どうして?

どうしてこいつって

我侭で自分勝手でいつも命令口調で・・・・・俺様なの!?


そして私もどうしてこんな奴のことが好きなのよ!





    
☆花火大会の夜に☆






関東大会1回戦

氷帝学園vs青春学園



試合の真っ最中


これで私たち3年は引退する事になっちゃうかもしれない大事な試合

今、シングルス2の慈郎ちゃんと不二君の試合が終わった所

そんな中、氷帝テニス部マネージャーの私が目を向けている先は・・・・・




「・・・・不二君 かっこいい・・・・・」


直接話した事はないけど、見てると癒される私の心の王子様



「アーン? 誰がかっこいいって?」

私が折角不二先輩を堪能してるのに、後ろから声をかけてくる奴



・・・・・でた

私の些細な幸せを壊してくれる奴は1人しかいない

「跡部・・・・・」

「お前は不二みたいのが好きなのか?
氷帝のマネージャーのくせに、どっち向いてんだよ。」


試合の時はちゃんと氷帝を応援してるんだから今は別にいいじゃん!! と言いたいのを ぐっと堪えて

「それは大変失礼致しました。シングルス1 頑張ってください、景吾お坊ちゃま。」

幸せだったひとときを邪魔されてムカついたから、そう言ってやった

別に誰が好きでも跡部に関係ないじゃん!! っていっても不二君は憧れだけど

「お前・・・・後で覚えてろよ。」


こ、怖っ・・・・・怒ってらっしゃる・・・・みたい






こんな事は日常茶飯事

あいつはいつだってそう




次はシングルス1

相手は高校の監督とかも一目置いてるっていう、あの手塚君

そんな相手と戦うのは氷帝テニス部200人をまとめあげるうちの部長

跡部景吾


確かにテニスはすごくうまい

顔も・・・・確かにかっこいい

氷帝テニス部200人を率いてるだけあるけど

だけどね・・・・・


「氷帝、氷帝!! 勝つのは跡部、勝つのは跡部!!! 勝つのは・・・・」





パチン


「俺だ!!」








・・・・・・って・・・・・


いくらなんでも恥ずかしくないの?

って跡部に問いかけたくなる(怖いから聞けないけど・・・・)

でも自分に自信があるからこそできることもある

それはわかってるつもり

跡部は本当にすごい人だ



彼の家は 『超』 がつくほどのお金持ち

その上あのルックスだし

学校では親衛隊まであるくらい

今もコートの周りで女の子達が


『跡部様―――!!』


って騒いでるし




だからかな

あんなに性格が悪いのって!!


















 *



「何だ、まだいたのか。」



部活が終わり1人で部誌を書いてたら、ドアが開いて跡部と樺地君が顔をだした

「部誌書いてるの。戸締りしておくから先帰ってていいよ。」

私は目線を日誌に落としたままで言った

はぁ とため息をして跡部は近くにあった椅子に腰掛けた

樺地君は立ったまま・・・・

「ばーか。部室の鍵は俺しか持ってねぇじゃねえか、どうすんだよ。」

「あ・・・・・そうだった。」

「本当にどっか抜けてるよな、なぁ樺地。」


・・・・・ん?

「ちょっと!! 何でそこで樺地君に同意を求めるのよ?」

「うるせえ。」

「自分こそ性格悪すぎなんじゃない? ね、樺地君」

「お前こそ、なに樺地に同意求めてんだよ。」

「なぁに?自分はよくて私はダメなの? そんな勝手な話ないんだからー!!」


その後も続く言い争い

樺地くんは、ただただ、返事に困っていた















私達は関東大会1回戦目、青学に負けた

結果は2勝3敗


そこで私達3年は引退のはずなんだけど、Jr選抜の為にまだ全員がテニス部に在籍していた

もちろん私も



























「そーいえば、今日って近くで花火大会あったよなー。」


珍しくお昼に部活が終わり、私に話しかけてきたのは岳人

「花火大会かぁ・・・いいねー。」

そういえば、この前お父さんに買ってもらった浴衣・・・・まだ1回も着てないし

そんな事を考えてたら後ろから侑士が会話に加わってきた

「そーやな。よっしゃ、もう部活も終わった事やし・・・ちゃん一緒に行かへん?」

「何言ってんだよ、侑士。俺も行く!!」

「何〜、ちゃんも行くの?じゃ〜俺も行くぅ〜!!」

「お前ら、激ダサだな。みえみえだぜ・・・・」

「そういう、宍戸先輩も行くんですよね?」


なんだ?

