クリスマスは少しハプニングがあったけど、何とか景吾と一緒に過ごせた

だけど、今度の月曜日だけはできれば一緒にいたくなかった

だってその日は・・・・・・・・











      
毎日だって会いたいよ 〜いろいろな恋のカタチ〜











お昼休みの景吾との電話

これは今では日課になっていて、今日もいつものように教室で何気ない会話をしていた

、14日学校終わったら氷帝に来い。」

いきなり話題が変わったかと思ったら・・・・・・

「・・・・嫌」

迷うことなく断ると、あからさまに不機嫌な声になる

「お前、その日が何の日か知ってて言ってんだろうな?」

「知ってるから言ってるの。私は行かないからね。」

去年のクリスマス前にも似たような会話をしていた

本当、自分でも成長してないな と思うけど・・・・・・・

そして今回も、隣の席の不二君に笑われていた

会話は聞き取れなくても、私の喋ってることで、だいたいの事が分かっているみたい

「いいから来いよ。」

「嫌だってば。14日だって部活あるし・・・・・・」

たとえバレンタインでも、いつものように部活はある

ただ、いつも通り練習ができるかどうかはまた別だけど・・・・・

「そうかよ。じゃあな。」

私の返事を聞いてますます不機嫌なまま、そう言われ

次に聞こえてきたのは景吾の声じゃなく、ツー という電子音

はぁ と1つ大きなため息をついた



クリスマスにイルミネーションが華やかだった街中は、今ではピンクや赤といった、いわゆる『バレンタイン』へと変わっていた

恋人と過ごす3大イベントの1つ バレンタイン

だけど、私はあんまり嬉しくない





「跡部から?」

携帯をしまって席につくと、不二君が声をかけてきた

「・・・うん。」

「14日会わないの?」

「分からない・・・・部活だってあるし。」

「そうだけど毎年その日は部活にならなくて、すぐ練習終わっちゃうじゃない。」

確かに去年のバレンタインも女の子がすごくて、手塚君が注意しても、それは『かっこいい』という悲鳴に変わるだけで・・・・・

結局部活なんてできずに終わってしまった

きっと今年もそうなるとは思うけど・・・・・・

「でも、マネージャーにはいろいろやることがあるから・・・・」

そう言うと、私の横で不二君がクスッと笑っていた










景吾は私の気持ちなんて全然分かってない

本当は会いたい

毎日だって会いたいんだから・・・・・

だけど、私は青学テニス部のマネージャー

景吾は氷帝のテニス部

どっちも強豪といわれている学校だから部活が休みなんてほとんどない

違う学校っていうだけでも不安ばっかりの毎日なのに・・・・・

その上、氷帝へ行って景吾がチョコをもらう姿を見学してろとでも言うわけ?


景吾が女の子に囲まれている姿

そんな所を見て、私が平然としていられると思ってるの?

きっと14日は、1日中景吾の周りに女の子が絶えないと思う

私達が出逢った頃だって・・・・・


私達が初めて逢ったのはテニスの試合会場

試合会場といっても、何校か集まっての練習試合だったんだけど・・・・

その時も練習試合なのに景吾の応援をしに来ていた子とかもいたし

景吾の声援がコート中に響き渡ってすごかった

あの時はただ呆気にとられていたけど・・・・・・・

景吾のことだから、絶対たくさんもらうんだろう ということは簡単に想像がつく

景吾が他の女の子にもらってる所なんて見たくないから、その日は氷帝に行きたくないって言ったのに・・・・・・

どうしてそういう日に限って呼ぶの?


でも、そんな事を思っていても景吾にチョコをあげたい

いつ渡せばいいんだろう・・・・・・

しかもさっき怒ってた、よね?

どうしよう・・・・・・・・・

バレンタインが近づく度に悩みは増えていった











それからしばらくして、学校の帰り道


あれから景吾と連絡を取ってない

前にあんな形で電話切っちゃったし、電話しずらい

とうてい、氷帝になんて顔出せるわけない


そして、あんまり見ないようにしていたけど、いやでも目につくお菓子屋さん

たくさんのチョコレートをショーウインドウ越しに眺める

やっぱりあげたいという気持ちはあるから

つい足を向けてしまう

足を一歩踏み入れると、たちまち甘い匂いに包まれる

たくさんの女の子がいる中、景吾が食べられそうなチョコを探した

甘いものが苦手だって言ってたから、ビターな感じのがいいかな?

