俺の眼力にかかれば分からねぇ事はねぇ

少なくとも今まではそうだった

だが、アイツの行動だけは

今になっても分からねぇな









             
insight










今日は俺の誕生日で

学校の校門の前で車を降りた瞬間からプレゼントの嵐

毎年こうだといい加減うんざりしてくるぜ




これは朝だけに限ったことじゃなく

休み時間、昼休み、放課後 と延々続いた






「跡部さまー!お誕生日おめでとうございますvv」

「私のもプレゼント、受け取ってください!」



「・・・・・悪ぃが、気持ちだけ受け取っとく。」





同じ言葉を今日で何度言っただろう

数えてみたいもんだな

去年までは律儀にプレゼントも受け取っていたが

今年はもう受け取らねぇ


俺の周りにいる女共をその一言で黙らして

ふと視線を周りに向けてみるが、そこに俺の探してる奴はいなくて

そのまま誰一人目線を合わせることなく、テニスコートへと急いだ


本当に欲しい奴から貰えなきゃ意味ねぇんだ



・・・まぁ、アイツは素直に来る奴じゃねぇがな

俺は一人、の顔を思い浮かべながら苦笑した























 *






いそいそと部活の準備を始めていたところへ景吾が走って来るのが見えた

やっとプレゼント攻撃から開放されたのか、一つ小さくため息をついていた


「景吾おぼっちゃまは、朝から大変ですねー。」

「その呼び方はやめろ、。」


嫉妬でもしてんのか、あーん?なんて声が聞こえてきたけど

その質問には答えずテニスボールを拾いあげた


「でもさー、景吾の周りには人が絶えないよね。」

「ま、俺様だからな。当然だろ?」

「あーはいはい。」


こう言うのはいつもの事だからね

分かってるよ、景吾が人気だって事くらい・・・

だけど、私だってそんなに強くないんだから

いつも女の子に囲まれてるのを見て、私が何とも思わないとでも思ってるの?

女の子が景吾に話しかけるのを見ただけで胸が締め付けられる

いつからこんなに弱くなったんだろう・・・・

泣きそうになる気持ちを誤魔化すために視線を逸らした




「それより。」

「・・・何?」

「・・・・・いや、何でもねぇ。」



景吾が言いたかった事は分かってるつもり

だけど・・・・今はまだ言ってやらないんだから

私の気持ちもあの娘達と一緒にしてほしくない

ちゃんと私1人としての気持ちとして受け取ってほしいから

だからまだ・・・・・・




















 *







そのまま何事もなく部活も終わって

他の奴らも帰り、部室には俺とが残っていた

今でも何事もないかのように部誌を書いてやがる


・・・いくら何でも待たせすぎじゃねぇのか?

別にプレゼントが欲しいと言ってるんじゃねぇ

ただの口から一言だけ・・・・・・

ちっ・・・・俺だけが馬鹿みてぇじゃねぇかよ




「景吾・・・」

「なんだ?」

「誕生日おめでとう!」

「・・・・・・」


あまりにいきなりすぎて驚いていると、が後ろに鞄に入っていた箱を差し出してきた


「はい、プレゼント。」

「あぁ・・・・・・」


素直に差し出された箱を受け取って眺めていたら

鞄を持って帰ろうとしていたを無理やり引き止める

いつも一緒に帰ってるくせに

どうして今日は先に帰ろうとするんだ?




「あ、後であけてね。」

「別に今でもいいじゃねぇか。」

「・・・・・だって」

が俯いてる間に、箱にかかっていたリボンをほどき始める


「だから今見たら・・・・・・」

何をそんなに慌ててやがんだ

見られたらまずいもんでも入ってんのか?

箱を開けて中身を確認しようとするが、中からは一回り小さいサイズの箱が入っていた


「・・・・・・」

「・・・・・・」


なんなんだ・・・・

とりあえずその箱も開けてみると、また箱

また、箱

・・・・こいつ、俺様をからかってるのか?