いつの間にか私行くことになってる気がする・・・・・

まぁ今年はまだ花火見てないし、こういうの好きだからいいけど


でもなぁ・・・・・・

アイツも来るのかな

私が来て欲しいと思っているその張本人はすごい顔してこっちを睨んでる


「なぁ、跡部も来るやろ?」

「いかねぇ。 帰るぞ樺地。」

「ウス」

そう言うと樺地君を連れてさっさと部室へ消えて行った


何だ・・・・跡部来ないのか・・・・っていうか即答?

一緒に行きたかったのに

何か用事でもあったのかな・・・・・


「なんだよ、跡部の奴」

「まぁ、そう言わんとき岳人。来たくないゆーんやったら無理に誘わんでもええやん。」











「じゃあ、7時に公園の所でええ?」

「OK――。」

先輩の浴衣楽しみです。」

「俺も楽しみィ〜〜!!」

何だか浴衣まで着るハメになってる・・・・・



「じゃあ、後でね。」

みんなに手を振って自分の家へと向かう


別にみんなと行きたくないわけじゃない



ただ、跡部も一緒に来てほしかった






素直じゃない私


跡部と向き合うと皮肉な言葉しか出てこない

本当はそんな事思ってないのに・・・本当はもっと女の子らしくしていたいのに

本当は・・・・すごく好きなのに

素直になれない

こんな自分に腹が立つ




まぁ、しょうがないか

とりあえず今日は花火楽しもうっと


お母さんに浴衣を着せてもらって髪の毛もアップにしてもらう

初めて着るこの浴衣



「跡部に見てほしかったなぁ・・・・」

そう呟いてみても本人は今日来ない

もうしょうがないか・・・・・誘えなかった私が悪いんだし

それに誘ったとしても、あの俺様跡部が一緒になんて行ってくれるとも思えないし

『アーン?何でお前と花火大会に行かなきゃなんねぇんだ。第一花火なんて、俺ん家から見えるんだよ。誰が好き好んであんな所行くか。』

とか言いそう


実際言われた訳でもないのに落ち込んじゃう自分が嫌だ・・・・・

気づくと小さなため息を漏らしていた

ふと時計を見ると6時半

ヤバ・・・・そろそろ出かけないと











ピーンポーン―――





・・・・? 誰だろう

侑士とか迎えに来てくれたのかな?


浴衣ってのが面倒くさかったけど、玄関に一番近かった私がドアを開けると・・・・・







「あ、跡部・・・・?」

今私が一番逢いたかった人が玄関先で立っていた

思わず放心状態になる

何で跡部がここにいるの?


「おい、行くぞ。」

・・・・は?

そう言って意味が分からず突っ立っている私の手を引っ張って歩き出した


「ち、ちょっと・・・跡部・・・・・どこ行くの?」

浴衣は歩きづらい・・・・・

その上、跡部歩くの早いよ・・・・・


「あ? 花火観に行くんだろ?」

少し息を切らした私に気を使ってくれたのか、歩くペースを下げてくれた

「だって跡部行かないって・・・・・」

「うるせえな。行くのかよ、行かねえのかよ。」

「・・・・行く!!!」

いつもならこんな言い方されるとムカつくのに今日はなんだか嬉しい

無邪気に微笑むと、跡部が フッと笑ってくれた


え・・・・・?

