11月ももう下旬に近づく頃
街の所々では、もうクリスマスの為のイルミネーションが輝きを見せる季節
これから寒いけど、楽しい季節がやってくる
ですが、みなさま、風邪には十分注意しましょう
How to cure cold
いつの間にか、頬に突き刺さるような冷たい風が吹くようになって 日々寒さが増してくる
もう冬なんだなぁ と嫌でも実感させられてしまう
冬は大の苦手
朝は布団から中々出られずに、悪戦苦闘の毎日
「寒いよぉ〜!!」
コートのポケットに手を突っ込んで、いつもよりも足早に学校を目指す
寝坊しちゃったよ〜! アイツ怒ってるかな?
毎日のようにあるテニス部の朝練を、少しでも覗いていこうと登校時間よりも早めに家を出る習慣にも、もう慣れたけど
やっぱり冬の季節は辛い
でも私よりがんばってる人はたくさんいるんだから、そんな事ばっか言っていられない
「、今日は遅ぇな!どうしたんだ?」
走ってテニス部のコートまで駆けつけたけど、それも虚しく、練習は終了していた
がっくりと肩を落とした私に声をかけてきたのは、すでに制服に着替え終わっている宍戸だった
「宍戸、おはよう。もう寒くてさ〜布団から中々出れなくてっ・・・!!」
「お前、今から寒いなんて言ってて、冬はこれからなのに大丈夫かよ?」
「・・・・あんまり自信はない。」
「・・・ま、いいけど。跡部ならもうでてくると思うからよ。」
「ありがと。」
じゃあな と呟いてさっさと校舎まで走っていってしまった
私が景吾と付き合いだしてから、いつものように来てるテニス部に、今ではみんな違和感はないみたい
むしろ私が顔を出さない日の方が、後でみんなからいろいろ言われる
「ちゃん。おはよぉ〜!今日は練習見に来てなかったね〜?」
部室の周りをうろうろしてたら、部室から出てきたジロちゃんに声をかけられた
やっぱりみんな同じ事聞いてくるのね・・・・
心の中で苦笑しながら、宍戸に返した返事と同じように答えた
「おはよ〜!今日は寒くて中々・・・・。」
「今日ね跡部の様子が少しおかしかったんだけど、ちゃんが来てないせいだったんだ。」
「・・・景吾の様子がおかしい?」
私はその意味が分からず、首を傾げた
どういう事だろう・・・ と思っていたらジロちゃんが話を続けた
「ちゃんのこと大好きなんだね、跡部は。」
「えっ・・・。」
「もう部室は跡部以外いないから入っても大丈夫だよv」
「もう〜っ、ジロちゃん!」
「じゃ〜またね。」
ニコニコと笑って言うジロちゃん
ジロちゃんの言葉に思わず顔が赤くなる
そんな私をからかいながら、逃げるように駆けていった
はぁ〜 と、1つ小さなため息をついて、そのまま部室の近くで景吾を待っていた
それから15分くらい経った頃
・・・いくらなんでも遅いよね・・・・
部長である景吾は部室の鍵を閉めなきゃいけないからいつも最後に出てくるけど、それでもいつもはこんなに時間かからない
私が今日来てると思ってないからゆっくりしてるのかな?
・・・それにしても遅すぎるもんね
景吾の様子が気になり始めた時、ふとジロちゃんに言われた事を思い出した
・・・・そういえば、もう景吾以外いないんだよね?
少し躊躇いながらも、部室のドアを少し開けておそるおそる顔だけ覗かせて声をかけた
「・・・景吾?」
でも返事がない・・・・
奥の部屋にいるのかな?
もう少し部室に足を踏み入れてもう一度声をかけようとしたら、一番奥にある大きなソファーでジャージのまま横になっている景吾を見つけた
「景吾!?」
思わず慌てて駆け寄った
もしかして怪我したの? ・・・なんて嫌な事が頭をよぎる
「・・・・・?」
私の声で起きたのか、ダルそうに体を起こした
「景吾、どうしたの!?」
「見てわかんねぇのか?・・・寝てたんだよ。」
「・・・景吾が?ここで?」
思わず景吾の言葉に耳を疑った
信じられない
いつもどんなに退屈な授業でも人に寝顔なんて見せない
学校でなんて寝られるか!って言ってたのに・・・・
「最近寝不足だったから、少しここで仮眠でもとっとこうと思ってよ。」
そうなんだ・・・・・
「保健室でも行って寝てれば?」
「別にいい。もう大分楽になった。」
・・・・本当かな?