1つ手に取ってレジへと並んでいた時、違うチョコが目についた

あ、これ景吾にいいかも・・・・・

でも大丈夫かな?

なんて思いながらも、後から目についたものを景吾のあげることにした






















 2月14日 バレンタインデー当日


今日は朝から女の子達の気合が入っていて、すごい

朝練は時間が早いから、まだ女の子達があんまり来てなくて練習できたけど・・・・・・・・

放課後は、部活なんてとても出来るような状態じゃなかった

コートの周りを女の子が囲うように立っている

いつもの倍以上かもしれない・・・・・・

もちろん目当てはレギュラーの人達

教室でも今日は凄かったし・・・・・

特に私は不二君の隣の席だから、休み時間毎にたくさんの女の子が不二君の元へ訪れてはチョコを置いていく

これには不二君も少し困った顔をしてたっけ





「・・・・これ、部活できるのかにゃ?」

「さぁ?どうだろうね・・・・・」

そんな会話をしながら英二君と一緒に部室を出た瞬間、英二君の周りに数え切れないくらいの女の子が集まった

それにはただ呆気にとられてしまう

本当に部活・・・・できるの?


毎年のことながら、こんな状態では部活ができないと 今日の練習は中止になった

それでも私は、自分のクラスで足りないもののチェックや部誌に目を通していた

でも気になるのは景吾のこと・・・・・・・

あれから連絡とってないけど

会いたい・・・・・・

電話ではあんなこと言ったけど、やっぱり景吾にチョコ渡したい

いろんな子からもらってるとしても・・・・私のも受け取ってほしい

・・・・・受け取ってくれる?

電話をかけようとして、携帯を持つ手が微かに震える



もし、電話に出てくれなかったら?

私のチョコなんていらないって言われたら?

・・・・・会いたくないって・・・・・言われたら・・・・・・・・・

そんな想いが重なってどうしても通話ボタンを押す事ができずに躊躇った




その時、携帯からバイブの振動が伝わってきた

それは紛れもなく私の携帯から

ディスプレイを覗きこむと、そこには跡部 景吾の文字



「・・・・・・

「景吾・・・・いま、どこ?・・・部活は?」

「あったが、休みになった。」

あえて聞かなかったけど、理由はたぶんうちと同じだと思う

「そうなんだ・・・。まだ学校?」

「もう家だ。」

「じゃあ今から・・・行ってもいい?」

「いや、来なくていい。」

『来なくていい』と言われてショックだった

会いたく・・・・ないの?

「ど・・・して?」

自然にしてるつもりなのに、声が震える

そしたら景吾が呆れたような声を出した

「俺が迎えに行くから、そこでおとなしくしていろ。」

「・・・・え?ちょっ・・・・・・」

一方的にそう言うと、私の返事を待たずに電話を切っていた

景吾が迎えに来てくれるの?

それにしても、そこって・・・・・どこ?

とりあえず今は教室にいるから、ここで待ってればいいのかな?

外で景吾が来るのを待っていた方がいいかな とも思ったけど、まだ2月だし外は寒い

とりあえずメールしとこ

『学校に着く少し前に連絡ちょうだい』

メールを送信して教室で大人しく待っていた











しばらくした頃、外から女子達の悲鳴にも似た叫びが聞こえてきた

な、何?

気になって、教室の窓から外を覗くと、たくさんの女の子が校舎の方を見ながら騒いでいた

・・・・何があったの?

テニス部のレギュラーでもいたのかな?