跡部の笑顔に私の胸は高鳴る

いつもは人の事見下したような笑い方しかしないのに、今は心の底から笑ったような素直な感じの笑い方だった

なんか嬉しいぞ

「そーいえば、どお?この浴衣」

「あぁ・・・・・」

「あぁ じゃ分かんないわよ。何かいう事ないの?」

「別に・・・・・馬子にも衣装ってやつか」


・・・・失礼な奴

前言撤回

何でコイツはこういう言い方しかできないの



私も何でこんな奴好きになっちゃったんだろう・・・・

跡部を好きだと自覚してから何回思っただろう この質問

でもいくら考えても答えなんて分からない

それがレンアイというものだから

気づいたら好きになっていた




ただ それだけ


私は跡部の前をずんずんと歩いていった

その後ろでまた跡部は フッと笑っていた













「なんだ。やっぱ跡部も来たんだー。」

私達が待ち合わせ場所に行くと、すでに全員集合していた

「何で跡部とちゃんが一緒に来るんだよぉ〜。ずるい〜」

「やっぱちゃんの浴衣姿はかわええなぁ」

「夏 って感じがしますよね。」

「ど〜でもいいけど、早くいこうぜ。」

「ウス」

私達が着くと同時に言葉が飛び交ってくる


「と、とにかく花火が見える場所に行こうよ、ね?」




移動し始める氷帝レギュラー軍団

みんな楽しそうに話しながら歩いている一番後ろを歩くのは跡部景吾

どうしたんだろう

さっきまで(少し)楽しそうだったのに、今はまた無表情に戻っちゃってる

やっぱこの人ごみは嫌だったのかな


少し心配した私は、人の流れに少し逆らって跡部のところまで行く

「やっぱ混んでるね。 あ、何か食べる?」

なるべく跡部の機嫌を損ねないように話かけてみる



ドンッ


人ごみを掻き分けて屋台に近づこうとした私はその拍子に人とぶつかった

「すみません・・・」

「ごめんなさい」

一応一言謝っておく 流れに逆らった私が悪いんだし


「はぁ・・・・何やってんだよ、ほら。」

見兼ねた跡部が私の前に手を差し出してくれた


え・・・・・手、繋いでいいのかな

「ありがとう。」

と言って手を繋ぐ


初めて感じる跡部の体温

へぇ、以外に手大きいんだ

私の手とは明らかに違うゴツゴツした男の人の手

手を繋ぐだけで、気持ちまで伝わっちゃいそうな気がする

きっと今の私 顔赤いんだろうな






「こっち行くぞ。」

しばらく歩いてると急にみんなと違う方向へと進路を変えた

「え・・・・? だってみんなあっち行ってるよ。」

「いいんだよ、こっちの方がよく見える。」

そう言うと跡部は私の手を引っ張りながら、どんどんみんなと離れていった

そして完全にみんなの姿が見えなくなった


まるで二人で来たみたい

そう思うだけで嬉しくなる

単純かな 私って・・・・

















「ここだ。」



連れてこられた場所は高台だった

「へー。こんな所よく知ってたね。」

周りには誰もいない 私達2人だけ

「まぁな。」

跡部は近くにあったベンチに腰掛けた

私も隣に座る










 ヒュルル〜〜  ド―――ン





お腹に響く音がして ふと見上げると、漆黒の夜空に大きな花が咲いた



「うわぁ、始まったよ! 跡部、見て見て!!!」


今年初めて見る花火に興奮を覚えて思わず声を上げる

光る夜空を見上げて、跡部にも見るように急かす

「心配しなくても見てる。」

そんな私を子供だと思ったのか、笑いながら優しく返事をしてくれる










ヒュルルル・・・・・

   ド―――ン





留まることなく空に咲く光り輝く花火

一瞬で消えてしまうけれど

それは私達に綺麗な思い出をくれる



「綺麗だね・・・・」

「あぁ・・・・・」


お互い夜空を見上げながらやり取りされる短い会話












 やがて夜空を彩っていた花火は終わりを告げた




「おい、どうした?」

花火が終わっても、ずっと空を見続けていた私を変に思ったのか跡部が声をかけてきた

私は視線を空から逸らすことなく答えた

「何か花火が終わった後って、急に心の中が空っぽになった気分にならない?
花火はとっても綺麗なのに・・・・・どうしてだろうね。」


言った後で後悔した

きっと跡部の事だから、また人を馬鹿にしたような言い方されるんだろうな・・・・

「さぁな・・・・・」

以外にも返ってきたのは普通の返事

どうしたんだろう今日の跡部は


「やっぱ跡部も何だかんだ言っても、花火見たかったんだね。」

『今日はどうしたの?』なんて聞いた日には何を言われるか分かったもんじゃないから、立ち上がって話を変えてみた






「お前・・・・とじゃなきゃこんな所になんて来ねえよ。」


ふと目線を跡部に向けると目が合った

今何て言いました?

私とじゃなきゃ来ない・・・?


それって・・・・え・・・・?


吸い込まれそうなブルーの瞳

いつもはそんな事気にも止めないのになぜか今は目が離せない


「あ・・・跡部?」


「俺はお前が好きだ。」


嘘・・・・跡部が私を?

いつも会う度に喧嘩っぽくなってたのに

私なんかよりあんたにはかわいい女の子が寄ってくるじゃない

私でいいの?

それとも私も・・・・不特定多数の中の・・・・・一人なのかな?

跡部にとっては寄ってくる女の子みんな同じなのかな

そんな扱いは嫌だ


「・・・・・おい、聞いてるのか?」

なかなか反応を示さない私に痺れを切らしたのか、少し苛立った声で一歩ずつ私に歩み寄ってくる


「・・・・・・私は不特定多数の中の一人なんて嫌。」

「俺はお前しか欲しくない。お前以外は考えられねえ。」


真っ直ぐ私を見つめてくる

そんな顔されちゃ反則でしょ。


「それにお前も俺のこと好きだろ?」


はあっ?

