Memorial Day







はぁ〜・・・・・


教室に入ったとたんに盛大なため息をつき、トボトボと自分の席に向かった

〜、おはよ〜!!」

席に着いて窓越しに空を眺めていた所へ、私と同じクラスのジローが駆け寄ってきた

「あ、ジロー。おはよぉ・・・・・。」

「何?その気のない挨拶は。」

「ちょっと悩み事・・・・」

「それは知ってる。どうせ跡部の事でしょ?」

「どうして分かるの?」

「どうして・・・って。 それ。」

「それ」と言われて、右手を指指された

思わず自分の右手を見る

「右手で自分の髪の毛絡めるの。が悩んでる時いつもやってる。」

「・・・・ジローにはお見通しだね。」

「当ったり前だC〜」

「そうだよね・・・。」

1年の時、一番最初にできた友達がジローだった

今でも男友達の中ではジローが一番仲がいいんだ

「で、が悩むって言ったら跡部の事しかないでしょ?」

ニコっと笑って座っている私を見下ろすジロー

かわいい顔してジローにはしっかりバレてるのね・・・・・

「・・・もうすぐ景吾の誕生日でしょ?プレゼントどうしよっかなって。」

「う〜ん・・・。跡部はいっぱいもらいそうだしね〜。」

「・・・・うん。みんなと違うプレゼントあげたいの。私だけの・・・・・。」

付き合ってまだ1年経ってないから、当然景吾の誕生日は初めて一緒に迎える

みんなやっぱり景吾にあげるんだろうな・・・・

毎年すごい数のプレゼントをもらってるから、きっと今年も・・・

それにも少し嫉妬しちゃうけど、それなら誰もあげないようなものをあげたい

「じゃ〜さ、俺が一緒に選んであげるよ。」

「ジローが?」

「うん!俺がの恋を応援してあげるよ」

ジローなら景吾の好みとか私より詳しく知ってそうだし・・・・

「ありがとう。じゃあお願いしようかな。」

「オッケ〜!!」

少し考えて、ジローに頼むことにした

やっぱりあげるなら、少しでも喜んでほしいしね












「ジロー!待った?」

私が待ち合わせに着いた時には、もうすでにジローの姿があった

相変わらず眠そうだけど・・・・

「ううん。俺も今来た所。」

「ジローがこんな早く起きてるなんて珍しいね。」

「本当だ〜。自分でもびっくり〜。」

「あははっ!!」


それからジローに景吾のプレゼント選びに付き合ってもらった

買ったのはタオルとリストバンド

誰でもあげそうな物になっちゃった

いろいろジローとも相談したけど、あげるならいつも使ってくれる方がいいなと思ったんだ

これなら普通に喜んでくれると思ったから


それからジローとお茶して、その日は帰った











次の日



朝、登校している時、校門の前で景吾を見つけた

今はまだ早い時間でそんなに登校している人がいないから、すぐに景吾を見つけられたけど

でも、どうしてだろうね

どんなに人がいても景吾だけは簡単に見つけられるの

朝から景吾に会えて嬉しくて、思わず声をかけた


「景吾!おはよう!!」

私の声に反応したのか、歩いていた足を止めたけど、振り向くことなくまた歩き始めた

聞こえなかったのかな?

そんな事ないよね・・・

少し早歩きして、景吾の横まで行って顔を覗き込んだ

「・・・・景吾、おはよう。」

その顔はいつも私に向けてくれる顔とは違う

眉間にしわを寄せたまま

「・・・・・・あぁ。」

と一言交わしてスタスタ歩き出してしまった

景吾・・・・・怒ってる?

そんな態度を疑問に持ちながらも、景吾の一歩後ろをゆっくりと歩く



「お前・・・・。」

「何?」

「昨日どこにいた?」

やっとの事で口を開いた景吾は、声のトーンで怒ってるとすぐに感じとれた

「昨日?」

でもどうして急に昨日のことなんて聞いてくるんだろう

景吾の質問に首を傾げていると、私より先に景吾が口を開いた

「ジローと・・・・デートしてたんだってな。」

「デート!?」

そう言われて思い出す

ジローに買い物に付き合ってもらった事

そんなデートなんてものじゃないし

「そんな、デートなんかじゃないってば。誰がそんな事言ったの?」

「宍戸がおまえらの事見たってよ。」

「宍戸が?」

「ま、俺にはどうでもいいんだけどよ。」

「・・・・景吾何か誤解してない?」

「そんなのしてねぇよ。どうでもいいって言ってんだろ?」

どうでもいいってどういう事?

