「………は?」


 それは、氷帝学園で1番目立っている男、跡部景吾が学園内で最も発する言葉。







  
いつでもそばに







 体育倉庫の前で軽く溜息をつく景吾。

 そして少し開いていた扉に手を掛け、中へ入って行った。



 「!」



 「うわっ!あ………跡部かぁ、びっくりさせないでよ〜」

 

 そこには今まで探していた相手、生徒会副会長のの姿。



 は棚に並んでいるダンボールを下ろしている所だった。

 「何やってんだ、こんな所で。」

 「え、あ〜………運動会で使う物で見つからないのがあるって言われて、ちょっと探してたの。」

 「見つからない物?」

 「ハチマキとか色々細かい物がしまってあるダンボール。」

 「………委員の奴等は此処を探してねぇのかよ?」

 「ううん。ちゃんと探したって言ってたけど、一応確認してたの。ここが1番可能性高いから。」

 「1人でか?」

 「………うん。」

 この後何を言われるかを大体判っているは、そこで目を逸らした。

 「上の方のダンボールはどうする気だったんだ?」

 景吾の視線は、棚の上へ向けられていた。

 「あそこに足を掛ければ取れるかなぁ〜って。」

 は笑って誤魔化しながら首を傾げた。

 「……………」

 少し黙った後、今度は大きな溜息をつく景吾。 

 それを見ては少し頭を下げる。

 「ごめんなさい。」

 「別に謝ることねぇけど………いつも言ってんだろ?何かあったら行動する前に俺に知らせろって。」

 「うん。」

 「………何度言っても知らせに来ねぇけどな。」

 「………ごめんなさい。」

 「だから謝ることねぇけど………とにかく、何でも1人でやろうとするな。」

 「はい。」












 「〜、跡部がまた探してたで。」

 が教室に戻ると、すぐに忍足と向日が話し掛けてきた。

 「うん。さっき会ったよ。」

 「お前さ、どっか行く時は跡部に知らせて行けって言ってんじゃん。」

 「………あ〜、うん。」

 「特に生徒会の用事で動くなら、尚更言いに行けって。」

 「………うん。」

 向日の言葉には苦笑しながら答えた。



 「判ってへんなぁ〜、岳人。生徒会の用事やから言わんと行動しとるんやで。」



 「お、忍足くん!?」

 目を見開くを見て、ニヤッと笑う忍足。

 「どういう意味だよ、侑士。」

 「跡部は生徒会長とテニス部部長を兼任しとってめっちゃ大変やん。せやからは何でも1人でやろうとするんや。」

 「べっ、別にそういう訳じゃないってば!」

 「けど結局が何かやってる間って、跡部はのこと探し回ってるんだぜ。楽出来てねぇよな?」

 気にしている事を鋭くつっこまれて、は表情を曇らせた。

 「うん………あたしってそんなに信用されてないのかなぁ?常に心配されちゃってるし………」

 「………、それ素で言うてる?」

 今度は、忍足がの発言に目を見開いた。

 「だって副会長って会長を支える役割なのに、あたしって逆に助けられたりしてるし………」

 「……………」

 落ち込むを見て忍足は呆れた。

 「けどお前等って今までで1番凄い生徒会コンビって言われてるじゃん。」

 「それは跡部が凄いだけだよ。」

 「跡部だけやったら"コンビ"なんて言われへんって。まっ、すれ違いの多いコンビやけどな。」

 「………気を付けます。」












 その日の放課後、は資材室で探し物の続きをしていた。



 「ないなぁ〜………もう先輩ってば何処にしまったのかな〜?」

 ほとんど探し終わったが視線を向けるのは、棚の上にあるいくつかのダンボール。 

 の身長では踏み台に乗って更に背伸びをしないと取れない高さ。

 「……………」

 少し躊躇った後、それに手を伸ばした。

 「あ、あれ?」

 半分引っ張り出してみたものの、予想以上の重さに驚く。 

 しかし、もう元に戻す事も下ろす事も出来ない状態だった。

 「どうしよう………」



 その時、勢いよくドアが開いた。



 「!………ってお前、何やってんだよ!」

 

