私の瞳に映るもの <後編>
あの日に私の気持ちを素直に話したら
「大変な人を好きになったね・・・。がんばれ!」
と、応援してくれてるらしく、毎日のようにに誘われてお昼をテニス部のみんなと食べている
跡部君も「面倒くせぇ」と言いながらも来てくれて、いつも何気ない会話をしてる
今日もお昼休みが楽しみv
自分でもびっくりしてる
こんな簡単に人を好きになって
もっと難しいのかと思ってた
そんな事をポツリと呟いたら、に「気づいたら好きになってるもんだよ。」
って言われた
跡部君の事好きになったと気づいたら、気持ちは一気に加速する
と同時に少し臆病になる自分がいた
こんな事喋ったら嫌われるんじゃないか とか
余計な事を考えちゃって・・・・・
二時間目が終わってと二人でたわいもない会話をしてる時に、突然跡部君が私たちの教室を訪ねてきた
それだけで、教室にいた女子たちは騒ぎ始める
「跡部君がきた〜。」
「超かっこいい〜v」
その声に反応して、私も思わず跡部君の姿を確認する
女の子達の声も、当の本人はまったく気にする事なく、目的の人物を呼ぶ
「。」
言葉に反応して、私と一緒にいたがドアの方を振り向いた
「跡部じゃん。どうしたの?」
ちょっと待ってて と私に告げて、は女子たちの視線が注がれる中、跡部君が立っているドアへと向かっていく
「今日の部活の事なんだけどよ・・・・。」
どうやら部活の打ち合わせでを呼んだみたいだけど、私は跡部君から目が離せなかった
との話が終わると同時に、数人の女の子達が跡部君を囲った
「ねー跡部君、今日も部活あるの?」
「跡部君にプレゼント持ってきたんだけど・・・・」
なんて喋ってる
本人は「ウゼェ」って顔してるけど
見なければいいのに、どうしても気になって、視線を跡部君に向けてしまう・・・・
跡部君とそんなに近づかないでよ
そんな小さな嫉妬心を覚えてしまう自分がいる
その時、跡部君と目が合った
けど、思いっきり逸らしてしまった
ヤバイ・・・・
あからさまに目線逸らしたって分かるよなぁ 今のは・・・・
手でも振っといた方がよかったかな
でも、ずっと見てた なんて本人に気づかれたくない
もう一回チラッと横目で跡部君の事を見ると、眉間にしわを寄せてムスッとした感じでクラスを離れていった
何か怒ってた・・・?
「、次科学だから移動だよ。早くっ!」
「あ、うん。今行く。」
本当は誰よりも傍にいてその声を聞いていたいのに
伝えたくても伝えられない
恋をして自分が臆病になるとは思ってなかった
*
今日もきっとテニス部に行くんだろうな
と思いつつ、まだ職員室から戻らないの事を教室で待っている
「ー。」
突然、外を眺めていた私の背後から声がした
「聡、どうしたの?」
聡はお弁当を片手に、窓際の私の席までやってきた
「久々に弁当一緒に食わねぇ?」
お弁当?
小学校の時はいつものように一緒に食べていたけど、中学に入ってから、お互い仲のいい友達同士で食べるようになった
それに聡はモテるから、よく女の子がお弁当を作って渡す所をよく見かける
受け取ってるのかどうかは知らないけど
だから、まさか聡からご飯食べようなんて言うと思ってなかった
「ごめん、折角なんだけどさ・・・・・」
「あ、ちゃん?いいぜ、一緒でも。」
「それはそうなんだけど・・・・。」
「・・・?」
言葉を詰まらせる
何となく言いづらい・・・・
「ーお待たせ。早く部室行こう。」
その時、職員室に行ってたが戻ってきて私に声をかけた
の言葉に、聡は不思議そうな顔をした
「・・・・部室?」
「うん。テニス部に・・・・・。」
テニス部という単語を出した瞬間、聡の表情が険しくなった
「どういうことだよ?」
「は?」
「まだテニス部と関わってるのか?」
「なんで?どうしたの?」
「・・・・いや、何でもない。・・・じゃあな。」
そう言ってそそくさと教室を出て行った
自分の教室に戻っていく聡に首を傾げながら呟いた
「どうしたんだろう。聡・・・・。」
「も大変だねぇ〜。」
「何が?」
「知〜らない♪」
何か知ってそうなを見て、思わず口を尖らせた
は笑いながら「早く部室に行こう」と急かす
