞄に入っているサボテンの様子を窺う

「あっ!!」

「・・・どうしたの?」

急に大声だしたものだから、周助まで慌ててこっちを振り返り、私の元へ駆けつけた

「周助にどうしても渡したくて持ってきたんだけど・・・」

そう言って差し出したのは、サボテンの鉢植え

さっきまで蕾だったのが、今は綺麗な赤い花をつけて咲き誇っている

数ヶ月前に周助が預けてくれた大事な大事なサボテン




「咲いたんだ。」

周助も嬉しそうにサボテンを覗き込む

「うん、今日咲きそうだったから持ってきてたんだけど・・・・今日咲いてよかった。」

「おめでとう。がんばったね。」

「どうしても今日に渡したかったから・・・・・」

「大事に育ててくれていたんだね、ありがとう。」

「これ、もう1つの私からのプレゼント・・・。」

「もう1つ、って?」

これは周助が大切に育てていたサボテン

それを一時的に預かっていただけだから、普通だったらプレゼントとは言わないよね

だけどね、このサボテンは私にとって特別だから・・・・・

「あのね、このサボテンには私の想いがたくさん詰まってるの。」

周助の前だとなかなか自分の素直な気持ち、伝えることができないから・・・・・・

この想いが本気な分だけ照れちゃって恥ずかしいから


「・・・何かあるとこのサボテンに話しかけていたの。

 今日は周助がこんなことをしてくれた、とか 周助のこんな所がすごくかっこよかった、とか たくさん話しかけていたの。

 だからね、そのサボテンには私の周助に伝えたい想いがたくさん詰まってるの・・・・。」

まさか私がこんな事を言うとは思ってなかったんだと思う

周助はそんな私の言葉に驚きを隠せなかったみたいだけど、それはすぐに笑顔に変わった

「嬉しいな。でも、このサボテンは僕よりもの事をよく知ってるってことだよね。少し嫉妬、しちゃうかな。」

「確かに話しかけてはいたけど、それは全部周助のことだよ。それにね・・・・・」

周助が前に私に言ってくれた言葉

それを今度は私が周助に伝えるの

「それに、前に周助が言ってくれたでしょ?・・・『同じ時間を過ごしてほしかったから』

 私も周助に、同じ時間を過ごしてもらいたかったから。私の事をもっと知ってほしかったから・・・・・だからね・・・・・」

「ありがとう、最高の誕生日プレゼントだよ。」




「僕もに渡したいものがあるんだ。」

そう言って差し出されたのは、細長い箱

何だろう・・・?

「開けてみて?」

言われるがままにそっとリボンをほどくと、中からでてきたのは・・・・・


「綺麗・・・・・・・・」

アメジストのネックレス

思わず手にとった

けど、どうして私に?

今日は周助の誕生日なのに・・・・・・・

「僕がにあげたいと思ったんだ。」

「でも・・・・・・・」

これじゃあ私の方が周助に祝ってもらってるみたいじゃない

戸惑う私に周助が話をしてくれた

「これはね、真実の愛を守ってくれて、より絆を深めてくれるんだ。

 僕との絆を永遠のものにしたいから・・・・・。」

周助が近くにあった誕生石についての本をパラパラとめくって見せてくれた

2月の誕生石 アメジスト

言われるがままに読み進めていくと、確かに

『心を癒し、真実の愛を与えてくれる

 精神的なバランスを整え、才能を引き出してくれます。女性にとっては愛の守護石として恋愛運をアップしてくれます』

そしてもっと読み進めていくと、『なかなかできない、変われないという人にピッタリ』

これって・・・・・・・・・・


「つけてあげる。」

向き合いながら周助が腕を伸ばして、抱きしめられるような形で首にネックレスをつけてくれた

胸元でキラキラと光るアメジスト

「ありがとう・・・・嬉しい」

初めてもらったプレゼント

それも嬉しかったけど、何よりも周助の言葉が嬉しかった

『絆を永遠のものにしたい』

周助はいつでも想いをはっきりと私に伝えてくれる

それがとっても嬉しい

だからこそ、私も自分の想いを伝えようとするんだけど、どうしても素直に言葉が出てこない

想いは溢れているのに言葉にできないもどかしさ

いつもなら周助から預かったサボテンに話しかけるけど、今日は・・・・・・・

いつも恥ずかしくて自分からは言えない言葉を、サボテンにじゃなくて本人に素直な想いを伝えたい


時刻は午後11時59分・・・・・・・

日付が変わる瞬間に伝えたい言葉・・・・・

「周助・・・・・」

「どうしたの?」


「お誕生日、おめでとう。・・・・愛してるよ」


その時、丁度0時を回った

日付が変わる瞬間に訪れる一瞬の2月29日

本当は訪れるはずのないこの日、この一瞬をお祝いしたくて、一緒にいたくて・・・・・

周助も理由を察してくれたらしくて、私に微笑んでくれた

「僕も愛してるよ。」

そして手を優しく握りしめられながら周助の胸の中で目を閉じた



明日の朝、早く起きよう

そしてまだ眠っている周助の寝顔を見ながらそっと起こそう



目覚めて、最初に周助の瞳に映るのは、ずっと私でありますように―――












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周助さん!!Happy Birthday!!!

おめでとう〜vv 本当は29日なんだけど・・・・・。

そして『あなたと私の未来予想図』の続きにしてみました。

あのサボテン、ちゃんと育てられたの? という質問(?)をいただきまして(笑)

こんな感じだと思います☆

それにしてもお泊りって!!いいのかしら??


 2005.03.01   茜