 いつものように現れた景吾だったが、の状況を見て驚いていた。

 「あ、跡部〜!助けて〜!」

 「はぁ!?」

 「動けない〜!」

 「ったく、だから何度も」

 文句を言いながら景吾が近付いた時、は安心したせいで無意識に少し力を抜いてしまった。

 その瞬間、バランスを崩して踏み台から足を滑らせた。





 「きゃあ!!」





 「!!」





 頭上にあった重い荷物が落ちてくると思い、は反射的にぎゅっと目を瞑った。 

 しかし、感じたのはぶつかる痛みではなく人の温もり。

 ゆっくり目を開けてみると、視界は薄暗かった。



 「ってぇ………」



 その小さな声で、そこが跡部の腕の中だと気付いた

 「跡部!大丈夫!?怪我は!?」

 「あぁ、大丈夫だ。」

 顔を上げて心配するの声を聞いて、景吾はホッとして抱きしめ直した。

 「ごめん!ごめんね!」

 「ったく、驚かせんなよ………」

 「ごめんなさい………」

 は謝りながら体を離そうとしたが、景吾は腕の力を緩めなかった。



 「………お前が何でも1人でやろうとする理由は、判ってるつもりだった。」



 「え?」

 「けどな、時々そうじゃねぇかもって思うこともある。……………

 「………なに?」





 「お前にとって、俺は………頼れない男なのか?」





 その質問に、はがばっと体を離して答えた。



 「違うよ!跡部は凄く頼れる人だよ!でも………皆が頼ってるから大変だと思って………あたしは出来る事は自分だけでやろうと………」



 景吾はの答えを聞いて肩を落とした。

 「お前………ホントに判ってねぇんだな。」

 「何を?」

 「忍足とか周りの奴等から、俺が何て言われてるか知らねぇのか?」

 「え?なんの話?」

 「………何でいつもお前を探してると思う?」

 「生徒会の用事。」

 「……………あのなぁ」

 「ん?」





 「俺が1番頼られたいのは、お前なんだよ。」





 「え?」

 「………忍足から聞いたんだけど、信用してない訳じゃねぇからな。1人で頑張ろうとするお前が気になって勝手に心配してるだけだ。」

 「……………」

 「俺に頼ろうとしないお前を、なんとか守りたいって勝手に思ってるだけだ。」

 「そ、それって……………」

 「こういう事には相当鈍いんだな、お前。」

 苦笑する景吾を見て、は少し俯いて訊き返した。



 「じゃ、じゃあ………跡部は、ちゃんと判ってるの?」



 「何をだ?」

 「さっき言ってた、あたしが何でも1人でやろうとする理由………」

 「部長と兼任してる俺の仕事を減らす為だろ?」

 「………それ、だけ?」

 躊躇いがちに呟く

 景吾は一瞬驚いたが、すぐにフッと笑った。





 「都合良くとってもいいんだな?」

 
 


 「………あたしも、さっきの都合よく受け取っていい?」





 互いの顔を見つめ合う2人。

 そして、ゆっくりと顔が近付く。





 返事の代わりに閉じられる瞳。





 そして、唇が重なった。















 「これからは1人で勝手に行動するんじゃねぇぞ。」

 「うん。」

 「生徒会のこと以外でも、何かあったらすぐに俺に頼れよな。」

 「うん。………跡部も何かあったら隠さないであたしに話してね。」

 「あぁ、わかった。」










沢村様からいただいた景吾さんの甘々ドリームvv

いつもヒロインを探してくれている景吾
ヒロインをかばう景吾
「かっこいい」の一言ですよ!!
「都合よくとってもいいんだな?」
なんて言われた日には
「はい、どうぞ!!」と即答してしまうほどかっこよかったですv

ニアピンだったのをご報告した所、書いてくださると言ってくださって・・・!!
こんな茜の我侭を聞いていただいた上に素敵なドリームを・・・。
本当にありがとうございました!!

これからも仲良くしてやってくださいませm(__)m