少し意地になってどんどん小さくなる箱を開けていく

そして何個目かの箱を開けた所で、小さな紙切れを見つけた

そこにはたった一言

単純なものだが、俺にとってはずっと聞きたかった言葉



「おい、・・・・・・・」


ようやく顔をあげてみるものの、既に部室には俺以外誰もいなかった

ちっ、逃げたか・・・・・

俺としたことが、こんなのに夢中になっていたとはな

だがまだ追いかければ間に合うはずだ

急いで鞄を持って部室を後にした








っ!」

とっくに家に向かってるものだと思っていたが、意外にも部室の外の木の下にはいた

「・・・見た?中身。」

「あぁ、何だあれは。」

マトリョーシカじゃねぇんだからよ、と言うとクスクスと小さく笑った

「ちゃんとプレゼント・・・入ってたでしょ?」

「この紙切れのことか?」

「一生懸命考えたんだから、紙切れなんて言わないでよね。

 景吾さ、箱開けるときドキドキした?何が入ってるんだろう・・・って。」

「バーカ。俺様がこんくらいでドキドキなんてするかよ。」

「・・・ふーんだ、つまんない。」



小さな箱に入っていた紙切れ

それは他人から見ればただの紙切れだろうが、俺にとっては最高の言葉




  ―――いつまでも愛してる―――





また思い出して、一人自然と口元がつり上がる


「・・・・それで?何でこんなに待たせたんだよ。」

「だって・・・・・・景吾にちゃんと私の気持ち、知ってほしかったし。

 みんなと一緒にしてほしくなかった。」


ごめん、やっぱり嫉妬・・・してたみたい なんて泣きそうな顔しやがるから

とっさに抱きしめた


「バーカ。そんなくだらねぇこと、考えてやがったのか。」

「・・・・くだらなくないもん。」

「くだらねぇよ。俺はいつだって・・・・」

お前のことしか考えてねぇんだからな


そう、耳元で囁いて

みるみる赤くなってく頬に、そっとキスをした





行動は読めないことはあっても

お前の想いはちゃんと分かるぜ?

これは眼力に頼るまでもねぇ



言葉じゃ言えねぇくらい俺はもう・・・

に溺れてるんだからな














「それで、さ・・・」

それっきり、目線を上に下にしながら口を小さく動かすものの言葉を濁していた

だが、俺はすぐにが何を聞きたいのか分かった


「そんなの分かってんだろ?」

「・・・景吾の口から聞かなきゃ分からない。」


ったく、さっきの言葉と行動で分かんなかったのかよ

しょうがねぇな


たまには正直な想いを伝えるのも、悪くねぇかもな

俺の想いの分だけキツク優しく抱きしめて

本当はこんな言葉だけじゃ伝えきれねぇけど、一応な



「俺も愛してる。」

「・・・・うん。

 なんだか私の方がプレゼント貰っちゃったみたい。」


「あーん?お前のプレゼントはこれだけじゃねぇんだろ?」

「え・・・?」

きょとんとしてるに苦笑しながらも口角を上げる


「今日は寝かせねぇからな。そのつもりで待ってたんだろ?」

「・・・は?だって、明日も学校あるし・・・家にも帰りたいんですけど・・・・」

「家には電話しとく。明日一緒に登校すればいいだけだろ。」


”でも・・・”なんて言ってるの腰に手を回して、校門に向かって歩き出す

今日は家でゆっくりと教えてやるよ

さっき言葉で伝え切れなかった想いを、な――――












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す、すいません!!
唯さんの企画に出すつもりが、気づいたら企画終了( ̄□ ̄;)
ホント計画性のない奴でごめんなさいm(__)m
しかも誕生日って・・・1ヶ月以上過ぎてるし・・・・

今回はヒロインに押され気味の景吾
そんな景吾も大好きですvv


 2005年12月01日  茜