と不安げに景吾を見ていたら、ゆっくりと立ち上がって私を見下ろした
「それより、お前ここにいる気か?」
「へっ?」
ずいぶん大胆になったもんだな なんて笑ってる景吾の横で、何の話をしてるのか分からず聞き返した
「俺、着替えるんだけど・・・お前がその気なら別にいいぜ?」
「何がっ!!外で待ってるから早く着替えてよねっ!!」
「あぁ。」
私の反応を、面白そうに笑う景吾を見て少し安心した
普段景吾が学校で寝るなんてことないから少しびっくりしたけど
本当に少し眠かっただけなんだ
お昼休み
いつものように、テニス部のみんなと部室でご飯を食べた後の運動に、軽くテニスをやるのも日課になっていた
無駄に広い部室でご飯を食べている間、私はいつも以上に景吾に目が釘付けだった
そしてテニスをしている今も・・・・
絶対変・・・・今日の景吾
普通に振舞ってるつもりだろうけど、いつもと動きが違うし・・・・
そういえば朝は寝てたし
普段の景吾なら人が来るかもしれない所では絶対寝ないのに
授業中もボーっとして聞いてないみたいだったし・・・・
・・・・・もしかしてっ!!
「景吾っ!!」
宍戸と1ゲーム終わってタオルで汗を拭いている手を止めて、無理やり顔をこっちに向けた
「・・・何だよ?」
「景吾・・・・熱あるでしょ?」
一瞬驚いた顔をしたのを私は見逃さなかった
それでも強く否定してくる
「は? ねぇよ、そんなもん。」
「あのねぇ・・・・。」
しきりに『触るな』と言う言葉を無視して、景吾の額に手を当てて思わずうなだれる
手で触っただけでいつもより体温が高いのが分かるのに、熱がないなんてよく言えるわ
「宍戸、ちょっとごめんね。」
「あ、あぁ。」
宍戸の返事を背中越しに聞きながら、景吾の腕を引っ張って急かした
「おい、・・・・」
景吾は意地でもテニスコートから離れようとしない
それでも、無理やり腕を引っ張って部室へと連れて行った
「景吾のバカっ!」
「馬鹿に馬鹿なんて言われたくねぇな。」
常備している救急箱の中から体温計を出して、嫌がる景吾に無理やり計らせた
いつもなら馬鹿と言われて、ムカついていろいろ言い返すけど今はそれどころじゃない
頬が微かに赤く染まって息も荒い
今考えると、朝にジロちゃんが言ってた『跡部の様子が少しおかしかった』っていうのは、きっと体調がおかしかったんだ
という事は朝から熱はあったって事だよね
なのに部活なんてして、授業にも出て・・・・・
こんなに辛そうなのに、今まで気づかなかった 何もできなかった自分に苛立ちをも感じた
体温は38℃
「何でこんなになるまで我慢するのよ・・・・」
心配させないでよ・・・・
「監督に言ってきたから、もう帰ろ?」
「別にいい。放課後も部活がある・・・・・」
立ち上がろうとした景吾の足がもつれて、よろけた
慌てて支える
今は部活じゃないでしょ!