何より、その言葉にムッときてしまった

どうしてそんな事言うの?

ついつい私も声を上げる

「どうでもいいって何!?だいたいジローと一緒に出かけたのは・・・・」

「俺の前で他の男の名前呼ぶんじゃねぇよ。」

「信じてってば。本当に私・・・」

「そんなにジローがいいならジローの所でもいけばいいだろ?」


「・・・・・景吾の馬鹿!!」


もうその場にいたくなくて、一方的に言葉を投げ捨てて校舎まで走った

景吾が追いかけてくることはなかった


付き合ってから喧嘩をしたのは始めてだった

景吾に喜んでほしかったからと言って、軽い気持ちでジローに頼んでしまったのは、私がいけなかったのかもしれない

それでもちゃんと訳を説明すれば、信じてくれると思ってた

信じてもらえなかった事がこんなに辛いことだったなんて

初めて知ったこの気持ち

できれば気づきたくなかった

いつの間にか涙が溢れてきてるのに気づかなかった














ちゃん〜。」



昼休み

いつもなら景吾と一緒にお昼を食べるんだけど、朝あんな事があってからずっと顔を合わせていない

どうしよっかな と廊下を歩いていたら、前からおっしーが声をかけてきた

「・・・・おっしー。おはよー。」

「おはよーさん・・・って、もう昼やで?

どうした?元気ないやん。これから跡部と飯食いに行くんやろ?」

いつものように笑顔で話してくるおっしー

そうだよね、景吾と喧嘩したこと知らないんだもんね

『跡部』

その言葉に心は敏感に反応する

そしてあの言葉

『俺にはどうでもいい』

景吾の言葉がずっと胸に突き刺さる

これが他の人から言われた言葉だったら、まだここまで胸が痛むことはなかったと思う

景吾だったから・・・一番好きな人に言われたからこそ、この言葉が頭から抜けない

私・・・・嫌われちゃったのかな・・・・


いつしか涙が溢れてきていた

「おっ・・・しー。」

「えっ。どないしたん!?」

今まで笑ってたおっしーが、私の泣きそうな顔を見て、急に目を見開いた

ここが廊下ってことも分かってた

おっしーに迷惑かけちゃうのも分かってた

だけど、今は・・・・・・

こんなに胸が痛い

「景・・・・にっ・・・・・景吾に・・・。」

「とにかく、こっち行くで。」

私の肩を支えながら、泣きやまない私をあやすように廊下を歩いていった










「ここなら誰もおらんから・・・・」


普段は使われることのない教室

これだけ学校が広いと、使わない教室も結構あったりする

私を椅子に座らせ、おっしーも隣の席に座った


「ごめんね・・・・おっしー。」

「それはいいんやけど・・・どないしたん?」

おっしーは私が泣きやむまで、ただ黙ってそばにいてくれた

おかげでさっきより大分落ち着いた


「景吾と・・・喧嘩した。」

「・・・何で?」

「朝・・・景吾に話かけたら『昨日ジローとデートしてただろ』って。」

「ほんまなん?」

少しびっくりしたような感じで私をみる

「確かにジローといたけど、デートなんかじゃないし。

訳を言おうと思ったら・・・『俺にはどうでもいい』って言われて・・・。」

「で、喧嘩した訳やな。」

私の言うことすら聞いてもらえなかった

『どうでもいい』

そんな事初めて言われた

思いだす度、胸が痛む


「愛されとるね、ちゃんは。」

「えっ?」

おっしーの答えに私は目を丸くした

『どうでもいい』って言われてどうして愛されてることになるの?