何だっていうのよ・・・・・
前に一日テニス部のマネージャーをやるって言った時も、聡の奴あんまりいい顔しなかった
テニス部に嫌いな人でもいるのかな・・・・・ ま、いいか
聡の前では「テニス部」っていう単語出さないようにすればいいよね
なんてそんな事を考えていた
部室に行くと、すでに全員揃っていた
「お待たせ〜。」
「まったく。いつもいつもおせーよ。」
「ごめんってば。」
と、誤りつつは、いつものように宍戸君の隣に座った
私はいつも空いている所にチョコンと座ってみんなと喋る
今日は忍足君の隣が空いていたからそこに座り込む
「そういえば今日は跡部の奴、ちゃんの傍に来ぇへんな。どうしたんや?」
しばらく二人で会話をしていた忍足君が、ふいに思い出したように呟いた
そういえば・・・・・
跡部君の姿を確認する
今日は部室にはいるものの、隅の方で一人窓から空を眺めてる
いつもは私がどこに座ってても、跡部君が文句を言いつつも私の隣に座ってくる
何でか分からないけど・・・・
初対面であれだけズバズバ言う人がよほど珍しかったのかな
忍足君も、いつも私の隣に跡部君が来るのを知ってたから、私に聞いてくる
「跡部と何かあったん?」
「ううん、特には・・・・。」
聡といい、跡部君といい、今日はみんな少しおかしい
それとも私・・・・・気づかないうちに何かしたかな
私、跡部君に
・・・・嫌われちゃったのかな
そう考えた途端、ご飯が喉を通らなくなった
泣きそう・・・・・ダメだ こんな所で泣いちゃ
溢れそうな涙を必死で耐えながら、早くお昼休み終わって と心の中で思い続けていた
それからそのまま、ご飯に手をつける事なくお昼休みは過ぎていった
*
「はぁ〜〜・・・・。」
教室で一人、大きなため息をついて机にうつ伏せになった
今週は週番で、放課後、誰もいない教室で週番日誌を書いていた
でも午後の授業内容の欄で手が止まっていた
跡部君の事が気になって午後の授業なんて何も覚えてない
ずっと「私、跡部君に何かしたかな?」という疑問だけが頭の中を駆け巡る
もうずっとこのままだったらどうしよう
そんなの嫌だ・・・・
だから何かしたなら謝ろうと思い、ずっと考えてるんだけど、跡部君を怒らせた理由がどうしても見つからない
・・・それより、今は午後の授業内容を思い出そう
ガラッ
「・・・・・。」
教室のドアが開いた音と共に、声が聞こえた
「聡!? どうしたの?部活は?」
慌てて声のした方を見ると、毎日顔をあわせている幼馴染の聡が制服で立っていた
制服着てるってことはもう部活終わったのかな?
私は立ち上がる事なく視線を日誌に戻して、次の会話を待った
「・・・・少しいいか?」
座ってる横まできて、いつになく真剣な表情をしている聡に少し疑問を抱きながら、聡と向き合った
「うん。いいけど・・・?」
なんか深刻な話なのかな? と勝手に判断して、持っていたペンを机に置く
「お前、最近テニス部と仲いいよな。」
「・・・?う〜ん。仲がいいっていうか・・・・。」
仲・・・いいのかな?
なんて考えを遮って、聡が続けて喋りだす
「どうしてだ?」
「へ?」
何が「どうして」なの?
話が見えない私は、首を傾げながら間の抜けた声をだしてしまった
「・・・・どうして俺じゃなくてテニス部ばっかり応援しに行くんだ?」
いつもと明らかに違う聡に、少し怖さを感じて思わず立ち上がり後ずさりする
でも窓際の席の私に、これ以上後ずさりする事は出来なかった
聡はそんな私の手を掴んで、力任せに壁に押した
「い・・・・った。 聡・・・どうしたの?」
少し苦笑いして言ってみたものの、聡の表情は無表情のまま
むしろ、少し睨んでるみたい
今までずっと一緒にいて、こんなに聡の事を怖いと思った事ない
「テニス部に好きな奴でもいるのか?」
「・・・・・・うん。」
聡には隠し事できないね
すぐバレちゃうから
観念して素直に返事をしたら、聡が俯いて小さく呟いたのが聞こえた
「・・・・・・・んだ。」
「え?何?聞こえな・・・・」
「俺だっての事ずっと好きだったんだ!!今更他の奴に取られてたまるかよっ!!」
「え・・・・。うそ・・・・・」
ウソでしょ?