自分の体がどうなってもいいの!?と叫びたくなる
「もうっ、立ってるのもやっとなのに、まだ部活する気?今日はもう帰るの!」
「・・・・・あぁ。」
やっとの事で頷いて折れてくれた
景吾も相当辛いはず
すぐに迎えの車が来て、景吾を乗せた
もちろん私も心配でついていった
こんな弱った景吾を見るのは初めてで、家に戻って景吾が眠ってからもずっと傍についていた
「・・・・?」
景吾が目覚めたのは、もう夕方だった
結局、景吾が心配でそのまま学校も部活もサボっちゃった
「あ、気がついた?」
「・・・悪かったな。」
景吾が謝るなんて、珍しい事もあるもんだなぁ と思いながらも、口にすると機嫌が悪くなるから、景吾の言葉を素直に受け止めた
景吾の額に手を当てて、自分の体温と比べてみる
「よかった、熱大分引いたみたい。」
さっきよりも大分顔色よくなったし、今日一日寝てれば平気そう
「今日・・・・どうして学校来たの?」
・・・・朝から体調悪いならどうして休まなかったんだろう
ふと疑問に思った事を聞いてみた
「・・・そんなのも分かんねぇのか。」
「どーせ、部活がしたかったんでしょ?」
本当にうちのテニス部はテニス馬鹿ばっかりなんだから・・・
ため息混じりにそう答えた
絶対そうだと思ってたから
でもそれはすぐに否定された
「・・・そうじゃねーよ。」
「じゃあ何?」
他に答えが思い当たらない私は、黙って答えを聞いていた
「俺が風邪引いたなんて、知られたら格好悪ぃじゃねぇかよ。」
「・・・・あ、そう。」
それを聞いて、心配した自分が少し馬鹿らしく思えた
格好悪いって・・・景吾だって人間なんだから風邪くらい引くのに、それのどこが格好悪いんだろう・・・
私はそう思ってても、昔から他人には決して弱みを見せない景吾にとってみれば、風邪を引くことは格好悪いのかな
「それに・・・・・」
「・・・・・?」
「少しでもに会いたかったんだよ。・・・・悪ぃか?」
「景吾・・・・・。」
思ってもみなかった答え
時折、ほんの少し私だけに見せる景吾のこんな無防備な心に
彼への想いが更に募っていく
「ね、キッチン少し借りていい?」
私は思い出したように景吾に問いかけた
「何するんだ?」
「風邪に効く飲み物作ってあげるから待ってて?」
いそいそとキッチンへ足を運んで、景吾が寝てる間に買ってきた生姜と蜂蜜を出した
生姜をおろして、マグカップを取り出しその中に生姜の絞り汁を入れて、備え付けてあるポットのお湯を注ぎ込んで
そして、蜂蜜をスプーンで3杯入れ、溶かしたら出来上がり
「・・・何だこれ。」
手に取ったカップを指して、露骨に嫌な顔をする景吾に苦笑しながら説明する
「生姜湯だよ。風邪引くと、よくお母さんが作ってくれるの。効果は抜群だよ。」
しばらく飲むのに戸惑ったような顔をしたが、ゆっくりとカップに口を近づけた
「・・・・少し甘ぇんじゃねぇか?」
一口飲んだところで、そう言われてコップを差し出される
何、味を確認しろって事?
景吾、甘いの苦手だから蜂蜜少なめにしたんだけどな・・・
「甘かった?蜂蜜入れすぎたかな・・・。」
景吾に渡されたカップを受け取り、カップを口に近づける
カップからはほんのり生姜の匂いが鼻をくすぐった
そして一口口に含むと、蜂蜜の甘さが口の中に広がっていく
・・・・私は丁度いいんだけどな
「おい、。」
「なに・・・・・んっ。」
突然話しかけられて、カップから口を離して顔を上げた
耳元で囁かれる甘い声と同時に、ふわっと香る景吾の香りと温かい感触
それは紛れもなく景吾の唇
分かったとたん、景吾は更に深く口付けていく
「やっぱ甘ぇ。」
名残惜しそうに唇が離されて、景吾が呟いた
それでも抱きしめた体は離してはくれない
「もうっ。風邪うつったらどうするのよ?」
「そしたら俺が看病してやるよ。つきっきりでな。」
「・・・・・・・。」
ニヤッと笑う景吾を見て、思わず身を引いた
「とりあえず早く治してよね。」
「あぁ・・・・。」
景吾、早く元気になってねv
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跡部さん夢でした☆
何か弱々しい景吾さんになってしまいましたが・・・いいんでしょうか?
景吾さんの風邪を癒してあげたいが為に書いてしまいました(汗)
もう冬ですね〜。みなさま、風邪を引かないようにお気をつけください。
もし風邪を引いてしまいましたら、生姜湯は効きますよv
あんまりお世話になりたくはないですが(笑)
2004年11月21日 茜