訳を聞こうと思ったら、うまく話題を逸らされた

「ところで、ジローとは何しとったん?」

「景吾の・・・・誕生日プレゼント買うのに付き合ってくれたの。

ジローなら私より景吾の好みとか知ってそうだから。」

「プレゼントなんて買わなくても、ちゃんさえいればそれでいいと思うけどな。」

そんな恥ずかしい事を平気で言えるおっしーってすごい

私の方が恥ずかしくなっちゃうよ

そんなこと・・・・景吾に1度でいいから言われてみたいけど、そんな事言ってくれないのは分かってる

「でもっ!付き合って初めての誕生日だから・・・」

「そっか。それだけ跡部の事好きやねんな。」

「・・・・でも、景吾私の事嫌いになっちゃったかも。訳を言いたいのに話してくれないし・・・。」

目も合わせてくれない

「大丈夫やって。話しかけてみ。それに俺からも勘違いやって言っといてあげるわ。」

「・・・・ありがとね、おっしー。」

「この借りは高いで〜。」

おっしー、本当にありがとう

おかげで少し楽になった




私と付き合いはじめてから景吾は他の女の子と一緒にいることもなくなった

おっしーに「本当にちゃんの事想ってるんやね。」って言われて少し嬉しかった

私と付き合う前は、景吾の女の子関係の噂って結構あった

だから告白されて最初は信じられなかったけど、景吾が本気だって分かったから付き合い始めた

付き合ってみると、今まで見たことのない景吾を見れたりして

新しい景吾を発見する度、景吾を好きになっていく自分がいた

今ではきっと、私の方が好きになってる

だから余計に怖い

いつも同じでいたいのに

景吾が微笑む度、笑いかけてくれる度に私の景吾を想う気持ちが留まる事を知らずに加速していく










それから景吾の誕生日前日までの3日間、景吾とは一言も喋ることはなかった

景吾が私のクラスに来る事もない 私も景吾のクラスに行けない

行きたくない・・・・・

おっしー・・・景吾に言ってくれたのかな

誤解だったって・・・


時計を見ると夜の11時半を過ぎた所

どうしよう・・・もうすぐ4日になっちゃう




あの後おっしーに、「愛されてる」って意味を聞いたら

「跡部も嫉妬してるんやろ?それだけちゃんのこと好きだって事やん。」

って言われた


景吾も嫉妬・・・・してたの?



だけど、嫉妬してたなんて確信はないから聞けないし・・・・

電話をかける勇気もない

学校でも話しかける勇気もない

だけど

絶対に私が一番最初に「おめでとう」を言いたい

これだけはどうしても譲れない




意を決して、とりあえず4日になると同時に「おめでとう」とメールを送った

内容はすぐに作れたのに、どうしても送信ボタンを押そうとすると手が震える

ボタンを押すのに、こんなに緊張したのは初めてだった

「ふぅ・・・・・。」

一息ついて布団の中で返事を待ったけど、何の連絡もないまま、いつの間にか眠ってしまっていた





朝になっても何の返事もなく、時間はどんどん過ぎていく

一応プレゼントは持ってきたものの、今日1日は景吾に近づけそうもない

今日は朝から女の子がソワソワしているのが目立つ

鞄に入らないくらい大きな包みを持ってきてる子もたくさんいる

そして休み時間には、ほとんどの女子はいなくなってしまう

多分景吾にプレゼントを渡しに行ってるんだろう


・・・・景吾は全部受け取っているのかな?

もう景吾の中に私はいないのかな

いろんな子からもらうプレゼントに必死で、私の事なんて忘れてるのかな・・・・



鞄の中に忍ばせておいたプレゼントを渡すことのないまま、放課後まで過ぎてしまった













!!」


靴を履き替えて、テニスコートに行くか迷ってた時

私を呼ぶ声がした


久しぶりに聞く声

この声は

振り向かなくても分かる

ずっと聞いてきた

私の大好きな―――


「・・・・・景吾。」

振り返ったら景吾がジャージの姿のまま、校門まで走ってきてくれてた

まだ部活の最中なんじゃないの?

テニスコートのある方を見ると、色とりどりの包みを抱えた女の子達が群がっていた

あの中を掻き分けてきたのかな?

「・・・どうしたの?まだ部活中でしょ?」

「あぁ。・・・・お前の姿を見つけたから。」

嘘・・・あの中からどうやって私1人を見つけたというの?


・・・・・まさかずっと待ってたの?