私が首を傾げていると、再び携帯の着信音が鳴り響いた

慌てて通話ボタンを押す


「――もしもしっ、景吾?」

「お前、どこにいるんだよ。」

「教室・・・・。」

「何組だ?」

何で急にそんな事を聞くのか疑問に思ったけど、とりあえず答えておいた

「6組だけど・・・・・どうして?もう着いたの?」

「あぁ・・・・・・・」

「うそっ、着く前に連絡してってメールしたのに・・・・・外にいる?」

「いや・・・・・」

「・・・・・?」

景吾の声が聞こえなくなって不思議に思っていたら、廊下から誰かの靴音が聞こえてきた

ヤバイ、誰か来る・・・

先生かも・・・・・・








ガラッ


教室のドアが開いた瞬間、私が目にしたのは大好きな景吾の姿―――

「け・・・・・いご?」

久しぶりに見る彼の姿

でも、どうしてここにいるの??

だけどまさかこんな所で会えるとは思ってなくて、放心状態になる

景吾は、そんな私を笑っていた

「なに、間抜け面してんだよ。迎えに来てやったぜ?お姫様?」

そう言うと、ツカツカと私の方へと歩いてくる

「ちょっと・・・・・・どうして校舎の中まで入って来て・・・しかも私服だし!! 先生に見つかったら怒られるよ!!」

「あーん?迎えに行くって言っただろうが。」

「っ・・・・それは聞いたけど・・・・・・。」

「とにかく話は後だ。行くぞ。」

話を中断され、景吾に手を引っ張られながら校舎内を走りだした




もう放課後だけど、校舎内に生徒がまったくいないというわけではない

下へ降りるまでに何人かの生徒とすれ違った

そして景吾の姿を見るなり、女子達の視線は景吾に釘付けになる

さっきの悲鳴は景吾が正面入り口から入ってきたからだったのね・・・・・・

やっとさっきの女の子達の悲鳴の謎が解けた


「このまま表から出るとまた女の子達が大騒ぎするよ!?どうするの?」

「それなら裏口から出るまでだろ。」

そう言って、私の手を引っ張ったまま、正面入り口の手前で曲がっていった

「どーして景吾がうちの学校の裏口なんて知ってるのよ!そもそも、どうして私のクラスが分かったの?」

「うるせぇな。青学には何回か練習試合に来てるだろうが。」

確かにライバル校で、うちに一番来てるのは氷帝だと思うけど

校舎の中まで入ってきたことなんてあったっけ・・・・・?


小さな疑問を抱えつつ、景吾が呼んでいた車に飛び乗って景吾の家に向かった















景吾の家に着いてからも、さっきの事を悩んでいた

「もうっ。もっと早く連絡くれれば外まで出て行ったのに!明日どうしよう・・・・・・」

絶対みんなに言われるよ・・・・・・

「だったら外で待ってればよかったじゃねぇか。」

「だって寒いんだもん。」

「俺様が教室まで出向いてやったんだ。ありがたく思えよ。」

「・・・・はいはい。」

まぁ、いっか

明日考えようっと




「あ、それとね・・・・・・・これ」

鞄から綺麗にラッピングされた包みを取り出して景吾に渡した

「チョコレート、か。」

「ウイスキーボンボンなんだけど・・・・・甘いの苦手って言ってたから、これなら平気かなって思って・・・・」

「へぇ。」

「・・・・・・受け取って、くれる?」

「あぁ、ありがたく受け取っとくぜ。」

嬉しそうに笑う景吾を見て、内心ホッとした

そしてこの状況を見て嬉しくなった




「やっぱり家で渡せてよかった。」

「何でだよ。」

「だって、私服姿の景吾にチョコを渡したのって、きっと私だけでしょう? 氷帝でたくさんもらっていたとしても・・・・・。」

ニコッと笑ったけど、やっぱりたくさん貰ったのかな、と思いたくないのに、どうしても考えてしまう

そんな私の考えを読み取ったのか、景吾が小さくため息をつきながら足を組んだ


、何か勘違いしてねぇか?」

「・・・・え?」

「部屋、見てみろよ。」

そう言われて景吾の広い部屋を見渡すと・・・・・

椅子の上に置かれた鞄と制服のジャケット

いつもと変わらない部屋

「あ、あれ?」

荷物、いつもと変わらない・・・・?