聡が私の事を・・・・・?
この瞬間、聡が私の知らない男の子に見えた
小さい頃からいつものように一緒にいて
傍にいることが当たり前になってて
周りからはよく恋人同士と勘違いされるほど
でも少なくとも私はずっと友達だと思ってた
聡は違ったの??
ずっと私の事・・・・?
「俺じゃダメなのか?そいつのが好きなのか?」
聡の事はもちろん好き
だけど、それは友達として
恋愛として好きなのは、心から愛してるのは たった一人だけ ―――
私は跡部君が好き
跡部君は私の事何とも思ってない
そんなこと分かってる
だけど、この想いは偽れない
私の返事で聡との「幼馴染」という関係を壊してしまう
それは分かってたけど、幼馴染だからこそ、私の正直な気持ちは知っていてほしかった
少しためらったが、コクンと小さく頷いた
「・・・・ごめんねっ!!」
これ以上この場にいるのに耐えられなくなった私は、鞄を持って帰ろうとダッシュで聡の横を通りすぎろうとした
そしたら、通りすがりにまた腕を掴まれた
「・・・・っ。」
「俺はっ!ずっと好きだったんだぞ!!」
痛いくらいの強い力に振りほどく事ができない
まるで私と聡の今の気持ちみたい
好きなのに こんなに好きなのに、気持ちが相手に伝わらない ――
どんどん近づいてくる聡を振りほどく事が出来ない私は、顔を思いっきり逸らした
そんな私の顎に手をかけて、無理やり自分の方に向けさせる
「聡・・・・やめて・・・。」
ありったけの力で振りほどこうとしても、ビクともしなくて
男と女の差を嫌でも実感する
もう怖くて、でもどうすることもできなくて
ただ、涙が留まることなく頬に滑り落ちる
それでも聡は手を離してくれない
ゆっくりと、聡の顔が近づいてきた
誰か助けて―――
放課後の教室
もうすでにみんな下校していて、学校に残っている人の方が少ない
でも そう思わずにはいられなかった
そんな事を考えているうちに、聡の顔がどんどん近づいてきた
一瞬、跡部君の顔が頭によぎった
「跡部・・・・君。
い・・・嫌ーっ!!」
「お前・・・・何やってんだよ!?」
もう少しでお互いの唇が触れる寸前で 声がした
聞きなれた声
いつも傍で聞いていたくて、でも今一番聞きたくなかった声 ――
「跡部君・・・・・・。」
跡部君はテニス部のジャージのままの姿で、少し息を切らしてドアに立っていた
「跡部・・・・。」
「何やってんだって言ってんだよ。」
ほんの少しだけ肩を弾ませながら、跡部君はすごく怖い顔して私達に近づいてくる
今まで見たことのない跡部君の表情
でもなぜかホッとしてしまう
誰かきてくれたから
ううん――
きっと跡部君だったから
「跡部・・・君。」
聡の力が緩んだ隙に、勢いよく掴まれていた手を振りほどいた
跡部君の方へ歩いて行きたいのに、足が思うように動かない
それでもがんばって動かそうとする前に、もう跡部君は私の前まで来ていた
そして頬を伝う涙を優しく指でふき取って、抱きしめてくれた
初めて触れる跡部君からは規則正しい鼓動が伝わってきて、それがひどく私を安心させた
心地よい跡部君の体温
洗い立てのシャツの匂いと混じって、微かに香水の香りも感じる
私は思わず体を預けた
跡部君は、子供ををあやすように頭を軽く叩き、そしてまた聡を睨みつけた
「二度とに近づくんじゃねぇ。」
「何でだよ?俺はが好きなんだ。お前に言われる筋合いはない!!」
「が好きだと?お前は好きな女が嫌がってるのに無理やりキスなんてするのかよ?」
「つっ・・・・。」
「分かったらさっさと出て行け。二度とに近づくな。」
鶴の一声とも言える跡部君に、何もいう事なく聡は教室を出ていった
「・・・・大丈夫か?」
いつもと違う優しい表情の跡部君
「・・・・うん。でも、跡部君どうしてここに?」
「に聞いたら教室にいるって言いやがるから・・・・」
「来てくれたの?」
「別にそんなんじゃねーよ。ただ・・・。」
「何?」
「なんでもねーよ。」
そう言ってそっぽ向いちゃった
・・・・やっぱ嫌われちゃったのかな
しばらく無言のままの状態が続いた
この雰囲気耐えられない
思わず目線が泳ぐ
何か喋らなきゃ
でも言葉がでてこない
・・・本当は好きって言ってしまいたい
私の気持ちを聞いてほしい
でも・・・
喉まで出掛かっていた言葉を、慌てて抑えた
好きだから――
これ以上傷つきたくない
振られるのは分かってるから
私は臆病だから 言いたい事も言えずどうしても逃げちゃう
こんな自分に愛想が尽きる
・・・そういえば・・・なんで跡部君はここに来たんだろう?