「・・・それで何?」

久々に話せて嬉しいと思うのに、素直に言えなくて突き放したような喋り方になってしまう

。ジローとは何でもないんだよな?」

確認するかのように聞いてくる

だからそれを何度も説明したかったのに・・・・

「当たり前じゃない!!ジローには景吾の誕生日プレゼント選んでもらってただけだもん!!・・・ほんとにデートとかじゃないよ。」

なんとか景吾に分かってもらおうと思って一生懸命に説明するんだけど、やっぱり信じてもらえないのかと思うと切なくなる

最後の方は、声が聞こえるか聞こえないかくらいに小さくなってた

「分かってる。」

「・・・本当に?」

「あぁ。・・・・とにかく、もう俺以外の奴と2人でどこか行くんじゃねぇよ。」

「うん。ごめんね、心配かけて。」

「・・・・・別に心配なんてしてねぇけどよ。」

そんなことを言いつつも、少し照れくさそうにする仕草に、つい笑みがこぼれる



「景吾・・・嫉妬してたの?」

「何でだよ。」

「おっしーが言ってた。」

「忍足の奴・・・・。」

おっしーの言ってた事、本当みたい

景吾って嫉妬なんて、される事はあってもする事はないと思ってたから

何だか嬉しくなっちゃう

「ジローと買い物に行った事で怒ったんでしょ?嫉妬するって事は、私の事を想ってくれているんだよね?」

「嫉妬嫉妬うるせえな。」

あ、ちょっと怒っちゃったかも・・・・

「だって・・・・・」

私を黙らせるかのように、素早く抱き寄せられた

久々に感じる景吾の温もり





「・・・・景吾。」

「あん?」

「誕生日、おめでとう。」

「あぁ・・・。」

「あのね、みんなみたいに高いもの買えなかったんだけど・・・。」

そう言ってタオルとリストバンドが入った包みを渡した

「みんなって・・・俺は誰からももらってねぇぜ?」

「へっ?」

思わず顔をあげた

だって今日はいろんな子がプレゼント持ってソワソワしてて・・・・

「まぁ、俺に持ってきたんだけど追っ払った。」

「追っ払ったって・・・。」

「他の奴から貰ったってしょうがねぇだろ。」

それにいちいち受け取ってたら、今日中に家に帰れねぇよ・・・とため息混じりに話す景吾に苦笑した



「それにプレゼントなんていらねぇよ。」

「え?」

一瞬いらないと言われて、私も拒否られたのかと思って俯いた

やっぱ景吾は学校の子からじゃなくても、たくさんもらい慣れてるから私のなんていらないのかな

高い物じゃなきゃ受け取ってくれなかったのかな

そんな私の想いとは裏腹に、景吾はこんな言葉を私の耳元で囁いた


さえいてくれたら、それでいい・・。」

「けっ、景吾っ!!」

ずっと言ってほしかった

そんな言葉が急に出てきたから、嬉しさよりもびっくりした

いつか言ってほしいとは思っていても、景吾は絶対にこういう事を言わないと思っていたから、びっくりしたけどすごく嬉しい

私の方が大切な物をもらっちゃった気分


と喜んでいたら・・・・

「これも一応受け取っておくが、プレゼントはお前でいいぜ?」

手に持っていた包みを受け取るついでに、景吾が何かとんでもない事を言ってきた

それって・・・・

みるみる顔が赤くなっていく

「・・・・どういう事?」

「部活終わるまで待ってろ。今日は俺ん家に直行な。」

「それって・・・・・」

「もちろん2人っきりでな。」

「私、家には帰れるんでしょうか・・・・?」

聞くだけ無駄かもしれないと思ったけど、一応聞いてみた

「あん?帰れるとでも思ってるのか?」

でも返ってきたのは、やっぱりいつもと変わらない答え

「・・・あの、今日中には家に帰らせていただきたいな、と。」

「お前に拒否権はねぇよ。」

「・・・俺様め〜!!」


こうなっては逆らわずに素直に従った方がいいって事はよく知ってる

でも、こんな景吾も含めて

大好きだよ


私は腕をそのまま抱きしめられてる景吾の背中に、そっと回した

そしたら今よりもっと強く抱き寄せられて

アイスブルーの瞳に見つめられて囁かれた言葉に、耳まで赤くなったのは言うまでもないかな







「俺のすべてを懸けて愛してやるよ。」




Happy Birthday 景吾v



―――生まれてきてくれてありがとう―――







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10月4日です!!


サイトを初めて、初めての誕生日ドリームを作ってみたんですが

こんなのでよかったのでしょうか?

前半は微妙に暗い雰囲気になってしまいましたが・・・。

とりあえず最初に景吾を書けてよかったvv

もうちょっと早ければ周助さんを一番に書けたのに・・・・・。

さて、次の誕生日ドリーム、予定はおっしーです・・・。

手塚さんは・・・書けたら書きます(オイっ!)

10月は大忙し!!

これからもがんばりますv


景吾お誕生日おめでとう!!!

感想なんてものを是非お聞かせくださいv



 2004年10月4日  茜