――だから俺は『心』という翼に『矜持』という蝋を固め空を飛ぶ。
■ イカロスの翼 ■
『蝋は溶け、糸は緩み、不実な翼に乗ったイカロスは、
手足を曲げ、髪を振り乱しながら大空の中をまっさかさまに落ちていった。
四散した羽は波間を漂い、嘆き悲しむネレイス達は海の墓を飾り、
青白いイカロスに真珠のような海の花を振り注ぎ、
大理石の死床には真紅の海藻を撒き散らし、
珊瑚の塔に弔いの鐘を打ち鳴らして、悲しみの音を海原遠く伝えた。
ダーヴィン』
誰かをこんなに好ましく思う気持ちを持つなんて以前の俺は想像もしなかった。
。
コイツに逢うまでは――…
俺が部室で雑務をこなしていると、
ひょっこりと部室に顔を出したのはだった。
「こんにちは〜忍足君いますか〜?」
最初は珍しいだけだった。
俺に媚びたりもせず、普通に対応してくる女なんて周りに居なかったからな。
後で気付いた。
簡単だ。眼力を使うまでもない。
俺達と忍足の前だと顔が違う。
自然に笑ってやがるんだ、は。
俺に媚びる必要なんかないよな。
コイツは忍足と付き合ってるんだから……
ソレを知った時少なからずショックだったのが驚きだぜ。
「忍足?いねーな。何だ待合わせかよ、直ぐ来るだろ。ココで待ってろよ」
「え?いいの?ありがとう!
――うわ〜跡部君って選択ギリシャ語なんだ。凄い、見てもいい?」
「ああ、授業で使ったんだよ」
誰もいない部室。
忍足に言われて来たと言うは俺の前に座り、無防備に投げ出した教本を開き呻いた。
「全然分かんない。何語…ってギリシャ語だよね〜。何て本?」
「ギリシャ神話の『イカロスの翼』だ」
「あ、知ってる!
昔ギリシャのイカロスが〜って歌のやつでしょう?
アレって神話だったんだ。知らなかった!コレってどういう話なの?」
「ま、簡単に言えば思慮分別のない愚かな男が、
父親の忠告を無視して自信過剰になって太陽に近付こうとして死んじまう馬鹿な話だ」
大分端折った説明だがは気にした風でもなく頷いた。
「忍足の奴は自信過剰な所が俺様にそっくりだとふざけた事抜かしやがったがな」
ったくよ…。
勿論その後すぐに忍足を走らせといたがな。
「全然跡部君とは違うよ!」
「アン?」
突然何言い出しやがるんだは……
「自信過剰ってのは力不足な人が程度を超えた自信を持つ事でしょ?
跡部君は自分を卑下もしないけど、誇大評価もしないから違うと思う」
コイツ……
「跡部君には油断も慢心もない。
私知ってるよ。
いつも試合前にはしっかり相手のVTR見て研究してるの
跡部君が強いのは努力してるからで――…あ、ゴメン」
一気に言い募った事を後悔するようには俯く。
まさかに見られているとは思わなかった。
「当たり前だろ。
試合に勝つ為に必要なのは運じゃねーんだ」
純然たる努力――自分への信頼が全てだ。
運など多少の物でしかない。
何では忍足と付き合ってるんだろうな。
何で俺じゃ駄目なんだろうな。
イカロスに似ているか……
フン。
あながち間違っちゃいねーな。
俺はという太陽を求めて空を飛び、俺の矜持は太陽に溶かされて海に堕ちる。
中々上手い事いうじゃなーか忍足よ。
さすが自称ロマンチストだな。
「そんなに忍足が好きかよ?」
つい口を吐いた言葉は思いの外教室に響いた。
何だよその目はよ――…
まるで俺に勘違いされたくないって言ってるようにも見えるぜ。
止めろよ。期待しちまうだろ?
「跡部君……?」
戸惑ったような。
俺はお前に何と言えばいい?