なにそれ・・・・なんで跡部が私の気持ちを知ってんの?


もしかしてっっ

「これが噂の眼力?」

と 気づけば叫んでいた

「バカか・・・。そんなの使うまでもねえよ。俺もずっとの事見てたからな。」

気づけばいつものように勝ち誇ったかのような顔で私を見下ろす跡部が・・・・

ムカつくけど・・・・・・こんな俺様だけど・・・




「・・・・・くやしいけど、好き」

跡部に見透かされてたのが悔しくて、自分から背伸びして跡部の唇にキスしてやった

「・・・・・!?」


唇を離すと、口を手で軽く押さえて少し顔が赤くなってる跡部の姿が・・・・・・



「かわいい、跡部」

あ、思わず本音が・・・・言った後で少し後悔

チラッと跡部を上目づかいで見ると、それはそれは眉間に筋が入った跡部様が立っていらっしゃるではありませんか

怒っちゃったかな・・・・・・?


でも、跡部って不意打ちに弱いのかしら

俺様について来い ってタイプに見えたから何か新しい発見♪

怖いから何とか平常心を保とうとがんばるんだけど、さっきの跡部の顔が頭に焼き付いていて思わず

「・・・・・ぷっ。」

と小さく吹き出してしまった

・・・・・ヤバイ・・・・・・


「お前・・・・・いい度胸だな。本当のキスってのはな・・・・こうやるんだよ。」

「え・・・・跡・・・」


グイッ

いきなり跡部の方へ抱き寄せられて言葉を跡部の唇で塞がれた

さっきのキスとは比べものにならないくらい激しいキス

息が苦しくなって離そうとするけど、後頭部を跡部に手で押さえられて離せない

息をしようと口を少し開けると、代わりに跡部の舌が私の中に入ってきた


「・・・・ん・・・ふっ」


どれくらい時間が経ったなんて覚えてない

やっと唇が離された頃には私の息は乱れていた

足がガクガクと震える 私は自分じゃ立っていられなくなって思わず跡部に寄りかかる

跡部は私をしっかりと受け止めて抱きしめてくれた

まるで壊れ物を扱うかのように優しく


「何・・・すんのよ。」

「キスするならこれくらいやれよな。」

さっきまでの少し赤かった頬はすっかり消えて、いつもの跡部に戻っていた

そしてさっきまで勝ち誇っていたはずの私は、逆に林檎のように顔が真っ赤になってる  きっと

跡部は私の顔を見て笑い出す


またやられた!! くやしい!


・・・けど・・・・・




そして急に跡部が私を抱きしめ耳元で囁いた

「浴衣、似合ってるな。」

「さっきは何も言わなかったくせに・・・・」

「すげぇ似合ってる。」

何も言わないとムカつくけど、面と向かって『似合ってる』って言われると恥ずかしい・・・・・

「ありがと、跡部・・・・・」

「何で忍足の事は名前で呼ぶのに、俺は呼ばないんだ? 俺のことも名前で呼べ。」

「え・・・・急には・・・・」

「言ってみろよ。」

何で命令口調なの? って言いたいけど、これが跡部景吾 怖くて逆らえない

「け・・・・景吾」

「ふん、まあまあだな。これからはそう呼べよ。

・・・・、愛してる。」

「私も愛してるよ、景吾・・・・・。」


きっと私は一生彼に勝てないのかな

でもいいや


「これからたっぷりと俺様に酔わせてやるよ。」

自信満々に言う跡・・・景吾に

「ふーん。それは楽しみね。」

と言ったはいいけど・・・・・








もう酔わされました・・・・・


そんな事は口が裂けても言わない

















☆☆おまけ☆☆



その頃の氷帝レギュラー達は・・・・・


「そういえば、ちゃんと跡部はどこ行ってしもたんか?」

「あ、こっちにいました・・・・・・よ?」

「どうした、長太郎・・・・あ・・・・」

「クソクソ跡部!! 何やってんだ!!」

「跡部ずる〜い。」

「ウス。」


見つけた跡部との事を、影でこっそり見ていたレギュラー達でした










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テニスの王子様初のドリームを書いたのがコレでした。

景吾ってこんな喋り方であってるかしら・・・・?

しかも逆ハーみたいになってた・・・。

読んでくれてありがとうございました〜!!!


 2004年7月7日  茜