そんな小さな疑問がふと頭を駆け巡った
「跡部く・・・・・・。」
私が口を開くと同時に聞こえた言葉
「、好きだ。」
静まり返った教室に突然響いた、好きな人の声
私が発した言葉よりも、何倍も大きくはっきりと聞こえた
思わず思考が止まる
今・・・・好きって言ったよね?
跡部君が私を・・・・?
聞き間違い・・・じゃないよね?
夢でもないよね?
「・・・・・だって、跡部君私の事嫌いなんじゃないの?」
半信半疑で跡部君に質問する
「どうしてそうなるんだよ。」
「だって今日怒ってなかった?」
「・・・・お前、今日の休み時間思いっきり目線逸らしたろ?」
少し呆れたような顔つきで話始めた
あ、やっぱ気づいてたんだ
「俺はが好きだ。けど、お前はそうじゃないんだって思ってよ。」
「そんな事ないっ!!
私、跡部君が好き。さっき視線逸らしたのは・・・・。」
勢いでつい「好き」って・・・・言っちゃった
そんな風に思ってくれていたと思うと、思わず顔が赤くなる
「視線逸らしたのは・・・・・何だよ?」
「・・・笑わない?」
「さぁな。早く言えよ。」
「・・・・・嫉妬してたの。周りの女の子達に。」
俯きながら呟くように小さく喋る私に、跡部君はフッと笑った
「笑わないって言ったのに・・・・」
跡部君は、口を尖らせる私の頭を軽く撫でてくれた
「バーカ。」
口調はいつもと変わらないけど、それとは裏腹にすごく優しく抱きしめてくれる
跡部君の真剣な表情
あなたのこんな顔、私何度も見せてもらったね
「・・・好き。景吾が大好き。」
「やっと呼びやがった。」
「何が?」
「何でもねーよ、バーカ。」
「バカバカって何度も言わないでよね。」
「うるせぇ。」
「・・・なんなのよぉ〜。」
「少し黙れ・・・・」
同時に唇に落とされる、柔らかい感触
いきなりの事に、反論も出来ずにいた
触れるだけのキス
実際は数秒のキスも、私にとってはものすごく長く感じた
「いきなり何するのよ!?」
お互いの唇が離れても、景吾は私を抱きしめて離さなかった
私も、景吾の背中に腕を回す
「お前がごちゃごちゃ言ってるからだろ?」
「・・・・もう。
・・・・・・好きだよ、景吾。」
「俺もだ・・・・。」
もうすぐ落ちてくる彼からのキスを 目を閉じて待った
景吾と触れ合ってると心があったかい
ずっとこのぬくもりを感じていたい
この気持ちがきっと
幸せ ―――
なのかな
〜〜 おまけ 〜〜
「ねぇ、どうして教室にきたの?」
結果的には助かったんだけど・・・ なんて歩きながら呟いているの一歩前を歩いて
「しつけーな。どうだっていいだろ?」
と、そっけない態度で答える
「む〜・・・。」
俺が言える訳ねーだろ
に「の幼馴染の奴がの事好きらしくてさ、今日あたりヤバイかもね。」
っていうのを聞いて部活の最中なのにもかかわらず、気がつけば足が教室に向かっていた――
なんてよ
・・・・言えるかよ
俺とつないでいる手を強く握り締めて離さないに、俺は初めて心から安らぎというものを感じた
「おら、早く行くぞ。」
「は〜い。」
嫌だって言っても、絶対離さねぇからな
覚悟しろよ
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私の瞳に映るもの 前・後編 終了しましたv
こんなに長くするつもりなかったのに、打っていくうちにどんどん長くなってしまって・・・・。
感想なんかをお聞かせいただけると嬉しいです。
読んでくれてありがとうございました☆
2004年7月26日 茜