が好きだと言えばいいのか?
……言えねぇ。
俺の矜持がソレを許さねーよ。
「跡部君 ちがう…!違うよ」
矜持?
――愚かだな。
とっくの昔に俺の矜持などに溶かされてるのによ。
いいさ、俺から言おう。
お前にとどめを刺されて終焉を迎えるのも悪くない。
「好きだ」
「え?」
「が好きだ」
届かぬ想いでも、
心を伝えるくらいいいだろ?
「嘘……」
こんな嘘ついてもしょうがねーだろうが。
「嘘じゃねーよ。
お前には忍足がいるって知ってる。だからどうこうしようって訳じゃねーよ。心配すんな」
「…ッ!」
な、何だよ?
何で泣くんだ?
突然は座り込んで、顔を隠し泣き出した。
「オイ……」
別にを困らせたかった訳じゃねーんだが。
「違う!違うの……忍足君は友達だよ!
私は跡部君が――…!!」
まさか、お前も俺と同じ気持ちなのか?
俺ともあろうものがお前の気持ちを読み間違えるなんてな――
「期待、しちまってもいいのか?」
半分泣きつつも、コクリと頷くに俺はカッと赤くなるのを止められなかった。
「忍足のヤロウ……よくも騙しやがったな」
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「騙しとらへん〜
しかし まったく世話がやけんなぁ〜」
俺は岳人と一緒に部室の前で座り込んでいた。
ああ、天気がええな。
「違う!違うの……忍足君は友達だよ!
私は跡部君が――…!!」
「期待、しちまってもいいのか?」
部室の薄く開いた窓から漏れ聴こえる声。
よし、思惑通り上手くくっ付きよった。
さすが氷帝の天才 俺や!
大変やったんやで、跡部がいる時を狙ってを寄せるのは!!
ま、終わり良ければ全て良しやな。
「イイのかよ侑士」
不機嫌そうに岳人がこそっと声をかけて来た。
「何がや岳人」
「お前もの事好きだっただろ?」
「しゃーないやん。
二人とも両思いなんやで。は跡部跡部うるさいし」
付き合ってなかったが、傍目(跡部から見たら)付き合うてるようにみえてたんやろ?
知っとるで。
跡部がごっつ怖い顔で俺を睨んどってたしな。俺は怖くてしゃーないやん?
はで跡部の事ばっか聞きよるし。
切ないで〜。
「ま、今回は跡部に譲ったる。
ただなぁ、もし跡部がを泣かせたら次は掻っ攫うで」
ま、あの様子じゃそんな事も起こりそうもなさそうやけどな。
俺が諦めたんやからせめて自分らに幸せになってもらわんとワリに合わんからな。
頼むで。
あとがき?
強制終了!!!
書いても書いても書いても書いても(以下エンドレス)終わらないので半端ですが、許して下さい!
続きは茜さんの心の中でイロイロしちゃってください!(笑)
『Sweet Lip』の茜さんに捧げ物です!
『跡部景吾』がリクエストだったんですが……偽者です。
どうしましょうかコレ。
3日に素敵な周助さんを頂いたのですが、割に合わない出来です。
返品は勿論可なのでお気軽に『いらねーよこんな駄文。アーン?』と仰って下さい!(笑)
大変ヘタレな跡部ですが捧げさせて頂きます。
これからもヨロシクお付き合いお願いします!
2005/4/16
笑子さんから頂いた景吾さんドリでした。
きゃ〜っvv
読み終わった時には、もう笑子さんの景吾にメロメロでした!
景吾分からないと言ってましたが、笑子さんの景吾はとっても景吾っぽくてかっこよかったですv
無理言ってしまって申し訳ありませんでした・・・。
届かぬ想いでも・・・って!
私はいつでも景吾さんの事を考えてますって!!
この続きは私の頭の中でイロイロしちゃいますね(笑)
笑子さんvこんな素敵な景吾さんをありがとうございました!!