景吾なら絶対にたくさんチョコを受け取ってるはずだから、この部屋はチョコが入った包みの山だと思ったんだけど・・・・

「景吾、荷物ってこれだけ?」

「当たり前だ。」

「・・・・・・ど、して?」

「今年はチョコなんて1つも受け取ってねぇからな。」

「嘘・・・・・・」

信じられない

甘いものが苦手っていうのもあるのかもしれないけど、あの景吾がチョコを1つも受け取らなかったなんて・・・・・・

「嘘じゃねぇよ。それにどこでもらったって、のだけは特別なんだよ。そんな事も分かんねぇのか?」

「だって・・・・・・・。」



私が俯いていると、景吾が口の端を持ち上げて笑った

何か・・・・嫌な予感

こういう時の直感というものは何気に当たるもので、景吾がとんでもないことを言ってきた

「それで? このチョコが食わせてくれんだろ?」

「・・・・は?」

いつものことながら、景吾の突然の発言に一瞬、間の抜けた顔をした

「『は?』じゃねぇよ。誰のために、今日1日中チョコを持ってくる奴らを全員断ったと思ってんだよ。」

・・・・確かに景吾にチョコを渡す人はたくさんいたと思う

それを全員断った

そんなことしてくれるなんて思ってなかったから、嬉しくてたまらない

「今日だけ・・・・・だからね。」

顔を赤くしながらも、今日くらいは景吾のわがままに付き合ってあげようかな なんて思った



景吾に渡した包みを開けてチョコを1つつまんだ

「まさかこれくらいじゃ酔わないわよね?」

景吾なら大丈夫だと思うけど、一応お酒が入ってるからね

「さぁな、が食わせてくれんなら酔うかもな。」

嬉しそうに口元を上げながら笑う景吾

てっきり『俺様を誰だと思ってんだ?そんなもんで酔うわけねぇだろ』とか言うと思ってたのに・・・・・

そんなことを言うから、つい私も口走ってしまった

「じゃあ、酔ってみる?」

「上等だな・・・・・・来いよ。」

そうは言っても、ただチョコを食べさせてあげるだけだし・・・・・

と思った私が間違いでした

手にしたチョコを景吾の口元へ持っていって、口の中へ入れた

そして私の手からチョコが離れたと同時に、後頭部を抑えられて景吾のもとへと近づけられた

「ちょ・・・んっ・・・・・・・」

急に景吾の方へ引っ張られたから、思わずバランスを崩す

それを景吾がうまく支えて、そのままそっと押し倒された

何、急に!? と、言おうとしたら、そこから今景吾が口に入れたチョコが私の方へと渡された

チョコ特有のほろ苦さと、ウイスキーのとろける甘さが口の中に広がる

甘いものがあまり好きじゃない景吾に合わせて買ったウイスキーボンボン

それは私には少し苦い

私もチョコを味わった頃、やっと唇が離された

そして息を切らせる私に満足した顔で景吾が言った

「食わせるならこれくらいしろよな。」

その言葉に何も言えず、顔を赤くしながら乱れた息を整えていた






「景吾の、馬鹿・・・・・」

急にキスなんてするんだもん びっくりするじゃない

「あーん?まさかこれで終わりだと思ってるんじゃねぇだろうな?」

そんなことを言われて、目を見開いた

「・・・・まだ食べるの?」

「俺様を酔わせたいんだろ?こんなんじゃ、まだまだ酔わねぇぜ?

 それに、今のはお前がほとんど食っちまっただろうが。俺にも食わせろよ。」

『食わせろ』それはつまり・・・・・私からキスしろ、と?

「景吾・・・甘いもの好きじゃないんでしょ?無理しなくていいんだよ?」

少し逃げ腰になっていた私の肩をぐっと抱いて、同時に顎を軽く掴まれた

そして私の耳元でこう、囁いた

「分かってねぇな。こういう甘いのならいくらでもいけるんだよ。

 それにのは特別、なんだろ?」




こうなっては今日は家に帰れないかな なんて思いながら

でも、たまにはこんな日があってもいいよね?













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バレキス、第4弾は景吾でvv

景吾は一番初めか最後に書こうと思ってましたが、待ちきれずに書いてしまいました(笑)

読んでいただければ分かると思いますが自分のサイトにある

「いろいろな恋のカタチ」の設定です。

そのうち、2人の出逢いも書こうと思っておりますのでvv


 2月10日  茜